報酬先延ばし
「さて、それでは話してもらおうか?」
「何をだ?」
「ハチ…お前、何か隠しているだろう?本心を見せろ」
ニクリウスを連れて肉の部屋に戻ったらいきなり本心を見せろと言われた。ニクリウスさんには見抜かれてしまったか
「ふぅ……これ結構疲れるんですよねぇ?最初は舐められたらこの戦いに参戦出来ないと思ってこの恰好してましたが、じゃあいつも通りの恰好に戻ります」
軍服スタイルを解除して白ローブ……ポン君が付いてるから黒ローブに姿に戻る。まだ帰還させなくても良いか。ここから帰る時にまた戻る必要あるし
「目的というか…何が狙いだったのか…聞きたかっただけなんだが…」
「え?」
「いやまぁ…自然体の方が楽ならそれで良いが…人が変わり過ぎだろう?」
これはある意味軍人スタイルにお墨付きをもらえたって思っていれば良いのかな?
「何が狙いか……包み隠さずに言えば、これから個人的に大きな戦いがあるからその時に役立ちそうな戦闘方法とか、新しい力が入手出来たら良いかなと思って首を突っ込みました」
下手に隠すよりもしっかり伝えた方が良いかなと思って包み隠さずに話した
「本当に隠して無さそうだな……」
「勿論地上に居る人がこれ以上廃人になったりしたらマズいと思うからやったけど、一番は自分の為にですね」
「随分はっきり言うな?まぁそういうのは嫌いでは無い」
「それは良かったです。ニクリウスさんも何か隠しているじゃないけど、何かやりたい事とかあります?」
どうせならニクリウスさんも何か隠している事があるのなら聞いてみたい
「何かしたい事か。空を…飛んでみたいな」
空を飛びたいと言われても僕は自由に空を飛べるわけでは無いし……あっホーライ君辺りに頼めば空を飛ぶ事は出来るか
「空を飛べる知り合いが居るんでちょっと話だけしてみますか?」
「それは本当か?ならば一度話をしてみたい物だ…どんな景色なのかとな」
「ん?多分背中に乗せて一緒に飛べると思いますけど……今のサイズのニクリウスさんなら一緒に乗るくらいなら問題無いと思いますし」
僕が両手で持てるサイズだし、これなら一緒に飛ぶのは問題無く出来ると思う。まぁホーライ君がダメならパーライさんかヘックスさんが使ってた飛行ドローンみたいな物とかに乗せてくれないか相談する事も考えよう。こう考えると空を飛ぶ伝手って僕にも結構あるな?
「と、飛べるのか?」
「多分ですけどね?まぁここからは流石に行けませんが、僕の拠点からなら問題無いかと」
「そうか…ハチ。口を開けろ」
「口?あー……んごっ!?」
何かが口の中に飛び込んできた。反射的に吐き出そうとしたけどすぐに僕の体の一部になる感覚が広がり、吐き出せなかった
「今、我の一部をハチの体に埋め込んだ。その空を飛ぶ時が来たら教えてくれ。そうしたらハチの体から出て空の景色を見る。その時にこれまでの礼を纏めてしよう。どうだ?悪い話では無いだろう?」
纏めてお礼……つまりニクリウスさんを空に飛ばすまでは今回のクエストの報酬は貰えないと見た方が良いのか?
「分かりました。それじゃあ戻ったらすぐに飛べるか相談してみますね」
「では頼むぞ」
空が飛べるかもしれないって事で、ちょっと楽しそうに体をぷよぷよ左右に揺らしながら肉の部屋の奥に進んで行ったニクリウスさん。さっきの話的にも細胞分裂的な事をしてニクリウスさんの分身を僕の体に寄生?か何かさせたのかもしれない……空を飛ぶ時になれば分離してくれるみたいだけど、これって……飛ぶ時まで監視されてるのと一緒なんじゃないか?早い所話を付けないと「おい、約束はどうした」と僕の体を勝手に動かすとかされるかもしれない
「あの、勝手に僕の体を動かしたりしないでくださいよ?」
「大丈夫だ。まぁ忘れていたら流石に思い出させる為に分かりやすいように腕とかに現れても良いぞ?」
右手が謎の生物みたいになったりするんだろうか……それもちょっと良いかもしれないと思ったけど、ニクリウスさんに主導権を握られたら戦闘の時に大変だ。地上に帰ったら即空島に戻ってホーライ君を探そう
「じゃあ、空を飛ぶ為に僕は戻ります」
「あぁ、たまには地下街にも来てくれ。歓迎しよう」
空島、海底都市、地下街(というより地底都市?)、深淵……おおよそ一般的な人間では秘境を通り越して普通は到達困難な場所に伝手と言うか、知り合いが出来て行くなぁ?まぁ地上でも吸血鬼のお偉いさんとか、昔の英雄とか凄い人達とも知り合いになったけどさ?
「分かりました。ではまた」
肉の部屋から出て、階段を上がる。途中でポン君に軍服にしてもらい、そのまま地上に帰還だ
「よし、あぁでも空島に戻る前にダン団長達に話だけしに行こう。そのくらいの時間はある」
肉の部屋から地下街に戻った時に新しく帰還用の場所が出来ていたらしく、そこから地上に帰る事が出来た。今後は地上との行き来がしやすいように整備したんだろう。周りに居た獣人と人に敬礼されて地上に帰還した。クエスト自体はまだ完了していなくても、地下の問題は解決出来た。それなら地上の人に報告しても良いだろう。ダン団長はあの喫茶店か大通りとかに居るかな?
「おっ居た居た。ダン団長」
「おや、ハチさん。どうしました?」
「例の地下街を見つけまして、何人か迷い込む事が有ったみたいですが、それが今後起きないように地下街の人達と話を付けてきました」
「流石はハチさん。そのような事を簡単にやり遂げてしまうとは……流石ですね?」
本気で聞いているのか、子供の話として聞いているのか分からないけど、まぁダン団長なら悪いようには捉えないだろう
「そうそうハチさん?この前の公演を手伝ってくれて我々が大躍進させてもらったお礼の品があるのです。いつかハチさんがまたステージに上がる。そんな時の為にご用意したのですが……受け取っていただけますでしょうか?」
そう言いながらダン団長は1つの箱を差し出してきた