ティーチャーリリウム
「魅了について?ハチ君には効かないだろう?」
「掛けられる側じゃなくて、魅了を掛ける側がどうやってかけるのかなぁって。無差別に魅了を掛けるんですか?」
この範囲に入った奴は全員強制的に魅了を掛ける。しか出来ないならかなり使いにくい。それだと味方と協力はまず出来ない
「そうだな……魅了を掛けたい対象に意識を集中する方法と、周囲の全てに掛ける方法がある」
お、やっぱり特定の相手だけにやるとかあるんだ
「じゃあその掛けたい相手を意識する……見るとかでも良いんですかね?」
「あぁ、相手を見てあの人に魅了を掛けると意識すると良いかもしれない」
なるほど、一度使ってみるか
「そうなんですねぇ。【ヴァルゴ】」
吸血鬼3人の前で【ヴァルゴ】を発動した。そういえば吸血鬼に魅了って効くのかな?とりあえず3人を見て魅了をやってみるか
「「「っ!」」」
「ん?」
3人とも顔が少し赤らんでいる。もしかして効いたのかな?
「皆でちょっと城内を歩きたいなーって」
「「「よろこんで!」」」
両手と背中を掴まれてるし、このまま歩くのか?めちゃくちゃ歩きにくいんだけど……
「あのグラスを皆1つずつ取って来てくれない?」
「「「はい!」」」
「魅了凄いなぁ……」
これは所謂姫プレイみたいな物も出来るのでは?やるつもりは無いけどさ?
「私を捕まえて~」
「「「……」」」
「やっば!」
グラスを取りに行かせたけどそれを取る前にくるりと踵を返し、こっちに向かって3人ともダッシュで走って来る。あれはガチで捕まえる走りだ……【ヴァルゴ】の効果時間が切れるまで逃げなきゃ
「あれ?」
「何して……」
「まさか……ハチ君、今魅了を使ったのかい!?」
「はぁ…はぁ…多分使いました」
3人の吸血鬼から全力で逃げまわり、何とか【ヴァルゴ】の効果時間が終わるまで逃げのびた。途中で新しい指示で上書きすれば良かったんだろうけど、逃げる事が上手くなれば追う時にも役に立つだろうと思い、3対1で壁とか天井とかを走り回りながら逃げていた
「これほどの魅了を喰らったのは初めてだ……」
「なんか私達の魅了と違う?」
「魅了ってこんな使い方が?」
魅了を喰らった3人はエリシアちゃんとフォビオ君の勝手に発動していた魅了との違いについて会話していた
「今の魅了は相手を選んで全力でぶつけていた様な物だ。暴走で周りの人間相手に不特定多数に掛けるのとは訳が違う」
「でも、私達に魅了って効かないハズじゃ?」
「何で魅了が?」
「吸血鬼同士での魅了が効かないと言う事さ。人間からの魅了がとても特殊な事くらいは分かるだろう」
「「あー……」」
吸血鬼に魅了が効かないのはあくまで、魅了を掛ける相手が吸血鬼だったから。人間からの魅了は耐性が無いとか性質がちょっと違うとかそういう事なんだろうか?
「まぁ、ハチ君には魅了の使い方についてしっかり教えた方が良さそうだな」
「えっ、いやぁ……これからちょっとよる所が……」
「そこまで急ぐ用事では無いんだろう?それに魅了は使い方を誤ると大変な事になるからその辺をしっかり教えよう。2人とも」
「「はい!」」
「ん?」
何故に両手を掴まれてるの?しかも結構ガッチリ掴まれてるから振りほどかないと抜けられないんだけど
「私は少し準備してから行くから」
「えぇ!?」
何が起こってるんだコレ?
「あの、これはやり過ぎなんじゃ……」
「そう?私はそれでもまだ足りないと思うんだけど」
「こうでもしないと逃げられるってリリウム姉さまが言っていたので……」
なんか流れで椅子に縛り付けられて逃げられないようにされた
「それでは、お勉強を始めようか」
2人は僕を椅子に縛り付けたあと、隣に椅子を用意して座ったら奥から眼鏡をかけたリリウムさんがやって来た
「眼鏡凄い似合ってますね。で、僕はどうなるんでしょうか」
とりあえずお手柔らかにお願いしたいから初手褒めてからどうなるか聞いてみる
「ほ、褒めてもダメだぞ?これはしっかり学ばないといけない事だからな!」
どうやら褒めても特に何も変わらないみたいだ。せめて拘束を解除して欲しいけど、そのまま魅了に関する授業が始まった
「という訳で全力の魅了は可能な限り使わない様にしましょう」
軽い魅了であれば、話を聞いて欲しい時に注目を集めるなど出来るので、人を纏めるという点では使用しても良いが、全力の魅了は確かに周りの者を意のままに操る力を持っているけど、その力に慣れてしまうと他の人を傷付けるし、心は他者を慮れない醜い化け物と化す。それに、仮にその魅了が効かない相手が現れた場合は思い通りにならないといずれは身を滅ぼす等々、魅了に関していくつか怖い話とかを聞かせてもらった。例をあげると魅了は相手の意志を上から塗り潰す物だからそんな物で得た愛は必ず悲しい結末が待っている。恋人を魅了で奪われた復讐で殺されてしまう。自分の気持ちに制御が効かなくなって破滅する等々……碌な目に遭わないのが魅了の力らしい。だから魅了の力は全力では使用しない様にとのお話だった
「「はーい」」
「なんか、自己防衛の為にも乱用はしない方が良いみたいですね」
その話を聞いたらある意味吸血鬼の魅了が最初暴走しているのはそれで嫌な目に遭っていれば、暴走を抑えた後に魅了を乱用しないように自然と成長するんじゃないかと思えてきた。勿論反動で乱用するのも一定数居るかも知れないけど、あの誰彼構わずジリジリ寄ってくる言いようのない不快感も自身を守る為の洗礼と考えたら意外と腑に落ちるかも