地下街の光明
「落ち着いてくれ。とりあえず彼らは地上に出ても良いのだろう?」
「我の力は地上までは届かん…それを覚悟するのなら行っても良いだろう…今までの経験で地上で万が一という時でもなんとかなるだろうが…逃げる事を最優先で考えろ」
おぉ、ニクリウスさん結構良い事言うなぁ
「もしかしてこの時の為に……」
「俺達の事を考えてあの力を?」
「自力を付ける為に死なないあの力を……」
「「「ニクリウス様!」」」
「ん…んん!面を上げよ」
顔が付いていたら滅茶苦茶調子乗ってそうな顔してそうだなぁ……
「先程もニクリウス殿が申していた様に、幾ら力を持っていても戦闘では常に逃げる事は頭の中に入れておけ。俺も基本は数の不利な戦闘になる事が多いので逃げる事は常に考えている」
逃走が出来る状態か出来ない状態か、それの確認は重要だと思う。勿論逃げられない戦いとかはあるけども、無用な戦闘は避けた方が良いだろう
「あんなヤバい化け物でも逃げるんだ……」
「あんな恐ろしい存在でも逃げる事を考えるんだ……」
「そもそもあの化け物に逃げるって思考回路が有ったんだ……」
ひっどい言われ様……だけどここでキレたら全部ダメになってしまうだろうからグッとこらえる。この人達結構言うなぁ?
「お前達…その辺で止めておかないと…コイツはやるぞ?」
「「「「「………」」」」」
あのハスバさんを踏みつけた時の事を思い出しているのか、結構深刻そうな声音で喋るニクリウスさん。お陰様でさっき僕に対してあまり良くない事を言った人達が全員無言で土下座しだした。ブルブル震えてるし、なんで怖いならそんな事を口走るのか……
「とにかく、自分達に特殊な力があるとは思わず、生き残る事を最重要にしろ。そうすれば地上で多くの事を学べるだろう」
どれだけ怖がられているか分からないけど、調子に乗らないで地上で色々学べば、ここの環境はより良い物になるのは明らかだろう。空島は……その内紹介しようかな?彼らに今必要なのは地上の知識だろうし
「これでもう問題は無いな?俺を地上に戻してくれればそれで全て終了だ。俺の事を恐れている者も居るようだしな?」
その瞬間ビクッと驚く土下座組。あの人達は地上に出る事が出来るようになったと言ってもしばらくは出てこないかもしれないな……
「我をあの部屋に一度戻す任を与えるからハチは帰るのを少し待て。煙の力だが、あれはあくまで再生能力を高めただけで、戦わなければ再生する部位も無く、自身の肉体を自身で痛めつけ、再生していた。だから戦わない者はそれのせいで寝込む事になっていた。自己防衛の為の力を養う為とはいえ、今まで酷い事をして申し訳ない。今後は怪我した時のみ傷を癒す為に使用しよう。我々の為の楽園をこれから築いていこう」
ニクリウスさん、あのナリで皆を纏めるのはちょっと難しそうだけど、それでも何とかここに居る者達はニクリウスさんと上手くやっていくのだろう
「難しいかもしれないが、ここが発展していく事を願っている」
どのくらい時間が掛かるのか、どのくらい協力者を得られるのか。一応僕も関わってしまったし、どれくらい時間が掛かるか分からないけど、今はこの場所がより良い場所になることを空島から見ているしかないだろう。困った時は手を貸すつもりだが、可能な限り自分達で解決するようにしてほしい
「我々の争いを止めてくれた事で、新しい道が開かれました。ありがとうございます」
「あの時、片方の言い分しか聞かないなんて事にならなくて本当に良かった……」
「今度からは無理矢理連れて来るのではなく、こっちから行きたいと思えるくらいにしてくれよ?」
リーダー2人と軽く挨拶して握手する。これからはもう地上の知識を得る為に攫うみたいな事はしないだろうし、頼むぞ?
「よし、ではハチ。部屋に戻してくれ」
「あぁ、了解した」
ニクリウスさんは2人と握手する時、左腕で抱えていた。なんか置くのも失礼かなと思っていたけど、小脇に抱えるならどっちみち失礼だったかな?まぁ気にしてないみたいだしセーフ
「教官!」
「どうしたキャティ」
肉の部屋に行こうとしたらキャティ君に呼び止められた
「ボク、教官の所で色々勉強がしたいです!」
「何故だ?あれだけ嫌な目にあっただろう?何故俺の所に来たがる?」
キャティ君は多分優秀な人材だ。そんな人材だからこそ今はこの場所の為にここに居るべきだ。こっちに来るべきでは無い
「教官みたいな人の所で学べたら皆の役にも立てると思うんです!」
「ウチのバカ息子ですが、良ければ見て頂けないでしょうか?物覚えは良い方なので……」
レナーグさんもその気かぁ……
「俺の所に来ても役に立つ事は学べないかもしれないが、キャティがどうしても来たいと言うのなら考えておこう。だが、今はこの地で親との時間や仲間との時間を大切にしろ」
「はい!」
「ありがとうございます」
今日そのまま連れて帰るのはちょっと良くないと思う。イベントが終わった後くらいに迎えに行くくらいが良いかな?いずれにせよキャティ君の受け入れ準備を整えてからだな