森のアラクネ?
「この感じでもう少し捕まえてみるか」
アラクネスタイル。これは【ヴァルゴ】と合わせると何だか強そうな気配がするぞ?
「これ、中々楽しいな」
ポン君の8本脚で歩くアラクネスタイルはどうしても見た目をアラクネっぽくする為に、僕は正座状態で移動するので長時間は持たないかもしれない。でもこの脛とかに伝わってくる8本の脚が歩く時の感覚はちょっと心地よい。移動が完全にポン君任せなので、ベルトパワーを使う事も出来ないので速くはない。ぶっちゃけてしまうと普通に壁とかは僕でも歩けるから見た目のインパクトとして使えるくらいだ。でも、見え難い魔糸で相手を絡め取ったり、背後から仕掛けてくる相手には魅了をしたり……【幻覚圧】とかも併用すれば魔糸が更に見え難くて捕まえやすいかもしれない。魔糸をメインに使える姿ではあるな
「それじゃあ行ってみよう!」
先に街中か森の中に魔糸を張り巡らせる。そして後からそこに追い込む。これである程度多めに人を捕まえられるだろう。ホラー演出と捕縛効率の両立が出来そうだ
「ふぅ……危なかった」
死神みたいな捕縛者から何とか逃げて森の中に隠れた。他のエリアでもそうだが、NPC捕縛者が案外足が速い。油断してると普通に捕まる
「でも、せっかくイベントに参加してるんだし、どうせ捕まるのならあの人が良いな……」
捕まらないのが一番だが、どうせ捕まるのならNPC捕縛者に捕まるより、前回イベントで勝利を導いてくれたあの人に捕まりたい。前回のイベントの事を考えると今回もまたえげつない事をしているかもしれないし、運営側という事で大人しくしているかもしれない(まぁ、そんな姿は想像出来ないが)
「脱出用の鍵が完成したら脱出口に向かってその鍵を使用すれば脱出。脱出する位置で称号が変わるって事だけど……」
変態が担当する肉林エリアから脱出出来た場合は『たいへんな逃亡者』という「たいへん」がひらがなである事にちょっと文句が言いたくなる称号。双子悪魔(キリキリ姉妹)が担当する遊び場エリアから脱出した場合は『一級逃亡者』そしてあの人が担当するこの百面悪鬼の大劇場エリアから脱出出来たら『悪夢を越えし者』という称号が貰える。こんな提示をされた場合、何処から脱出したいかと言われたら可能な限りカッコイイ称号である『悪夢を越えし者』が欲しいと思う物だ。でも、それこそその称号が欲しい場合には悪夢と言っても過言では無いあの人を越えなければならない
「これでじゃあ『一級逃亡者』で良いやって妥協みたいな考え方はそれこそあの人の策略かもしれない」
称号で何処から逃げようとか考えている人は多分このイベントは逃げきれない。あの人は言わずもがなだが、キリキリ姉妹は2人とも中距離から攻撃してくるし、あの2人は結構機動力を奪ってから相手を仕留める狡猾なスタイルとかも取るから割と残虐性が高い。『たいへんな逃亡者』と馬鹿にしてそうな称号っぽい気はするが、ハスバカゲロウも恰好がおかしいだけで、戦闘センスは高いし、機動力もあって武器も多彩に扱えるので本当に見た目と言動で損しているだけの強者だ。そもそも強くなければこのイベントで捕縛者側に選ばれていないだろう
「何処からも逃げるのはかなり大変そうだっていうね……」
本当に「アイツは他のエリアの人が捕らえるでしょ?」みたいなノリが3回続けば逃げられるかもしれないけど、魂の欠片や鍵が自分の周りを浮くという見た目で分かってしまうから見逃されるって事がほぼ無理だ
「ミッションも……悪いけど多分周りの人がやってくれるだろうし、状況が良くなるまで森の中で隠れていよう」
あの人のエリアは怖いから居続けたくない。という心理を逆手に取ったこの戦略。これでまたこっちが有利になるミッションが出て来るまで待機だ!
「おやおや、この森にお客さんが来たようだねぇ?」
嘘でしょ?何あれ?アラクネ?聞いてない聞いてない。そんな魔物出て来るとか全く聞いてないんですけど!?
「そんな所に隠れていて良いのかなぁ?体、食べられちゃうよぉ?」
何を言っているのかと思い、ふと視線を下にすると足や地面に触れていた手から虫が登ってきている
「「「うわぁ!?」」」
払っても払ってもその虫を何故か払う事は出来ない。体中をうぞうぞと虫が這いまわるのが気持ち悪い。自分の他にも数人この森の中に隠れていたらしく、色んな所から声が聞こえたが、今は他人の事などどうでも良い。この虫を何とか払わないと……
「わぁぁぁ!【ファイアボール】」
自分の体に炎属性の魔法をぶつける奴を見つけた瞬間これなら!と思い、自分も真似する
「【ファイア】ぐっ……」
自分に対し、炎をぶつけて体を這っている虫を焼く。これで……
「やった!消えた!」
「【ファイア】!」「【バーンスラッシュ】!」「【フレアアロー】!」
他にも隠れていたであろう人達が自分に燃える攻撃をして払えない虫を焼いていく
「あーららぁ。そんな抜け方があるんだねぇ?でも、もう終わりだよ」
あのアラクネはあの人が召喚した魔物なのだろうか?分からないが逃げるしかない。そう思って距離を取ろうとした瞬間、何かに体が張り付いた
「それじゃあ捕まえちゃうねぇ」
目の前にアラクネ。そこに人間。そしてこの体に張り付いて取れない糸。この後どうなるのか、頭の中の回路が結論を出した頃には目の前にアラクネが居た
「じゃあね」
気が付いた時には沢山の人が居るエリアに飛ばされていた