腹ペコホイホイ
「意外と捕まえる時に転送される速度ってこっちの意志次第なのかな?」
前みたいに間違って肩に手を置いて捕まえてしまった時は転送されるまで若干のタイムラグみたいな物があったけど、今回の後ろから1人ずつ転送する作戦の時は触れたら即転送されていた。作戦的には凄くありがたいけど、この転送速度を決めている要因はなんだ?僕の気持ちという凄く曖昧な何かで何とかなるのか、単純に沢山捕まえたから転送速度が上昇したのか、触れる場所によって転送速度が違うのか……まさかまさかの運営が見ていて自分達でコントロールしていたりするのか?
「まぁなんにしても、バレずに捕まえられるのなら何でも良いか」
捕まえる時に特に音が出るって訳でも無いし、即捕まえてくれる事は良い事だ。まぁ余韻が必要な時と必要無い時の切り替え方法でもあれば知りたい所だったけど、勝手に上手い事やってくれるのなら分からなくても良いか
「相手に見つからないで捕まえるのは少し迷ったけど、演出としては結構良い感じに出来ただろうか?」
後ろをみれば居たはずの人が居なくなるのは中々に怖いだろう。僕としては両親が帰ってきた時に何か食べたいモノのリクエストを聞いて、お店で一緒に食材とか買おうとしている時に調味料のコーナーとか見てたら急に母さんが居なくなった時は少し恐怖した物だ。心細さでは無く、いったいどこに置いてあったの?と言わんばかりの謎食材とか、それ美味しいの?と聞きたくなる謎フレーバーなお菓子とか持って来るあの時間は中々に怖い物だった……お金は今回買う物全部払うからという断れない条件を出されるから断るのも忍びなかったしなぁ……
「あぁ、何か食べ物置いておくか」
分かりやすいトラップとして、何か美味しそうな料理を用意しておいて、そこに放置。手に取ったら拘束するトラップでも用意しておこうかな。捕まえる捕まえないは別として、人の注意を引き付ける為の囮になれば良いだけだし
「露骨なトラップを用意しておけば意識は絶対そっちに行っちゃうし、より捕まえやすくなるからねー」
上にかける土が周囲と馴染んでいない落とし穴とか、明らかに何処か物陰に繋がっている紐と棒と籠という黄金の捕獲トラップとか露骨過ぎてこんなトラップには引っかかる訳無いだろーと意識がそっちに向いている最中に背後から捕まえるとなれば確実に1人持って行けるだろう
「これで良しと」
とりあえず持っていた料理を道の真ん中に設置したティーテーブルの上に置いておく。これでここを通りかかった人はどうあってもこの料理を目にする事になるから、近寄るにしても近寄らないにしても何かしらの行動を取るだろう。ここも一応監視中のNPC捕縛者の監視範囲内だから何か動きがあれば発見出来るだろう。とりあえず今はこの近辺に居ないっぽいから次行ってみよう!
「なんだか虫取り少年の気分?」
木に蜜を塗ってそれに引っかかるのを待ってるのってこんな気分なのかな?若干のワクワク感というか、そんな気分で待ってみる
「出口が近くて遠いな……どこにあるのかねぇ……」
魂の欠片よりも先に出口は見付けた。3種類集めなければ出られないので、これは中々辛い
「あん?なんだありゃ?」
道の真ん中にテーブルが置いてある。あれはなんだ?
「なんか美味そうな飯が置いてあるな……」
ステーキがドンと置かれている。それを確認してしまったら急にお腹が空いてきた気分になる。満腹度には余裕があるが、それとこれとは話が別。美味そうな飯が前にあったら自然にお腹が空いてくる
「これは……トラップなのか?」
この飯に手を出してしまうと、相手に通知が行って捕まる……そんな未来が想像できる
「うーーーん……仕方がない。ここは諦めよう。これは罠だ。間違いない」
罠の食べ物は食べたら毒状態とかになってしまうかもしれない。どれだけ見た目が美味しそうでもこんな所に置いてあるものは食べられない。ここはスルーしよう
「あー、それ。食べたい?」
「っ!?」
急に後ろから声がすると思って振り返ったら天井から逆さまになった状態で話しかけてくる誰かが……うん、終わったわ
「食べたかったら食べても良いよ。毒は入ってないって誓うよ」
「……」
正直、毒が入ってないという事を信用出来るかと言ったら無理だ。でも、もう逃げられない状況だというのも分かる。それならもういっそ食べてしまっても良いんじゃないか?
「い、いただきます!」
どうせ捕まってしまうんだ。それなら最後にこの美味そうなステーキを食べて捕まろう
「なんて柔らかさだ……ナイフで簡単に切れるし、噛もうと思ったら口の中でとける。肉本来の旨味を引き出すソースと焼き過ぎない程よい焼き加減……付け合わせの野菜もえぐみが無く、食べやすい。こんな素晴らしい料理を最後に頂けた事に感謝」
「そんなに褒めてくれると照れるなぁ」
今がイベント中だとかどうでも良いレベルで美味い料理を食べる事が出来た。これは正直もう捕まっても構わない
「本当は逃がすつもりは無かったんだけど、いやぁこれだけ褒められると気分が良いな~。あっちの方で魂の欠片があったような気がするな~」
そう言い残して魂の欠片があると言っていた方と別方向に歩いて行く例のあの人。ん?もしかして作った料理を褒められて嬉しくて見逃してくれたのか?怖い話ばかり聞いていたが、あの人って結構おちゃめなのか……