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「その他には何かあるか?」

「他には特に無いですね。とりあえずイベントは盛り上げるように頑張ってみます。あっ、一応イベントの有利になる情報とかは言わないでくださいね?説明があるのなら他の人と同じタイミングで説明を受けたいですし、そういうズルはしたくないですね」

 色々とイベントでやりたい事を粗方話したので、何個か実現出来れば良いなぁとは思っている。一応、開発者から他の人よりイベントに有利になる様な情報を先に入手するみたいなのはズルっぽくてなんか嫌だし、東郷さんと出会えたのも、アルターを始められたのも全部偶然の産物だ。その偶然を良い事に図々しくイベントをどうしたらより楽しく出来るか話すのは良いとしても、どうしたら有利に進められるのかを聞くのは違うだろう


「ほう?まぁ聞かれても答えないが、その考え方は真っ当で良いと思うぜ?」

「ありがとうございます。実はまだ何か検査する事が残ってたりします?」

 世間話をしているけど、何か検査が残ってたりしないか聞いてみる


「そうだな、一応さっきの話を聞いて少し気になるから脳波測定もさせてもらっても良いか?」

「と言いつつもうやっているのでは?」

「ははっ、バレてたか」

 カマをかけてみたら本当にやってたみたいだ。脳波測定と言ったらなんか沢山のケーブルというかコードが付いたヘルメットを被るイメージだったけど……ヘッドギアがその役割をしてくれるんだろうか?


「ま、落ち着いた状態とさっきの状態でどのくらい変化が有るのかは結構重要なデータだからな。その辺はしっかり検査しよう」

「お手柔らかに頼みます」

 脳波の測定がどんな風になるのかは分からないけど、とりあえず何とかなりそうだな


「おっと!忘れる所だった。外傷はさっきの検査で無いと分かったが、ゲームをやっててダメージのフィードバックが起こったりはしてないか?それに関してはかなり気を付けているんだが、ゲーム内で攻撃を喰らった所が痛むとかは起きてたらすぐに言ってくれ。ゲーム内でもコールしてくれればすぐに対応するからな」

「ダメージが現実にまで影響が出る様な事は一切ないですね」

 イベントの時とか、お腹を思いっきり刺された(ほとんど自分で刺されにいったような物だった)けど、現実に戻ってきた時には痛みを感じたりはしなかった。それにここ数日もフィードバックがあったらヤバいと思えるほどのダメージを受けていないけど、個人的に見てもダメージのフィードバックは発生していないと言えるだろう


「感覚100%で遊んでる人間の生の話は中々聞けないからな。貴重な意見のサンプルとして聞かせてもらうぞ」

 その辺は本当に頑張ったんだろう。プラシーボ効果じゃないけど、只のビタミン剤を病気の為の薬と服用しても病気に対して効果があったり、目の前で沸騰させたやかんを見せた後に目隠しをして腕に冷水を掛けたら火傷した……みたいな話があるけども、人間の思い込みの力というのは中々に怖い物がある。ゲーム内でお腹を刺された事にびっくりして実際の体に内出血が出来るとかも今の所は無い。他の人達は感覚100%はダメージを喰らった時が怖いからやらないみたいな話だけど、僕としては感覚が研ぎ澄まされてない方がダメージを受けると思うんだけど……これは完全に持論だな。アルターのゲームはゲーム、現実は現実としっかり区別出来ているのは凄いと思う


「あ、現実にも影響があると言ったら、気配とかに気を付けるようになったくらいですかね?まぁ、それに関してはゲーム内での自分の立ち回りとかが、現実にもフィードバックしたと言えばフィードバックしたのかなくらいです」

 侍のゲームをしたら刀を持ってみたくなって傘を腰に構えたり、潜入するゲームをしたら段ボールが被りたくなったり、壁際に張り付いて様子を窺ったり……ゲーム内のキャラの行動を真似したくなるくらいの影響をフィードバックと言えばフィードバックかなと言えるレベルだろう


「その程度なら問題無いか」

「正直これで何か問題があったら今までのゲーム全部が問題あると思います」

「オッケー、それだけ太鼓判を押してくれるなら今後も問題無さそうだな。最後にもう一回球をキャッチしてみてくれ。それで今度こそ本当に検査は全部終了だ」

「分かりました」

 東郷さんが何かを空中に浮かぶキーボードで書き込み、球が僕に向かって発射される


「ふふっ、はい。確かに」

「さて、今回はなんて書かれていた?」

 僕の表情を見てか、東郷さんも僕がなんて書かれていたのか読めたと理解したみたいだ


「『検査お疲れさん』でした。東郷さんもお疲れさまでした」

 キャッチした球を東郷さんに向かって軽く投げて返す


「よし、それじゃあ今から開けるからジッとして待っててくれ」

 その声を最後に視界は暗くなり、瞬きをするとベッドの上にあるカバーが目に入った。そしてそのカバーが開き、起き上がると部屋に東郷さんが入って来るところだった


「ほい、検査お疲れさん。家まではタクシーで送ってやるから。金もこっち持ちだから安心して乗って帰ると良い」

 わざわざ検査してもらってそこまでしてくれるとは……バスで最寄り駅まで乗って歩いて帰ろうとしていたからタクシーで家まで、しかも料金が東郷さん持ちはありがたい事この上無かった


「ありがとうございます!」

「良いって良いって、これは個人的なお礼だからな」

「お礼?」

 なんか東郷さんにお礼されるような事したっけ?


「一応プレイヤー「ハチ」はある意味アルターを象徴するキャラの1人になってきていると言っても過言では無い。開発の連中で「ハチ」が持ってるスキルや魔法を弱くした方が良いんじゃないかという意見もあるが、「ハチ」のファンが居る事も事実だ。だいたい、弱くした方が良いって言ってる奴らはイベント調整とかをしてる奴らなんだけどな?「ハチ」基準で色々考えると他の人の難易度が調整難しいからどうするか頭を悩ませてるくらいで、大半は時間を掛けて入手した物、デメリットを受け入れて使うとか創意工夫があるって所で気に入ってる奴も結構多いからな」

 まさかの裏事情を聞かせてもらえた。もしかして今回のイベントで運営側をやらせてもらえたのってそのイベント調整班の人達がこっちに引き込んだら調整楽なんじゃね?みたいなノリでやったんだろうか……


「開発の中でも今後やっていけるか分からなくて思い悩んでいた奴とか居たんだが「ハチ」のプレイ映像とか戦闘シーンを見ていたら何か弾けたらしくて退職届を自分で破り捨てて、仕事が上手くいった奴もいたし、落ち込んでいる時に見て復活する奴もいるし、運営のメンタルヘルスにも一役買ってくれているからな。まぁ多少はメンタルブレイクしている奴も居るが……なんにせよただのお礼だよ」

 それ喜んで良いのかなぁ……



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― 新着の感想 ―
[一言] 素直に「楽しい」を全面に出している人を見るとこっちも楽しくなるし、元気になる。 いい起爆剤にもなる破壊者w 破壊神になる日はいつかな〜。
[一言] 劇薬だって良くも悪くも薬ですよって事でw ハチ君は用法容量を守って正しく視聴しましょう。
[一言] 上に合わせるとツラくて、下に合わせるとヌルいのはアプデ入るゲームの宿命だよな。
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