言えない手紙
「んんんっ!」
おにぎりを食べて唸るハスバさん
「美味い!なのに全身にビリッと痛みが来る!なんだこのおにぎり!?」
ハスバさんにとっては美味しいおにぎりを食べたら全身に痛みが走るのはある意味ご褒美の様な食べ物なのでは?
「これ!このおにぎりはもう無いのかい!?」
路地で肩を掴んで興奮気味におにぎりを要求するスク水の変態。通報されても何もおかしくない
「まぁ、作ろうと思えばいくらでも?」
「な、なんだって!?」
「防衛も終わったんでそろそろ帰り……」
余計な事を言った気がするから帰ろうと思ったけど……遅かったかも
「私に毎日お味噌汁を作ってください」
「それは割と古風なプロポーズに使う言葉では?」
実際には一度も聞いた事は無いけど、しかも目的が刺激的なご飯が食べたいって理由だろうし
「……すまない、取り乱した」
「いつもの事ですから気にしてないですよ」
「ぐふぅっ!何気なくもこの鋭い言葉ァ!」
ハスバさん人生楽しんでるなぁ
「毎日は流石に余裕が無いので……でもたまーになら作っても良いかな?ハスバさんにはお世話になる事もあるし」
「ありがとう!靴でも舐めようか?」
「舐めたら二度と作りません。というか一応対等なフレンドなんですから……」
流石に絵面的にも靴を舐めるは良くない
「というかそもそもこのおにぎりはどういう仕組みなんだ?美味いのにダメージを受けるって……」
「それに関しては僕の作った装備品の影響ですね。そのお陰で料理の味は損なわずにダメージが入る仕様に出来るんで」
「なにその素晴らしい装備品」
「因みに装備すると味覚が消滅するので何食べても美味しくありません」
「なにその悲しい装備品……」
流石に痛みとかが欲しいけど味覚が無くなるのは嫌っぽいハスバさん。まぁ味覚がなければマズい料理を味わう事も出来ないだろうしなぁ。それを考えたら自分への罰(ご褒美?)が減ってしまうからそれは受け付けなかったんだろう
「あげませんよ?」
「ハチ君くらいしか使いこなせないんじゃないのかい?それ」
他の人に使わせる気はサラサラ無いからなぁ?欲しいと言われてもあげるつもりはない
「と、そろそろ行かないと他の人が泉に集まっちゃいますね」
話していたら防衛クエストが終わった事で泉で他の場所に移動する為か、人が集まってきている。そろそろ本格的に移動した方が良いかも
「おっと、そうだね。また今度簡単な物で良いから作ってくれないかい?必要なら食材も持って行くし、何かお礼の物も持って行くから」
「ハスバさんとは最初の頃に100万Gの借りとか色々ありましたから、そのくらいなら問題無いですよ。ただ、こっちも色々と立て込んだりするかもしれないので、頼まれたからすぐにとはいかないかもしれません。そもそも食べたらダメージを喰らうなんて料理を出しておいてお礼を寄越せなんて言えませんよ。そういうお礼はホフマンさんみたいに本当に美味しい料理を作る人にあげてください」
「ハチ君にファンが出来るのはそういう所だよ。そういう思いやりがあるから周りには良い人が集まって来るんだ」
普通に褒められた。なんかこそばゆいな……
「私はまだやる事が有ったのを思い出したからここで失礼するよ」
「お気をつけてー」
ハスバさんが泉とは逆方向に歩いて行ったので、見送ってから泉に向かう。夜になったら星座魔法の強化を試してみるか
「行ったか。相変わらず人を引き付ける才能があるな。でも今回ばかりは負けられないよ」
ハチが泉に向かって行った所を確認し、その背に覚悟を決めるハスバカゲロウ
「ハチ君、今回は敵になってしまうけど絶対に捕まえてみせるからね」
その手には『次回イベントでの協力要請』と書かれた手紙を握っていた
「まぁ、ハチ君なら他の人の身代わりになってでも普通に逃げきれそうだけどね……」
情報を秘匿しなければならない関係で捕縛者側がイベント前に他にも捕縛者が居るのか、居た場合誰が仲間なのか、何人居るかも分からない。捕縛者同士が分かる合図も、暗号も無いので、事前に話す事は不可能だ
「まぁ、変態だ何だと公式に認知されるとなったら今度は恐怖の変態としてイベントを大いに盛り上げようじゃないか」
自分の今までの積み重ねが運営に認められて逃げ惑う人達を追いかける権利を貰えたと思い、燃えているハスバカゲロウ
「あの装備もそろそろ出来た頃合いかな」
この前ハチ君達と見つけたお宝を売り、資金を集めて新たな装備の注文をして、素早い変態を目指す。ハチ君を捕まえる為にはただ速いだけでは足りない。だが、速度が無ければ同じ土俵にも立てない。その為にも装備更新は必要で、他にも必要な物があると考えているハスバカゲロウは店巡りをするのであった
「うーん、どれを試してみようかな?」
まだ強化していない星座魔法は【ヴァルゴ】【ジェミニ】【アクエリアス】の3つ。使っている回数的には【ヴァルゴ】か【ジェミニ】の2択だが……
「夜に星を探した時に先に見つけた方にするか」
どっちを先にしてもどうせ強化する事になるだろうし、そこは運に任せるとしよう




