捕獲
「ほう?どうやらウジ虫の評価は改めた方が良さそうだ。会敵しない様に進めるならこのまま案内をしてくれ。頼りにしてるぞキャティ」
「は、はい!こっちです」
敵に会わない様に道を選んで進むキャティ君。ウジ虫呼びから名前呼びに変えて、頼りにしてると言ったからか、尻尾が左右に揺れている。さっきまでの委縮していた感じは無いからとりあえずこのまま進んでも大丈夫そうだな。ちゃんと両耳が動いて敵の音を探知しているのか細道を進んだり、屋根の上を進んだりと普通には進めないルートだけど、敵をちゃんと避けているみたいだ
「こちらの目標は相手のリーダーの捕縛だ。不要な戦闘をする必要はない。救援も無いのだから余計な事に体力を使うなよ。捕まえて帰還する時に相手から攻撃される可能性が無いとは言い切れないからな」
手錠をかけて終わり。だったらすぐ終わるかもしれないけど、向こうまで連れ帰る必要があるだろうし、帰りは人質を盾にしながら戻る事を考えたら無駄な戦闘で疲れたくない
「あそこにいると思います……けど、何処に居るはまではちょっと分からない…です」
「そうか。ならまずは上から調べるぞ。壁は登れるな?」
「はい!教官!」
最初の態度からかなり軟化させているからか、キャティ君の表情も明るくなった。まぁ油断しない様に後ろから見守っていよう
「よし、少しこの中に入っていろ【擬態】」
「ふえっ!?」
僕と同じくらいの大きさのキャティ君に肩に掛かっているポン君コートを被せて二人羽織みたいな状態にしてから【擬態】を使った。これで一応2人共【擬態】によって迷彩効果が出ているハズだ。目標地点周りの通りを二人羽織状態で渡り、壁を登って敵拠点に侵入する
「よし、侵入経路を探すぞ」
「は、はい」
別れて探したら目標を早く発見出来るかもしれないけど、敵に見つかった時に対処する事を考えたら2人一緒に動いていた方がフォローが出来るから一緒に侵入経路を探す
「あそこの窓が開いてます」
「確かに、あの場所なら相手も油断するだろう。あそこから侵入だ」
大体6階くらいかな?そこの窓が開いていた。さっきの二人羽織の感覚で言えばキャティ君1人くらいは持って上がれるかな?ちょっと試してみるか
「相手の拠点の壁に爪痕を付けるとバレる可能性がある。少しの間だけ持つから大人しくしていろ」
「えぇっ!?」
さっきのは守る為の外壁だから傷が付いているくらい不思議じゃないと思い、普通に登ってたけど、こっちの壁は登るのをミスって滑り落ちたりして、爪痕とか付けたら非常にマズいから僕が持ち上げてあの窓まで登って行き、証拠を少なくしようと考えている
「静かにしろ。ここは敵の勢力圏内だぞ」
「す、すみません。でも、そんな事をして登れるんですか?」
「説明は後だ。さっさと行くぞ」
キャティ君を抱えて壁を歩いて登る。下向きでは無く、自分に向かって重さが掛かるので、少し不思議な感じだ
「す、凄い……」
「もう良いか?早い所敵のリーダーを探すぞ」
「はい」
持ち上げられて壁を登るという体験をしてワクワクしている所申し訳ないけど、その感想を聞いている暇はない。窓から拠点の中に入り込み、捜索を開始する
「こっち側の奴は煙の装甲の内側は獣人みたいな姿なのか?それとも俺の様な姿なのか?」
人型なのか、獣人なのか、それ次第で変装とかが出来るかもしれない。もしかするとそれですれ違いざまを見逃してもらえる可能性もある
「一応教官に近いです」
詳細はまだ見てないから分からないけど、人に近いんだな?
「俺に近いと言う事は、キャティは見つかったらすぐに仲間では無いとバレるんだな?なら警戒しておけ」
捕虜とかそういう言い訳が通るかどうかって所だな。発見されない様に気配には充分注意しよう
「ここからは何か見つけても勝手に走ったりするなよ。安全重視で行く」
何があるかは分からないけど、ここでキャティ君が勝手な行動をしたら潜入した意味が無いから気を引き締める
「はい、教官」
真剣に言ったのが伝わったのか、キャティ君も両手で頬を叩いて気合いを入れ直すみたいな事をして返事をしてくれた
「どうやらここがリーダーの部屋みたいだな」
「いよいよですね……」
【察気術】とキャティ君の嗅覚とかで危険を回避しながら探索をしていったら、1部屋立派な所があって、その中で1人が執務机に向かって作業をしているみたいだった。オーラを視るに、この人がリーダーと見て間違いないだろう
「行くぞ?可能な限り速攻でケリを着ける」
「はい…行きましょう」
コンコンコンと扉をノックする
「入れ」
部屋の中から声が聞こえる。【察気術】で中の様子が見えるが、資料とにらめっこしているようだ。他に部屋の中に誰か控えている様子もない。アイコンタクトでキャティ君に扉を開けさせる
「なっ!?」
「【フラッシュ】【ハシャフ】」
扉が開いた瞬間にベルトパワーで距離を詰め、眼前で強烈な閃光を見せ、怯んだ隙に声を出せない様にする。救援要請を出されても面倒なので、そのまま地面に押し倒し、ジャマーワッパを付けた
「えぇ……?もう、終わったんですか?」
「あぁ、よくやった」
「えへへ……」
ドアを開けたあと、部屋の中に入って来て戦おうとしていたキャティ君は既に制圧終了した敵リーダーを見て呆気に取られていたので、とりあえず褒めておこう。ここで下手に〇〇の恨みー!みたいな流れに行かない様に気持ちが怒りとかに向かない様にする
「この争いを終わらせるから協力しろ」
「……?」
それはそれとして、キャティ君には聞こえないくらいの小さい声で相手のリーダーの男の耳元で囁く
「お前には人質になってもらう。向こうまで来てもらうぞ」
とりあえずこれで一歩前進だ