暴走因子 発動
「あまりこのまま貴方達の好き放題にするのも良くありませんね。こうして話している間にも……」
隠密系の人がこっそり突破しようとしていたので【精神防壁】を数枚展開して妨害する
「って!」
「うそっバレてる!?」
「私が話をしているのに無視して行こうなんて、酷いではないですか」
「「ひっ」」
可能な限り冷淡な感じでこっそり抜けようとした人達の方を見て脅す。こういうのが大規模に戦闘が始まった後に抜け出そうとするから注意しなければならない。最初に潰せるのなら潰しておきたい存在だな
「それでは……そろそろ本気を出し始めたいのですがよろしいでしょうか?そこの人達は一度下がるかこのまま捕まるかを3秒以内に選んでください」
「「……」」
下がらなければ即捕まえる為に深淵尻尾をゆらりと出すと無言で下がっていった
「ご協力感謝いたします。それでは仕切り直しいたしましょう」
ここで一旦隠密した人達を戻させる。捕まえた方が圧倒的に楽になるけど、ここで下がってやり直し出来る人はまだ良い人だからその人にはチャンスをあげたい……だが残念な事に【察気術】を使うとまだこのまま隠れてやり過ごそうとしている人が居た。その人はもうノーチャンスだ
「ただし、この人は除きます」
「へ?げぼぉ!?」
見せしめの意味も込めてゴキダッシュからのボディブローを叩き込むと半透明な体が元の色を取り戻し、そのまま転送されていった。与えられたチャンスを有効活用しないとこうなるんだとこれで皆に見せる事が出来ただろう。何となくだけど雰囲気的は出てきたぞ
「では、どうぞ。来てください」
隠密が失敗したからか、逃走者側に緊張が走る。じりじりと近寄っていた全体の動きが止まる。今度は僕を徐々に僕を包囲する形で展開するみたいだ
「そろそろ本気で行きますよ?」
一旦装備を白ローブに変えて、遂にあのスキルを発動する
「【暴走因子】起動」
【暴走因子】を発動した途端、僕の体から泥水の様な何かが流れて地面に広がっていく。そして地面でボコボコと泡立ち、徐々に人の形になっていく。この異様な光景を見たせいか、周りの人達の動きは完全に止まっていた。ついでにここは最初の混乱を引き起こす為にも【ミスティックミスト】も展開しておこう
「「「「「行くよ」」」」」
白ローブを着た5人の僕がその場に現れる。急いでシスター服に着替え、オーブ・ローブ、シロクマコスチューム、三稜鏡帝の執事服、テアトルクラウンの服を分身体に配る。最後の1人にはポン君を渡しておけば戦闘力的な問題も何とかなるだろう
「誰かこの霧を何とかしてくれ!」
「うわぁぁぁ!」
「来るなぁ!」
「こんな所に居られるか!俺はもどっ……」
「【タイフーンブラスト】」
強力な風の魔法で【ミスティックミスト】が吹き飛ばされる。まぁ、もう役割は果たしてくれたから充分なんだけどね
「嘘だろ……」
「オイオイマジかよ!?」
「こんな事ってあるのか!?」
「はぁぁぁ!?」
そこには【ジェミニ】と【イリュジオ】を使い、合計8人となったハチがそこに居た
「【フラッシュ】」
「【インパク】」
閃光とノックバックの様な急激な横移動や空中での方向転換。それを繰り返して移動する8人。いや、【イリュジオ】で出した1人だけはそれをしていないが、急な移動と閃光による目くらましで相手の戦線をボロボロにする。やはり低燃費な魔法は良いぞ?乱発出来るし、【ミスティックミスト】が展開していた間に使用した【アクエリアス】で消費分は結構良いペースで回収出来ている
「よっ、ハチくぅん?面白そうな事してんねぇ?」
「暇だったからな。来てやったぞ」
2人のオーブ・ローブ姿の僕が、話しかけてきた。「来てやった」って言ったという事はつまり……
「アビス様とニャラ様。ようこそ来てくれました。この逆境感、どうでしょう?」
人数差は大きい。まぁ、この2柱ならもっと凄い人数差の戦いとか経験してそうだけど
「面白そうじゃないか」
「退屈はせんな」
「その体は僕の分身体なのでお二方の好きな様に使ってください。但し、時間はそんなにありませんので」
「それじゃあ早速使わせてもらいますかねぇ?」
「よかろう」
2人の僕の姿が黒ずんで、アビスフォームを使った時の様な姿に変わる。僕の【アビスフォーム】は人型で獣っぽさがあり、背中に触手が4本だったが、2人のアビスフォーム姿はもっとより洗練された姿とでも言うべきだろうか。ただ深淵を纏っているというよりも深淵を自分の体に染み込ませて、輪郭がはっきりしているし、獣らしさが感じられない真っ直ぐ立つその立ち姿は美しさを感じるくらいだ
「では行くぞ。人間共?」
「我等を楽しませてみよ」
うわぁ、なんか僕の声で尊大な事言ってる……もしかして僕がロールプレイしてる時を客観的に見るとこんな感じなのか……
「あ、ポン君……」
えーっと……多分アビス様の方の僕についていると思うポン君は今どうなってるんだろう?消滅する事は無いだろうけど、まぁヤバそうになったら分離したり帰還するか
「まぁ良いか、何人たりとて逃がしません」
とりあえず僕も乗っておこう