引き返せない
「アレとはなんだ?」
皆が束縛されている奴とやらを何とか出来ればこれ色々解決出来そうなのでは?
「この地下の更に地下に封印されていて、我々に煙の力を与えてくれる存在が居るんだが」
「そ、その話はしても良いのだろうか……」
ギルバさんが話始めたらレナーグさんが止めに来た。まぁ自分達の力の秘密みたいな物を話そうとしてるし、さっきの覚悟とは話が少し変わってくるか
「問題無いだろう。隠そうとしてもこの人にはどうせいつかバレる。その存在に我々が地上の人間を引き込むのは許されているが、我々が地上に行く事は許されていないんだ」
「なるほどな……というより何故逆らえない?力を与えているだけなんだろう?」
どう聞いてもソイツを何とかしないと未来無いんじゃない?
「封印とギルバは言いましたが、我々が力を貰っているのは確かなので封印と言うより共生と言うべきか……」
「我々はこの場所で煙の力を扱い、戦っていました。ですが、それはある意味仕組まれた物と言っても過言ではないかと」
「仕組まれた物……」
「日によって違いますが、お互いに煙の力を使える者は1日で何人と決まっております。そして、その力を扱える者はその日一度は使用しないと風邪の様に寝込んでしまう事が有ります。かの者の匙加減で我々が地上に出たらその状態にする事が出来ると、感覚で分かるのです」
なんか、本当に仕組まれてる感満載だな?封印されている奴と皆何となく繋がってるのかな?そんな状態で地上に出たら確かにどうなるか分からないよな……それこそ死ぬかもしれない
「なので、力が使える者は前線で戦って、そうでない物は拠点で大人しくしている。そのような状態が続いています」
話を聞けば聞く程新しい情報が出てくる。そしてなんか黒幕みたいな存在も分かってきたな
「では誇る力と言うよりは、仕方なく使う力という事か?」
「あの煙の力を使えば再生力が強化されているから負った怪我の回復も早い。寝込むくらいなら戦った方が楽まである」
それってつまり争いが見たいからそういう力をわざわざ与えている可能性もあるよな……こういう力って何となく、与える相手はろくでもない可能性があるよな
「貴様らにその力を与えているのは何かしらの上位存在か」
まだ神様と決まった訳じゃ無いからそのあたりはふわっと聞いてみる。人間より上位の存在?みたいな聞き方だから人によっては多分そう、部分的にそうみたいな捉え方になるだろう
「人よりも上位存在かと言う事でしたら、多分そうです。煙の力によって事故で死に掛けていた者も生き延びる事が出来たので、我々もこの力を恨む事は出来ないのです。神が我等に与えし力。代償はありますが、正しく使えば消えかけた命を繋ぎとめる事が出来る……そう私は考えています」
レナーグさんは神様からの贈り物的ニュアンスで捉えていて、命を救える物だから手放したくない感じなのね
「そうか……だとしたら俺はその存在と話をしなければならない」
「ま、待って下さい!あの力が無いと……」
レナーグさん的にはやっぱりこの力を神聖視してるし、手放すといってもやっぱり……となってしまうのも分かる。でも、これは絶対に良くない
「救う力と言えば聞こえは良いが、その力でお前達はこの地下に縛り付けられている。人間、生きていればより良い環境を常に欲するものだが、そのせいで争いになるのは今回の事で良く分かっただろう?貴様らが攻め込んでこなくても、被害を被ればこちらから攻め込む」
「「……」」
言い分を一方的に言って、じゃあ受け入れてね。は反発が凄い事になるから、自分達で選んだって形にしないと……
「力を手放さずに今のままを望むのも分かる。だが、今のままでは貴様らは力という餌を与えられて、仲間同士で傷付け合う姿を見せて主人を喜ばせる為に堕ちていく家畜の豚だ」
今のままでは絶対にまた同じ事の繰り返しが起こる。だとしたら自分達が変わるしかない
「力を捨ててでも一歩を踏み出し、他者との交流を持って、自分達の力でより良い環境を生みだせ。家族の為に、仲間の為に、首を差し出すと命を張れる貴様らならばそれが出来るんじゃないか?何者かに言いなりの人生か、それとも自分で自分の道を歩むのか。今なら俺は貴様らの未来に手を貸す事が出来る。まだ手を取り合える」
代表の2人に向かって両手を実際に差し出して、言葉と行動で相手の心を揺さぶってみる
「ボク、外の世界を見てみたい!」
最初に声を上げたのはやっぱりキャティ君だった
「煙の力は無くなっても良い。もっと広い世界を見て、色々学びたい!」
向上心と今、この場で最初に喋り出す度胸。キャティ君良いぞ!
「私も……煙の力で助けてもらったけど、元々は煙の力を使った戦闘に巻き込まれて大怪我をした。この力は無くなっても構わない。新しい生き方を見つけたい!」
キャティ君が言い出した事で両方の人がポツポツと煙の力が要らないと言い出してくれた
「でも、この力が無いと俺達は……」
「その力があった所で貴様は俺に勝てるのか?頭を引き千切られても煙の力で何とかしてくれると?そもそも戦争になれば貴様らが煙の力で回復する為に撤退させてもらえると思っているのか?俺はそこまで温くない」
「……」
まだ力に固執がある人は、とりあえず凄んでおいて力を持っていても意味が無いと思わせる。勿論そんな事は出来ないからハッタリなんだけどね
「迷い人様。名前をお教え願えないか」
そんな中、レナーグさんが頭を下げて聞いてきた
「何故名前を聞く」
「我々を呪縛から解いてくださる方のお名前を知りたいというのに深い理由は要りますか?」
「なるほどな。だが、1つ間違っているぞ」
「?」
「俺は手助けをするだけだ。呪縛から逃れても、その先に進むのに必要なのは自分達の意志だ。ここに居る皆の自由を掴み取る為に俺……ハチは、まず第一歩を踏み出そう」
さぁ、もうカッコつけてここまで言っちゃったからやっぱりさっきの話は無しとは言えなくなっちゃったぞ?どんな強敵だとしても僕が何とかしないといけなくなっちゃった