捕縛者準備
「遂にイベント当日かぁ……色々準備したけど、全部使えると良いな」
運営が用意してくれた物の他にこっちで用意した物の持ち込みはオッケーとの許可を貰えたし、それに今までスキルや装備の使用感の確認で結構時間を使ってしまった。ダン団長が連れてきた皆に空島を紹介したりもしてたけど……でもお陰でやりたい事はかなり出来るかもしれない
「よし、じゃあ目標は全員捕まえるって事で勝つ?為にはカツ丼だ!」
ゲン担ぎの為、お昼はカツ丼だ。時間にも余裕はあるし、しっかり食べよう
「にしても、本当に滑り込みで良いスキルと装備が手に入ったなぁ?練習でほとんど外に出てこれなかったけど、お陰で大体の感覚が掴めたし」
新しく入手したスキルと装備の能力を確認してからはその能力をしっかり使いこなせるようにかなり練習に時間を割いていた。持ち込むアイテムの製作や確認を合間にして、能力の練習をして……としていたらレベルを上げる時間が無かった。何とかなるとは思うけど、皆をガッカリはさせたくないな
「ちょっと早いけど、アルターには入っておくか」
レベル上げとかはもう間に合わないけど、ちょっとアップがてら空島を見て回るかな
「ふぅ、よし!これからはあの人達も敵かぁ」
城の窓から外を見て、街を歩く人達を見て呟く。前のイベントよりも更に激しい人数差になってるけど、鬼ごっこだし、そのくらい人数差があってしかるべきだろう
「ん?通知……なるほど」
何か通知が届いたので確認してみたら、捕縛者用待機エリアに移動可能との事だったのでそっちに行こう。もしかしたら他の捕縛者の人と会えるかもしれないし、何か説明とか聞けるかも
「よし、持ち物とか忘れ物も確認したから、待機エリアに転送!」
待機エリアに入ったら戻れないみたいな事が書いていたので、忘れ物が無い事をしっかり確認して、通知の最後に出てきた待機エリアに転送のボタンを押す
「っとと、おぉー……浮いてる?」
夕方の様なオレンジ色の景色が一面に広がる待機場所。これ、何処かの上空なんじゃないか?
「円卓……とりあえず座って待っても良いのかな」
オレンジ色の景色の中に色んな意味で浮いているダークウッドな円卓。まだ誰も来ていないし、適当に座って待っていても良いよね?
「捕縛者の待機場所って事だけど、周りは何も見えないな……もしかして雲の中だったりするのかな」
夕日に照らされる雲の中。そのくらい周りは何も見えないただのオレンジとしか言えない
「おや、ハチ様。お早いですね」
「あ、オーブさん。どうも。他の捕縛者の方が来るまではお話とかしてもらっても?」
「構いませんよ。何を知りたいですか?」
とりあえず他の人が来るまでの間は話を聞いておこう
「ここって何処でしょう?」
「はい、皆様がこれからプレイして頂くイベントエリア上空です。イベントが開始する際に、捕縛者はイベントエリア上空から自分達の担当エリアに侵入して頂きます。多少ではありますが、相手の大まかな位置を確認する為ですね」
上空から担当エリアに侵入……それを聞いただけでも何となくどういう感じなのかイメージ出来る。今回はプレイヤーが運営サイドにも居るお陰かあまりイベント情報が出ていなかった。イベント開始してから詳細な情報が出てくる物だとは思ってたけど、エリアを担当とかって言ってるし、中々大変そうだな
「ルールに関わる事は全てその資料に纏めてありますが、もし分からない事があれば何なりとお申し付けください。説明致します」
「はい、わかりました。あっ、持ち込みアイテムの事で相談したいんですけど……」
「……はい。確認が取れました。事前に設置したいアイテムがあるとの事ですが、こちらに提出して頂ければハチ様の担当エリアにランダム設置させて頂きます」
前に診察してもらった時に東郷さんに色々やってみたいからと相談したけど、どうやら話は通っているみたいだ。アイテムを事前にランダム設置してもらえるのはありがたい。自分で仕掛けていたら時間が勿体ない所だった
「人数差凄いですが、これだとかなりの数逃げられる可能性ありますけど……」
新しいプレイヤーも入ってきたし、それこそ数人対2万人近い状態になるかもしれない。数千人相手でも中々辛いけど、その辺はどうするのかな?
「それに関しては、我々が下級捕縛者を皆様の担当エリアに派遣しますので、連携して頂けると幸いです」
下級捕縛者……つまりNPCが一緒にエリアを徘徊して場所を教えたり、捕まえたりしてくれるのか
「その下級捕縛者はこちらの指示とか聞いてくれるんでしょうか。追い込みをしたいからこっちに行かない様に道を封鎖して欲しいとか」
「包囲網を作り完全に逃げられない様にする……等は出来ませんが、何処かに追い込みたいから誘導する為に違う道を塞ぐ程度であれば指示を出す事は可能ですね」
逃げる場所を無くす為に横一列に並べて包囲殲滅……みたいな指示は聞いてもらえないと。それだけ分かれば充分だ
「なるほど。情報ありがとうございます」
「いえいえ……そろそろ別の捕縛者の方が来られるみたいですよ?」
「おっ、別の人ですか。どんな人かなぁ」
誰だろう?知り合いかな?それとも知らない人かな?
「「えっ?」」
「……ハチ君?」
「……ハスバさん?」
別の捕縛者……すっごい知ってる人が来ちゃったんだけど?




