本当の大勝負
「ダメだ!逃げよう!」
「ここは無理だ!」
「撤退しよう」
「おや?どちらに行かれるのですか?こちらへどうぞ」
「「「うぐっ!?」」」
魅了で撤退しようとしていた人達の足を止める。逃げさせないって強いなぁ?
「こうして撫でるだけで消えていく……ん~なんて儚い命だこと」
あのー、ニャラ様?僕の分身を使って良いとは言ったけど、妙なキャラ付けされると後が困るんですよ……
「ここを通すと舐められてしまうからな。何人たりとて逃がさんから覚悟しろ」
アビス様の方は超かっこいい。これだよこれ。こういうのがあればニャラ様を少しくらいは信仰しても良いかなとは思うけどね?
「【聖域展開】」
周りの僕達が捕縛する為に色々魔法やスキルを使用していたので、1日1発の限定の範囲回復を使用する。今この範囲回復を受けられるのは僕の味方判定である僕の分身達だけだ。あとポン君。これで【アクエリアス】の回復量を越えて使用していたMP分を一気に回復出来る
「「「「サンキュー」」」」
やっぱりと言うべきか、アストレイ・オブ・アミュレットのHPMP自動回復大の効果、愚戦奴の呪枷のMP消費50%カットが無いと僕の継戦能力はガクッと落ちる。瞬間的に何度も【フラッシュ】や【インパク】を使用して捕縛する僕も居れば、【ジェミニ】を使用したあと、MPを温存しておいて移動の邪魔になりそうなウォール系の魔法とか飛んで来た時に【ディスラプトマイン】を出して打ち消したりする僕も居た
「う、【ウィンドウォール】」
「そんな物を出して逃げてはダメですよ?【ディスラプトマイン】」
「マジっすか!?」
【ディスラプトマイン】の消費MPは500。アクセサリー装備無しの僕だとMPが1100くらいなので、2発しか撃てない。こういう所が分身してもそこまで強くはならない様にする調整なんだろう。まぁ武器もコピーされる訳でもないだろうし……でも、そういう僕が称号で得て消費MP無しで発動出来る【恐怖圧】とか【幻覚圧】をまき散らしているんだろうな
「どうやら時間のようです」
「それじゃあ後はよろしくお願いします」
「ベアベア~」
服がインベントリに戻ってきた。そして3人の分身した僕が消えていく
「もう終わり?いやぁ久しぶりに人間と遊んだ気がするよ~。まぁ弄んだだけだけど。こういうのたまにやってよ~」
「また何かあれば呼ぶと良い。地上に出てくる事が出来るのは嫌いでは無いからな」
ニャラ様は割とご満悦っぽいかな?またやってと言われても300人規模で集めるのはまず無理な気がして来る。アビス様の方は僕の分身を利用すれば地上に一時的に出てくる事が出来るって事で割と軽い事でも呼んで良さそうな雰囲気を出している気がする。でもこれで本当につまらない事で呼び出したら怒られるんだろうなぁ……
「さて、とりあえず前座は終わりって事で良いですかね?」
「わざわざ私達には手を出さない様にしていたな?」
「それは舐めている……とは違うんですよね」
僕の前に居るのはアイリスさんとロザリーさん。今回の集団戦の中に入ってはいたが、姿を見つけたら手を出さない様にはしていた。2人とは分身とか無しで勝負したい
「僕としては、あんなに人数来るとは思ってませんでしたから、捕まえる為に隠し玉を使わざるを得ない状況でした。でも、2人も逃げないで待っててくれたんですよね」
「あぁ、君がこちらに気が付いた瞬間、あえて視界に入れない様にしながら周りの人間をドンドン捕まえていたからね。流石に我々だけ避けられていると気が付いたよ」
「ハチ君、ごめんなさい。あんな風に感じていたんですね……」
「ん?」
単純に2人は後に残して捕まえようと思っていただけなんだけど……
「避けられるって、辛いです……」
あぁ、そういう受け取り方ね?さっき会話した時に僕が避けられてるのが嫌だ。みたいに受け取って、それでやり返されてると思っているのか。じゃあそういう事にしておこう
「分かったならそれで良いです。でもこれで邪魔者は居なくなりました。この脱出地点までのストレートで僕が2人を止めるか、それとも僕を抜き去るのか。勝負しましょう」
「「ええ!」」
幻と超スピード。止められるかは分からない。ただ、5分で300人以上捕まえたお陰でこの2人に集中出来る
「ふぅ……よし!いつでもどこからでも良いですよ」
服装をテアトルクラウンの服に変え、一応白ローブの形にしておく。現状、僕の装備の中で一番AGIが高い装備だ。反射神経勝負になったとして、可能な限り速い方が良い。2人とも腰の武器に手を伸ばし、居合でもするかの様に構える。まず間違いなく幻刀・朧霞が先に抜かれるだろう。2人が同時に得物を抜いても良いが、幻を見せるという能力上、相手が幻を感知する前に行動を仕掛けたら意味が無い。2人の能力を合わせてくるならまず朧霞が危険だ
「「…………」」
どちらが先に動くのか、まるで居合勝負やガンマンの早打ち勝負みたいに緊張のその一瞬が来るのを今か今かと待った