情報流出?
「やっちゃったなぁ……これ以上は逃がさないつもりだったのに嬉しくて普通に逃がしてしまった」
さっさと捕まえようと思ったけど、普通に料理を褒められたのが嬉しくて逃がしてしまった。まぁ流石に脱出地点では見逃す事は出来ないけど、ヤバいな。もしこれで捕まりそうになった人が全員命乞いとして僕の事を褒めようとかしてきたらどうしよう……ちょっと心が揺らいでしまうかもしれない。これ以降は本当に気を付けないと危ない
「これ以上は優しくしない様にしないと……」
仏の顔も3度までとは言うけど多分3回は余裕で越えてる。もう優しくする必要はないから心を鬼にして全員捕まえよう……絶対厳しく行くぞ!
「貴方は素晴らしいお方です!崇めます!」
「申し訳ないけどそういうのは間に合ってるんだよね」
「なぜぇぇ!」
なんか宗教っぽいなぁ……でも正直このくらいの方が切り捨てやすいのでありがたい
「カッコイイ!可愛らしい!セクシー、エロイ!」
「それで見逃す訳が無いよねぇ?」
「ヌッ!」
うん、何かおかしい
「本当に申し訳ありません!どうか見逃してください!私には娘が……」
「今娘って関係無くない?」
「やっぱダメかー!」
やっぱりおかしくない?
「なんか僕の情報が拡散されてるな……これは」
何かこの情報の広がり方には作為的な何かを感じる。絶対に誰か僕の情報を流してる気がする。これは……居るな?
「ポン君、知覚最大で頼む」
「わかった」
首に噛みつかれた感覚と共に急速に【察気術】の範囲が拡大する。絶対に居るはずだ……
「見つけた」
かなり離れた建物の上から双眼鏡らしき物でこっちを見ている人を発見した。あの恰好……見間違えない。ある意味因縁の相手みたいになってしまったチェルシーさんだ
「なるほどねぇ?」
情報屋ならではの戦い方と言うべきか、情報を他の人に提供して僕に相手をさせている間に欠片集めしたりしているのかもしれない。これからは1人1人こっちの姿が見つかると命乞いフェイズが入るかもしれないのは面倒過ぎるので、可能な限り発見されない必要が出てきた。というより、面倒だからあの人捕まえるか。一応あっちに向かって手を振っておこう
「はぁ……はぁ……はぁ……ヤバ過ぎるでしょ!?なんでこの距離で分かるの!?」
かなり距離が離れていたハズなのに確実に目が合って、こっちに手を振って来ていた。こっちは双眼鏡を使って見える距離なのに……
「ヤバい……ヤバいヤバいヤバい……絶対に怒られる」
嘘は言ってない。捕まりそうな時に、ハチさんを褒めれば見逃してもらえるかもしれない。ハチさんから逃げる為の最後の手段になりそうな物を双眼鏡で監視している時に見かけたので、情報を広めてみたが、全然だめそうだ。やっぱり料理を食べてそれを褒めないとダメなのだろうか……しかも、さっきは目視じゃ絶対にこっちを発見出来ないだろうってくらい離れているはずなのにこっちを見て手を振ってた。もう完全にあれは「お前を殺す」と言わんばかりだ
「ダメです!作戦失敗!」
「ダメか……やはりしっかり戦わないと彼から逃げる事は出来ないんだな……」
「次に何か考えてるんですの?」
「何か考えるよりまずはここから離れた方が良いぜ?その反応から見るに、ハチに見つかったんだろう?」
「はい、見つかって手を振ってました」
「手?何を言ってるんですの?」
「いったいどれだけ離れていると……」
「よし、皆乗れ」
ダイコーンさんがバイクを出し、サイドカーにチェルシーとレイカの2人が、バイクにダイコーンとジェイドが乗り込む
「ヒャッハー!正直これでもアイツから逃げ切るのは無理だろうぜ。でもここから離れなければ確実に捕まるしかないぜぇ?」
バイクを発進させ、先程ハチさんを監視していた建物から離れる。まずハチさんはあの建物を目指してくるだろう。そしてそこから逃げた私達をまた捜索して追い詰めてくる……前回は見逃してもらえたけど、今回は普通に追いかけてくる……こわぁ
「集団で集まって突破するのはフェアじゃないとか何とか言って魂の欠片を集めたけど、これなら集団に混じった方が良かったか……」
「いや、それは絶対に無いです。あのハチさんが18人に増えたんですよ?1000人規模で集まらないと突破は無理でしょう」
脱出チャンスの時は私達は参加しなかった。もしかすると2回目があるかもしれないが、まずは捕まっても欠片を集めていれば何かしらのアイテムと交換出来るというのであれば、不確定な称号よりも確定している欠片の収集報酬を優先した。お陰であんな常識外れの物を見る事が出来たが……
「とにかくこのまま一旦エリアを出るぜ?」
「ああ、そうしよう。これ以上は多分無理だ」
「まさかとは思いますが、あの人先回りなんてしてませんわよね?」
「ちょ!?何てこと言うんですか!言霊になったらどうする気なんです!?」
こっちはバイク。向こうは徒歩。追いつけないとは思うけど、でもハチさんならそれが有ってもおかしくない……