黄金の代償
「…チ君!ハチ君!」
「あ、ハスバさん……勝てたみたいですね……」
気が付くと白い光が無くなって僕とハスバさんがボスの部屋に立っていた。玉座もゾンビも無くなり、代わりに宝箱が1つ置いてあった
「やったな!凄い威力だったぞ!」
変態っぽいハスバさんでは無く、そこにはただ、勝利を喜んでいるハスバさんが居た
「はい、それもこれも全部ハスバさんのお陰です」
「どうした?あまり喜んでいない様だが?」
「なんか勝ったって実感があまり無くて……」
最後に僕に【投銭術】用のお金を貸してくれたのもハスバさん。パーティから抜けてくれて僕をソロにしてくれたのもハスバさんだ。お陰でもの凄い威力の【投銭術】が発動出来た。あっ
「あの、そういえば確認しないで投げちゃいましたけどあれっていくら位の価値があったんでしょうか?」
僕が見た事も無い大き目の金貨を思いっきり投げちゃったけどあれ、どのくらいの価値があったんだろう?
「あぁ、あれか?大金貨だから100万Gだ」
「ひゃくまっ!?」
急いでボス部屋をくまなく探す。だが100万Gの大金貨は結局見つからなかった。あの黄金の光線は100万Gの光だったんですね……
「とんでもない借金が出来ちゃった……ハハハ」
乾いた笑い。ボスを倒したという喜びは全て消え去った
「気にするなハチ君!負けて3割持っていかれるより、10割使って勝った方が気持ちいい!」
ハッハッハ!と腕を組みながら笑うハスバさん。僕に気を使ってくれているのか、それとも本当にそう思っているのかはハスバさんにしか分からないが僕には罪悪感しかない
「100万Gを返そうと考えなくても良いぞ?いつか何かに使う為に貯めていたのがこんな使い方が出来るとは……」
「ハスバさんの事もしかしてヤバい人かと思ってましたけど見直しました。あの宝箱はハスバさんが開けてください」
「おぉ!ナチュラルにちょいディスを入れてくる。技術点高いねぇ!」
ちょっと言い方が悪かったかもしれない。ヤバい人は言わなくても良かったなぁ……
「そういえばお金って1Gが鉄貨で10Gが銅貨、100Gが大銅貨で1000Gが銀貨……で合ってますよね?」
「あぁ、それから1万で大銀貨、10万で金貨、100万で大金貨だ。それより先は溜まったことが無いから分からないが……」
貨幣の情報が分かったのは大きい。今後大きい貨幣が使えるかは分からないけど……
「今回の報酬は全部ハスバさんが貰ってください。100万Gの価値があるかはわかりませんが僕は経験値が貰えただけで充分なんで……」
本来の目的はレベル上げだ。装備とかドロップしても今の装備から替えるつもりも無かったから売るとか考えてたけどハスバさんが居るからそのままハスバさんが受け取ってくれるのが一番だ
「分かった。君の性格的に私が断っても罵ってからアイテムを渡してきそうだ」
「多少願望が入ってませんでした?今」
流石にこの状況で罵ったりはしないよ?僕
「ではオープン!」
ガチャリと宝箱を開けるハスバさん。中身は光っててよく見えない……これは?
「ふむ、王の長剣と金貨3枚が入っていたぞ」
剣を見せてくるハスバさん。さっきまで戦っていた剣より装飾が多い気がする
「ハスバさん。こういうダンジョンのボスのアイテムって個別なんでしょうか?」
「ダンジョンボスは個別だな。フィールドボスは倒したボスから直接ドロップになるから協力したパーティ同士で話し合いして報酬を決めるのが一般的かな?」
なるほど、そういう違いもあるんだ
「戦闘中にパーティを抜けたが、ボスフィールドでパーティを抜けてもソロとして経験値を貰えたのはラッキーだったな」
ボス戦中にパーティ解散なんてする事自体おかしな行為だしね。どうなるか分からなかったけどペナルティとか無くて良かった……
「じゃあ僕も開けてみます」
個別と分かったので僕も宝箱を開けてみる。宝箱の中身が光ってアイテムを獲得する
『王の短剣 王のエストック 王の大剣 を入手しました』
「あれ?金貨は……?」
ハスバさんの時は金貨が出てきたのに僕の時は金貨が出てこなかった……返済の当てがぁ……
「ハスバさん。とりあえずコレ受け取って下さい」
「ん?他の3つの剣が出てきたのかい?これはランダムで出てくるのか?」
「多分ランダムか貢献度的な物じゃないですかね?」
参加人数とかでどうなのか分からないけど……検証とかはしなくてもいいや
「貢献度とかはあるかもしれないな……ではその剣はもらい受けよう。うおっ!?」
ハスバさんに3つの剣を渡すと4つの光の玉がハスバさんから飛び出し、1つになる
「四王剣フォー・オブ・ア・カインド……レア度レジェンド!?」
「おぉー1つになった」
4つあった剣が1つの長剣になる。装飾も華美な装飾では無く、水晶の様な物が刀身の根本に付いているだけだ
「フォー・オブ・ア・カインドってポーカーの役でしたっけ?」
「あ、あぁ……確か4カードの別の呼び方だが……レア度レジェンドだぞ?本当に良いのか?」
「100万Gの負債の分って言うのもありますけど、僕じゃ多分それ装備出来ないから持ってても最悪売るだけですね。ならハスバさんが持ってた方がはるかに良いですよ」
装備出来ない物を持っていてもしょうがないしねぇ?
「これは……多分100万以上の価値があるぞ……?ほら」
ハスバさんが剣に付いている水晶に触れると剣の形がエストック、大剣、短剣と変形する。あの4剣の形状に変化出来るんだ。まぁ僕には使えないけど!
「じゃあ返済って事でも良いですか!?」
「もちろんだ。やはりあの時ハチ君に託して良かったと思うよ」
「良かったぁ……借金地獄回避だー!」
戦闘後の後処理でヒヤヒヤしていたけど何とかハスバさんに借金しなくて済むのが助かった。レア度レジェンドだろうが何だろうが装備出来ない、使えない物なら僕にとっては最初のズボンや靴以下の存在なのだ