遊び場の悪魔達
ハチ君がコソコソと盗み聞きして悪い事を考えている時よりも少し前……
「アハッ!」
「無様ねぇ?もっと綺麗に踊りなさい?」
体力も気力も充分ある。だが、相手の人数が多く、逃げられない様に足に攻撃する為の弾薬の消費が激しい。こういう時は弾薬無限とも言える投げても戻って来るフランキスカを投げられる妹が羨ましくなる。だが、そんな姿を見せる訳にはいかないのでポーカーフェイスを崩さない様に気を付ける
「まったく、もっと綺麗なステップは踏めないのかしら?」
正直ハチの提案は最初、そこまで乗り気では無かったけど絶望させるのは面白そうだと思ったし、今になれば魂の欠片を入手した奴だけ捕縛する。つまり、魂の欠片を持っていない奴はスルーして良いという事の重要度はイベントが進んできた時の残弾が可能な限り残せるようとの配慮もあったのだろう。ハチのクセに生意気じゃない
「お姉ちゃん、きびし~」
「私達から逃げるって言うのなら、このくらいは出来ないと話にならないわ」
「アハッ!そうだね!」
妹も楽しそうにフランキスカを投げて相手の移動力を奪っていく。最近手に入れたスキルの【バレットファーミング】のお陰で金属があれば弾丸を作る事は出来るが、段々その金属も減ってきた
「本当に何処まで見通してるつもりなの……」
先程集合した際にハチからハンバーガーを貰ったが、周りの様子からどうやら私にだけプレゼントボックスで何か別の物が届いていた。さっき開いてみたら中には属性金属セットが入っていたし……これを使えば弾丸をまた生み出せる。このどうせ足りなくなるだろ?と言わんばかりの補充用と言っても良い属性金属を【バレットファーミング】で弾丸に変換する。これでまた相手の足を撃ち抜く事が出来るが……このスキルについては詳しく話した訳ではないので、多分そういうスキルを持ってそう……みたいな想像でこの属性金属を渡されたんだろう。尚更ムカつく
「何か言った?」
「何でもないわ。それよりこれで一息付けるわね」
逃亡者達を追い詰めて、捕まえる。流石にイベントも進行したお陰で欠片を持ってない人もまず居ない。見かけたら即捕まえて良いのは面倒事が無くて良い
「お姉ちゃん、大丈夫?疲れてない?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっと生意気な奴の事を思い出していただけよ」
「生意気?あっ、ハチの事?」
どうしてすぐに見抜いてくるんだろうか?妹のこういう勘の鋭さは凄い
「キリアはハチの事はどう思っているの?」
「ハチ?好きだよ。だって面白いもん!」
確かに面白い。色々回りくどい事も好きみたいだが、それはその後の為にあえて回りくどい事をしているみたいだから理屈さえ分かってしまえば必要な事をしていると理解出来る。色々と人間離れした所もあるけどそのくらいの方が見ていて飽きない
「そうね。あんなに面白いおもちゃは今までで初めてよね」
最初は一対一で戦おうと思ったら一対二で良いと言い出し、負けたからただ最近調子に乗っているだけの奴かと思っていたら諦めが悪くその場でリベンジマッチ。二戦目からはかなり本気で戦い、私達に泥を付けるというキチンと相応の実力をもっていたり、美味しいご飯が作れたり、一緒にパーティを組んだら間違いなく便利な男だ。喋っていてもそこそこ面白いし
「また戦いたいなぁ……」
「そうね。今度は完膚なきまでにボコボコにしたいわ」
次の機会があれば必ず倒して私達が上だと分からせないといけないわ
「じゃあ今は逃げられた数で勝負だね!」
「そうね。何人逃げられたかで勝負出来そうね?」
何人自分のエリアから逃げられたか。その数で勝負は確かに出来そうだ。イベントが終わってしまえばリベンジも出来ない一発勝負……こういうのは燃えるわ。自分のモチベーションアップの為にもこういうノリは大事だ
「それにしてもあの2人の様子を見るに、絶対ハチの事好きよね……いっその事私から少しモーション掛けた方が面白くなるかしら?」
レベル上げや新装備、装備更新費用を稼ぐ為にロザリーとアイリス達とパーティを組んでダンジョンに入ったけど、あの時軽く会話しただけで出てくる話題の端々からハチ君ハチ君と言っていた。でもあの2人は意外と奥手だからしっかりしないと誰かに持って行かれるという事を教えた方が良いのかもしれない。私もハチの事は嫌っている訳ではない。何なら今まで出会った異性の中で一番良い。1度パーティに誘って何か討伐とかして来たわとあの2人に報告したらどんな顔をするのか……ちょっと気になるわね……
「キリア。今度ハチを誘って何かクエストでも受けてみる?」
「えー!それ面白そう!」
妹がここまで気に入る人も中々居ない。妹の扱い方も上手いから同じパーティを組もうとしても妹が嫌がらない。ここに適当な男でも入ろうとする物なら、まず間違いなく何かしら問題が起きるだろう。まあ私も急にパーティに入りたいなんて言ってくる男はお断りだが
「じゃあさっさと皆捕まえてこのイベントも終わらせちゃう?」
「分かったー!」
そうして私達は逃亡者狩りの為にNPC捕縛者で追い込みを始める。今までは逃亡者を別エリアに出す様にしていたが、今度は内側にどんどん集めて一気に殲滅しよう
「それじゃあ弾も勿体無いからそろそろ使おうかしら【キネシス】」
セカンドジョブである【サイキッカー】の能力を使い、弾の節約の為にそこら辺の物を浮かせて逃亡者達にぶつける。今度はこれで遊んであげるわ