困った時の
「えっとえっと……その目はなんだい?」
「いやぁ、尊敬したのは間違いだったかなぁと」
「うえぇ!?」
尊敬するのは間違いだったかなぁと思ったけど、隠居生活って事ならそのくらいの距離感が良いのかなぁ?本当にピンチになった時だけ手助けするくらいの距離感が隠居生活をする過去の英雄という存在として良いのかも……
「まぁ自分で言っておいてアレですけど、別に今更だったかなと……」
「ねぇねぇ?ハチ君?たまに凄い私の事バカにしている気がするけど、これでも一応は世界救った英雄だからね?」
「基本的に料理を作った時にふらっとやって来て食べていく、呼んでも無いのにお客さんを連れて来る……英雄らしい所を見た事が無いんですよねぇ?」
「うぐっ……」
「あっ、勿論皆さんが来た事が迷惑だとは思っていませんよ?ただ来るのなら事前連絡があると何かしら準備しようかなぁと思えるので、お出迎えがちょっと豪華になるかも程度ですけど……」
事前に連絡があれば、目の前で料理して待ってもらう時間も無く、すぐに料理を食べたり出来るだろうけどいきなりの訪問だとやっぱり人数の関係でちょっと待ってもらう場合もある。まぁ、ここに来る人達が事前連絡をする事は無いのだろうけど……
「まぁ、元英雄だろうが、神様だろうが、吸血鬼のお偉いさんだとしても皆、この城に来てくれたお客さんなんで、良い意味でも悪い意味でも特別扱いはしないって思ってもらえたら」
「「おぉー!」」
メモしないでー!これ何か言ったらメモ取られるとしたらマズいよ?なんか変な事口走った時にメモに書かれて、それ帰ったあとで実践しようなんてなったら、あの吸血鬼のお爺さんに怒られるかもしれない
「そっかそっか!それならまぁさっきの発言は許そう!師匠は寛大だからね!」
「誰にも特別扱いしない……やはりそういう所が良いのかな?」
それはどうだろう?ちょっと違うかな?
「うーん……地上では国同士の力関係とか集団とか色々あるかもですが、ここでは同じ空島に居る仲間として誰々が偉い、誰々は偉くないとかは正直どうでも良いかなと。ここでは可能な限り所属に縛られないで、個々が責任を持って自由な場所にしたいなと」
自由と無法とは違う。責任が持てない行動はするべきでは無いし、自分には〇〇という後ろ盾があるから……みたいな事で横暴な事もして欲しくない
「聞けば聞く程理想郷だ」
「まぁ陸路では絶対に辿り着けない遮断された場所ですから、独自のルールがあるのも分かってもらえると幸いです」
一応リリウムさんは実際に国を動かしている人(吸血鬼)だ。ここの特殊な状況を地上で再現出来るとは全く思っていないだろう。それが普通だ。遮断された空間でなければユートピアもディストピアも作る事は不可能だ
「ここまでの夢の島とはならずとも、私達の国がより良くなりそうなヒントは確かに沢山あるな。エリシア、フォビオ。ハチ君はもうお休みらしいし、今日はもう帰るとしよう」
「「はーい」」
エリシアちゃんとフォビオ君と手を繋ぎ、城から帰るリリウムさん。さっき僕が寝ると言ったから帰ってくれるみたいだ
「それじゃそれじゃ、私も帰るよ。おやすみハチ君」
「また今度~」
4人が1か所に集まってこっちに手を振るので僕も振り返したらワープして行った。これでとりあえずは誰にも見られずに寝床に行けるな
「お休みなさい」
島の心臓部に到達し、簡易のベッドで横になる。凄い今更だけど玉座の間、島の心臓部、展開式屋上展望台とラスボスごっこが出来る場所が3か所もあるな?まぁごっこ遊びで心臓部には連れてこないけどさ?
「さて、どうするかなぁ」
横になりながらイベントまでの残り数日をどうするか考えてたが、既に行った場所をまた回る方が良いか、先に進んだ方が良いか……明日また考えるか!
「どうしようかなぁ?」
翌日になったけど、特にどうしようとか思い浮かばなかった。でも一度行きたい場所は有ったのでそこに行く事にした
「どうもー」
「いらっしゃいませ、ハチ様。今日は何をお試しに?」
「ちょっと魅了が使えるようになったからそれで気になった事があってね」
困った時のプラクティス。オーブさんの所にやって来た。魅了の範囲とか効果は分かった。から次は同時に効く数が知りたかった。こういう場合はここが一番だろう
「なるほど、ではマネキンの数を増やしましょう」
白い空間で床からニョキニョキと何体も現れるマネキンさん。一応全て同一では無く、手に持っている武器が違ったり、体型が違ったり、性別が違っているので本当に対多数の練習になりそうだ
「正面からの殺到する、周囲を囲まれる、挟み撃ちとどのようなシチュエーションにいたしましょう?」
「その3つのシチュエーションなら一番分かりやすそうな周囲を囲まれるが良いかな」
魅了の効果範囲をイメージした場合、自分の正面方向に扇状か自分を中心に円形がやりやすかった。だからここは自分がより不利な周囲を囲まれた状態での魅了の使用感を試してみるべきだろう