捕縛された者達
「おう、お疲れさん」
「お、お疲れ……様です」
既に捕まった人が来るであろう監獄エリア的な所にきた。やはりと言うべきか、凄い人数が居る。とりあえず近くに居る奴が挨拶的なのをしてくれたので、他の所がどんな所だったか少し聞いてみるか
「どこで捕まった?」
「肉林のムキムキに取り囲まれた……」
「あー……まぁあっちよりは良いんじゃないか?」
そう言って親指で示す方向を見てみるとかなりの人数がうな垂れて居た
「あ、あれは?」
いったい何があったんだ……
「さっき、脱出チャンスって捕縛者と正面からかち合って抜けられたら脱出する時に邪魔されないっていうのがあっただろ?その時の捕まった奴らだよ」
あぁ……自分の実力じゃ無理だと思ってやめておいたミッションか。捕まってあんなに落ち込むって何が有ったんだ……
「あの、ちょっと話を聞いても良いか?捕まった時に何があったんだ?」
「お前は……あの場に居なかったんだな。ラッキーな事だと思うぜ……」
なんか生気がないというか憔悴しているというか……
「話を聞かせてもらっても良いか?」
「お前、例のあの人は分かるか?」
例のあの人と言えば、今回のイベントで担当するエリアが百面悪鬼の大劇場という他の2か所に比べて明らかに凶悪そうなエリア名を付けられてるあの人か
「勿論分かる。正直、今回のイベントで逃げ切れる自信が無かったからあの人の所は避けて、出来るだけ魂の欠片を集めてたくらいだ」
「なら、ソイツは正解だったぜ?なにせあの人、18人に分裂したからな」
「はぁぁぁ?!じゅ、18!?」
そんな物絶望以外の何物でもないじゃないか……
「しかも、ただの分裂じゃねぇ……幻影も混じってるし、状態異常も起きるし、おまけに乱戦だ。仲間との連携なんてあったもんじゃねぇ……途中でどのあの人か分かんねぇけど仲間と似たような恰好になったりするんだ」
乱戦で仲間と似たような恰好……凶悪過ぎでは?
「触れられたら終わり、そんな中で仲間の恰好されたりしたらどうなると思う?恐怖とか急に一人のあの人に目線が釘付けにされたり、300人超えて挑んでるのに、あの人に触れられない様にするだけでこんなに難しいとは思わなかった……」
今回は倒すではなく、触れられたらアウトだから通常よりも逃げるのは難しい。流石に相手全員を倒す必要があるのならもっと突破出来たんだろうけど……だとしても300人超えで行けたのが1人って……どんなだよ……
「そこら辺のモニターで見たい人とか居たら見れるぞ。まぁ捕縛者の方は無理だが、誰か捕縛者の近くに居る奴とかならそれ経由で一応見る事も出来るが……あの人の所はあまりオススメはしないぞ」
オススメしないと言われたら逆に気になってしまう。あの人には会わないように別エリアに居たし、ここは少し怖いもの見たさで見てみよう
『あはははは!ちゃんと逃げないとぉ!』
『ひぃぃやぁぁぁ!』
「……」
なんだ?今のは……ちょっともう一回だけしっかり確認して見ないと……明らかに人の形じゃない所があった
『足が足りてないんじゃないのぉ?』
『化け物ぉ!』
どう見てもおかしい。上半身は普通なのに下半身は何か長いし、黒い小さな足が異様な数生えている。これは……ムカデ人間?
「え、えぇぇぇ……?」
「また何かおっかねぇ姿になってる……」
「あの人なんなんだよぉ……」
「人の枠絶対飛び出してるって……」
モニターに映る下半身がムカデみたいになっているあの人を見て皆戦々恐々としている
「あれを見たら、こっちとかまだ平和に見えるわ」
「あー、まぁ銃で足撃たれるくらいならなぁ……」
「ムキムキのおっさんとかハスバに捕まった方が幸せだったかもしれない」
完全に感覚麻痺している。ムキムキのおっさんに掴まるのだって嫌なんだぞ!?でも、流石に今のを目にしてしまうとムキムキのおっさんの方が……と言うのは憚られた。だってどう考えてもおっさんよりあっちの方が怖さのランクが上だ
「マジか!どうやら呼ばれちまったようだな……グランダ。悪いが先に復活するぜ」
「俺も呼んでもらえると良いんだがな……」
あの金ぴかローブは……ガチ宮さんか。例のあの人が出てくる前は結構強い人として有名だったけど、今はゲロ吐いたり、あの人相手に犬死したりで強い人から芸人枠みたいな扱いになってたなぁ……
「一応、ここに居る人間でいえば実際強いからなぁ……」
誰を復活させるのか、基準は復活させる側の人間に委ねられるし、こっちから復活させてくれと頼む事も出来ないから誰が復活するのかは分からない。ただ、こういう時に有名であれば、誰か復活させたい人が居なければ有名な人を復活させてみるかってなるかもしれない。それこそ、有名人に恩を売る的な事かもしれないが
「何処を目標にするかで、このイベントの難易度が全く変わるが……気が付いているか?ここに居る奴ら全員の共通点を」
「共通点?」
そんな物全員逃亡者っていう共通点がある……って話ではなさそうだな?
「ここに居る人間。誰一人、魂の欠片を1つも持ってない奴が居ないんだよ」
「……まさか、捕縛者の気まぐれじゃないのか?」
「いや、俺はあの人のエリアの捕縛情報を常に見続けていたが、1人も魂の欠片を持ってない奴は捕まっていない。あのエリアで1つも魂の欠片を持ってない奴があの人に見つかったとしても、見逃されているんだよ。これがどういう事か分かるか?俺達に最低保証を付けてくれてるんだよあの人は……」
最低保証を付けてあんな人を驚かすような事をしているのか?滅茶苦茶俺達を楽しませる為に努力してるじゃないか……
「あの人……本当に凄い人なんだな」
改めて、モニターに映る見た目は完全に化け物の様な状態のあの人が捕縛し、その捕縛された人が送られてくるのを見ていた
「お疲れさん」
「はっ!?はぁ……俺、捕まったんだな……」
自然と捕まった人に優しく接する事が出来る気がする。なるほど、さっきの人もこんな感じで俺に挨拶してくれたんだな……