ダンジョンへ
広場から南に行くと思われる集団を見つけた。これここから何処に歩き出すか見るだけで南に行けるか
「まぁとりあえずついて行こう」
ガッツリ追跡する訳でも無いし、大体の人もどこかしらに歩いて行っているから追われてると気が付かれる事も無いだろう
「兎狩りが終わったらホフマンさんの所に持っていくか」
「ホフマンさんに持っていけば少し安くしてくれるしねー」
若干近寄った時に聞こえてきた会話はどうやら兎を倒した後にどうするかの話のようだ。ホフマンさんって人は料理人とかなのかな?
「まぁ料理は自分で出来るから別に良いかな……」
誰にも聞こえない様に小さな声で独り言を漏らす。わざわざ人に頼んでお金払って料理を作ってもらわなくても自分で獲って、自分で料理する事が出来るんだからそれで十分だ
歩いて行くと遂に門に辿り着いた。何度見てもでっかい門だなぁ……
「一応確認してから行くか」
追いかけていたパーティはさっさと門を越えて走って行ってしまったけど念の為に門の衛兵さんに訊ねてみる
「すいませーん」
「ん?旅人さんが何か用かな?」
「えーっと、ここは南門であってますか?」
「あぁ、ここは南門だよ?もしかして初めて見たのかい?」
「えぇ、まぁそうです」
僕が街にやってきた時に出会った衛兵と違う人だから多分来た門と違うと思う
「お時間取らせてすいません。じゃあ僕は行きます」
「あぁ、気を付けてな!」
衛兵さんに見送られながら門を出る
「例のダンジョンは南東方向だからこの道から外れて真っ直ぐ進んじゃおう」
南門から真っ直ぐ伸びた街道から平原に向かって歩く。スライムとか鶏とかいっぱい居るけど僕に向かってくる奴は居ない。【欺瞞】が良い仕事してくれるなぁ?
「ぽよぽよしてるスライムを見てるとちのりんを思い出すなぁ……よいしょっと」
スライムをつんつんしてみたりするけど攻撃と判断されないみたいでスライムも反撃してこない。試しに持ち上げてたりしてみても特に暴れない。でもこのままスライムを持ち運ぶのも悪いので地面にそっと戻す
「じゃあねー」
スライムを地面に戻してからまた南東に向かって進む。今度はイドとエゴも装備して仮面も首輪形態から仮面形態にして【リインフォース】を発動して進む
うん、木の上を飛び跳ねながら進むのもそこそこ速かったけどダッシュするのもかなり速い。このまま加速していくと自分の足の速さでスローモーションに突入してしまうかもしれない
「おっ?これかな?」
ガッツリ走って30分くらいかかっただろうか?そのくらい走ってやっと森の中にこじんまりとした岩が集まった小さなドーム状の物が見えてきた。これがダンジョンかな?中に下に向かう階段があったので降りてみる
「えーっと、これがハスバさんから貰ったダンジョンの地図で……うん合ってるね」
見える範囲の道と貰った地図情報を照らし合わせてみると道の向きとか合ってるからこの地図情報は信頼してもいいと思う。ハスバさんには何も無い手探り感でやるのが好きだと言ったけど情報を既に持っているなら使わない手はない
「貰ったのはマップ情報だけだけどここには何が出てくるのかな?」
ヴァイア様が居たあの洞窟はダンジョンとしてはかなり特殊な部類だったと思うけど、このダンジョンは普通に何か敵が出てくるはずだ。壁に小さな松明が掛かっているからぼんやり見えるけどダンジョンは基本こういう明かりがついているのかな?
「ハスバさんにこっちの方来ましたーって言っておこうかな?」
マップ情報を教えてもらった事だし、次の街に進む方では無くこっちの方に来たとメッセージを送ってみよう
『機密情報を貰った方のダンジョンにやってきました。これからボスに挑みに行きます』
と、メッセージを書いて送る。さて、それじゃあ行きますかぁ!
「待たれーい!」
「んえっ!?」
タッタッタ!と音がした方を見るとそこに現れたのはスク水頭巾……ハスバさんだ
ダンジョンの道の奥の方からこっちに走ってくるスク水頭巾は一瞬本気で敵かと思った
「ハチ君、まさかこんなに早く来るとは思っても居なかったよ!」
「結構本気で向かってきたので……」
「もしかして私を助けに来てくれたのかい?」
「いえ、全然そんなつもりは無いです」
「おふっ、中々どうして、ハチ君に冷たくあしらわれるのも良い……」
「さて、フレンド解除は……」
「待て!すまなかった。冗談だ」
「冗談じゃなきゃ困りますよ……あとこれ返しますね」
ハスバさんに僕の名前入りスク水を返却する
「中々良い物なんだが……ん?そういえば街で会った時と恰好が変わっているな?」
「まぁ戦闘用的な感じですかね?」
わざわざこれから戦うのに装備を外したまま行くのは流石に舐めプだろう
「ハチ君、どうだろう?私とパーティを組んでボスを倒さないか?」
「ハスバさんと?うーん……」
「何か不都合でもあるかな?流石に1人では辛いと思うぞ?」
1人より2人。確かにそれはそうだろう。だが、僕には組みたくても若干躊躇してしまう条件が発生する
【無縁】と【無頼】のソロ時のステータスアップ効果
2つ合わせれば全ステータス50%アップする僕の持つ中でかなり強い効果を持っている称号効果。それがパーティを組む事で効果が発揮されなくなるのはかなり痛い。だからすぐに「はい、組みましょう!」とは言えなかった
「……お願いします。ハスバさんとパーティを組ませてください」
だが、僕はパーティを組む事を選んだ
「分かった。ではこっちからパーティ申請を送るぞ」
「はい」
多分だけど僕よりハスバさんの方がレベルは高いだろう。だったらレベルの低い自分にブーストを掛けて何とかハスバさんに並んだ状態のソロで挑むより、フルポテンシャルを出せなくても僕の補助とかを掛けたハスバさんと一緒に行った方が総合的には強いハズだ
「とりあえずボス一直線じゃなくてちょこちょこ敵は倒させてください。今だけのパーティだとしても連携とかも取れるようにしたいので」
「分かった。それで行こう」
ハスバさんとパーティを組み、遂にダンジョンに挑む事にした