魅惑の女帝?
「やっぱ1分は短いな……」
イドとエゴの能力の1つである【幻影手】と【幻影脚】は実際の手足を透明化して偽の手足を見せる事が出来るので、偽の足の方を体の中に折りたたんで、前傾姿勢で走りながら偽の手でばたばた走っている様にしててけてけをやってみたけど、効果時間が1分しかないから最初に相手に姿を見せた時は服の前部分が垂れた状態にして、単純に両足を引きずっていただけで、時間の節約とかしていたけど……もう今回既に使ってしまったので1時間はてけてけを使用出来ない。にしてもやっぱり誰か使っていると思うと使いたくなるんだろうか?ワザと12本入る所から数本抜いてみたけど、誰か取っている、残りが少ないってなったらデメリット有っても取っちゃうんだなぁ
「そろそろアレやっちゃうかなぁ……でもあれはやっちゃうと失う物が多いんだよな……」
正直どうせやるならとことんやった方が良いだろうけど、あれはちょっとやってしまったら今後がマズい事になってしまうかもしれないし、ハスバさん以上の恰好になってしまうだろう。少し考えて、何か別の物を考えよう。そうだ!
「この辺、人が多くないか?」
「あぁ、ここはNPC捕縛者が来ないエリアらしいぞ。ちょっと休憩するのに丁度良いエリアだ」
「マジか、それはありがたい……」
「休憩出来るのは助かるよな」
相手が相手だから恐怖もあって精神的に疲れる。そんな中で休憩出来る場所が有るのはありがたい
「にしても、聞いた話じゃ肉林エリアはムキムキのおっさん、遊び場エリアは割とガチっぽい悪魔、ここは死神みたいなのが下級捕縛者だからな……この中で一番精神的に優しいのが双子悪魔の遊び場……キリキリ姉妹の所って段階でヤバさがおかしい」
いつもなら強そうな相手が居たら勝負を吹っ掛ける妹と、ドSな姉というちょっと近寄り難い姉妹だが、今に限っては何なら一番胃に優しいまである
「お前のそれは……遊び場エリアの魂の欠片か?」
「あぁ、ちょっと追い込まれてこっち方面に逃げてきた。本当なら先に肉林エリアに行こうかと思ったんだけど、エリアの境目からムキムキおっさんが見えちまって、ちょっとな……」
「あぁ……」
タイミング的にも肉林エリアに渡るのは良くないと思い、こっち側に先に来たのだ
「アンタは?」
「俺は肉林エリアからこっちに来た。ヤバそうな所を最後には残したくなくてな」
先にこのエリアに来ていたみたいだが、肉林エリアから来ていたらしい。ここを最後にするのは確かに怖い。勿論遊び場エリアだって、プレイヤー捕縛者が2人居るから辛い事は辛い。だけどここよりはまだ心が休まる気がする。ここもまさかこんな休憩場があるなんて思いもしなかった
「ここのエリアの魂の欠片を見つけるまで一緒に行動しないか?目が2つあれば敵の接近にもより早く気が付けるだろうし」
「おう、そりゃあ良いな。このエリアだけとは言わずに……と言いたい所だが、お互いに既に別に魂の欠片を持っているしな」
仲間が欲しいと言うように見えるだろうけど、ようは敵に見つかった時に注意を引き付ける囮が欲しいだけだ。お互いにそこまで面識が無いからこそ、このエリア限定で良いから他の人と行動を共にして、自分が捕まる確率を減らしたい。そんな感情が渦巻いていた時だった
「このような所に居たか、豚野郎共め」
「「「「「!?」」」」」
休憩していた地点の中央に何処からか飛び降りてきたのか。軍服を纏った女性が一人降り立った
「マズい!逃げっ……」
「動くな」
たった一言、一言そう言われただけなのに体がこわばって動けない
「並べ豚野郎共」
体が勝手に相手の指示を聞いてしまう。この休憩エリアの縁で休憩していたみたいな奴は逃げおおせたのか、姿は見えなかった。ただ、10人以上がここに並んでいる
「なんだ?まだ1つも欠片を集められていないのか?」
「は、はい!」
「腰抜けが、とっとと1つくらい集めてこい!」
「は、はいぃ!?」
状況に混乱しているが、体の周りに魂の欠片が浮かんでいなかった奴は見逃してもらえたのか?
「貴様、2つ持っているな?何処の物だ?」
「あ、遊び場エリアの物であります!サー!」
「ふふっ、そうか?正直だな。ならば貴様には褒美をやろう」
「ぐえっ!?あひんっ!あ、ありがとうございまぁ……」
一瞬でローキックを放ち、跪かせた男のケツをヒールブーツのヒールで踏みつけてたら男は消えてしまった。この感じ……捕まったとしか思えない。このまま待っていると非常にマズい。早く逃げ出さなければならない
「逃げるなよ?」
「っ!?」
動きを察知されたのか、一喝された。その瞬間にまた動けなくなる。なんだ?どうしてこの状況でこの女軍人から目が離せない?どうして足が動かない?どうして命令を聞いてしまうんだ?
「どうやら最初のアイツ以外は全員魂の欠片を持っている様だな……豚野郎共、そこで四つん這いだ」
言われた通りに地面に四つん這いになる。なんて…屈辱的なんだ
「この豚野郎!」
「あひっ!」
「豚野郎!」
「良いっ!」
「豚ァ!」
「あぁやばっ!」
ヒールブーツで次々とケツに一発ずつ踵がめり込んでいる。こんな状況なのにも関わらず、何故か次は自分の番が来るのを待っている。どうやら、恐怖で頭がやられてしまったのか自分の知らなかった一面を見つけてしまったようだ
「お願いします!」
「何だコイツ…一旦飛ばすか」
お預けとも思える状況で自分を飛ばされて生存しているのにも関わらず、とても悔しいのになぜか嬉しい気持ちになった
「残すはお前一人だが……何故逃げない?」
「何故か逃げられない!」
「既に魅了は解いている。自分の意志で動けるはずだが、なのに動かないのは……お仕置きが欲しいのか?」
確かに途中から体の自由は戻っていた。逃げ出す事も出来た。だけど、俺は動く事が出来なかった
「はい!欲しいです!」
「相当な変態だな?変態、変態、豚野郎?」
耳元で囁かれる罵倒で全身に鳥肌が立つほど喜んでいる。どうやら俺はこの状況で何かに目覚めてしまったらしい
「とっとと頭を冷やせ」
「あひぃぃぃ!」
その時、ケツに来た衝撃は一生忘れる事は無いだろう