吐露
「えっと、じゃあ捕まえるとかの前に色々とお話はしたいなとは思っていたので、ちょっとお話でもします?」
このイベントが起きるまでほとんど会話とかも無かったし、少しお話したいけど……どうだ?
「それは良い提案です!」
「まぁ、ここでハチ君が不意打ちをして来るような人では無いと分かっているし、そうしよう」
おっと……これは先手を打たれたな。今の状態でこの2人を捕まえるのを運営に見られていた場合、完全に信用失うタイプの裏切りだ。ここは動かないという意志表示の為に正座しよう
「とりあえず、二人ともイベントの準備期間は何をやっていたのかなぁって……」
まずは当たり障りのない質問からして行こう
「ハチ君に追いつける様に隠れボスとかを討伐してました」
なるほど、それでさっきキリエさんに聞いた強そうな装備を入手したと、そういう訳か
「なんか見た事ない装備とかしてますし、かなり頑張ったんですね。凄いです」
バカにしてると捉われない様に真剣に受け答えする
「そんな間にも君は何かやったんだろう?」
「ま、まぁ……」
地下都市との交流開始とでも言うべきか……まぁそんな所だ
「私としては何でもこなしてしまうハチ君には敵わないと思うが?」
「…………」
ちょっとこれにはシュンとしてしまう
「ど、どうした?」
「どうして凄い事をしたって褒めてるのに素直に受け取ってもらえないんですか?」
「え?」
「私達は隠しボスを倒したんだぞ!凄いだろ!ってもっと自慢しても良いと思います。そりゃあ僕も色々やってますよ?けど、強くなりたいって一心で隠しボスを探し出して倒すって中々出来ません。それなのに、なんか君の方がどうせもっと凄いなにかやってるんだろう?みたいな態度をされると、僕も嫌です。もっと自分の事をしっかり見てください」
こんな事を成し遂げた!でもどうせもっと凄い事やってるんでしょ?みたいな事がこれからも起こってしまうと皆何に対してもやる気なんて起きなくなる。あの人があんな事をやった。じゃあ自分もそれくらいやってやる!とか、もっと凄い事をやろう!みたいなモチベーションに繋がる事じゃなきゃ良くない
「もし、今の僕が皆さんにとって、ゲームを楽しむ為のモチベーションを奪っているというなら、僕はアルターで今後何もしません。空島に籠って、何か適当に小物でも作って、皆さんが討伐とかして情報が出そろった後でボス討伐とかするだけです」
「ち、違う!そういうつもりじゃないんだ!」
ここは悪いけど、罪悪感を押し付けて僕が有利にならなければならない。そうじゃないと流れに呑まれる。だからこっちから流れを作って相手を呑み込む
「ハチ君は何も悪くありません。ただ、私達と一緒に……遊んで欲しかっただけで」
「それならなんで自分達から声を掛けてくれないんです?勝手に僕を押し上げて、今は自分達じゃ一緒に遊ぶ立場じゃないとか勝手に壁を作ってませんか?ハスバさんは普通に誘ってくれましたよ?」
「「…………」」
一緒に遊ぶ事は何も悪い事じゃないと思う。相手が忙しいタイミングで声を掛けちゃうのは起こり得る事故だけど、単純に線引きをして自分達とあの人は違うと言われると疎外感も感じる物だ。僕が知らない人から言われても別に何とも思わないけど、フレンドにそう思われるとちょっと傷付く
「フレンドって、何なんですかね……」
僕も相手に対して申し訳ないと思う事は結構しているとは思う。情報流さなかったり、一人で特殊なクエスト攻略したり……でも、フレンドとして僕と接してくれているのはハスバさんくらいだ。僕の事を上に見ようが、下に見ようがその辺はどうでも良い。ただ、一線を引かれて自分達とは完全に別の存在みたいな扱いは悲しい
「ごめんなさい。変な話をしちゃいました。このイベントが終わった後にでも今度一緒に何か行きましょう。誘いにくい環境を作った僕が悪いです」
「あ、いや……」
「ちが、あの……」
完全に言葉に詰まったロザリーさんとアイリスさん。精神的にかなり優位には立てたぞ
「じゃあ、僕は行きますね。お二人はゆっくり休んでから逃げてください。NPC捕縛者はここには向かわない様にするので」
「待って!」
流石に追い込み過ぎたかな……
「違うの。ハチ君に迷惑掛けない様に強くなってからいろいろ誘おうと思ってたの。でもどんどんハチ君強くなっちゃうから何か誘うのも悪いかと思って……確かに線引きしてた所はあるけど嫌わないで!」
「お二人の事は嫌ってませんよ。ただ、壁を感じただけで……」
「「…………」」
これ以上追い込むのは良くないな。完全にこれ以上は僕がいじめている様になってしまう
「でも、心配はしてましたよ?」
「「心配?」」
「そういえば2人は今頃何やってるんだろうなぁって。大きい声では言えませんが、リアルでも顔を知っているフレンドはアイリスさんとロザリーさんだけですから」
小声で、2人だけ聞こえるように言う。実際リアルでも顔を知っているのは2人だけだ
「それに今は他の人は眼中に無いのでどうでも良いですけど、2人と腹を割って話せている気がするのでそれだけでも僕は満足です。僕の心情を吐露出来たのは本当の僕を知っている2人だけですし」
利用した様で悪いけど、僕も何か今まで色々言われたい放題でちょっと溜め込んでたかもしれない。大丈夫な気がしてたけど、僕もきっと吐き出したかったんだ。今はかなり気分がスッキリしている
「そ、そうか!」
「私達だけですか!そうですよね!」
なんか急に沈んでたはずの2人が元気になった。女心って分からないなぁ?




