島の住人
「ハチサン……オヤ、オキャクサマデスカ?イラッシャイマセ」
「「「ど、どうも……」」」
ゲヘちゃんがキッチンに顔を出しに来ていたので、初めて見た3人は驚いていたみたいだ
「おっすおっす~ゲヘちゃん」
「モルガサマモ、イラッシャイマセ」
この人、絶対僕が島に居ない間も城に入り浸ってたな?
「ゲヘちゃんどうかした?」
「イエ、ナニカ、イタイトカ、キコエテ、ソノアトニ、ナンニンカノヒトガキタミタイダッタノデ、ダイジョウブカト、オモイマシテ」
どうやら僕が宝呪料理を作っていた時の声が聞こえたのと、他に人が来た事が心配になって来てくれたみたいだ
「心配させちゃったかな。ちょっと料理で実験とかしていただけなんだ。心配させてごめんね」
「イエ、ナニゴトモナイヨウデ、ヨカッタデス」
一応心配なのかそのまま巨体を影に沈めて顔だけ出した状態で邪魔にならない様にしていた
「ハチ、露店の事で……失礼しました」
今度はジェリスさんがやって来た。露店が増えたって事は街の範囲を少し増やすって事か
「「「へ?天使?」」」
一応知らない人が居るからか、即座に余所行きモードみたいなジェリスさん。露店に関しての問題か
「露店関係で何か問題でも起きた?」
「いえ、問題という程では無いのですが、露店が全体的に良くなっているのですが……」
「え?全体的に良くなってる?」
「このように」
ジェリスさんが右手を開くとその少し上に輪が現れて外の様子が見える。確かに露店の質が良くなっている。というか露店が軒並み屋台にレベルアップしてるな?
「ハチさんが何かしたのではないんですか?」
「んー、別に何か悪い事とかしてないと思うけどなぁ……」
何かあったら基本怪しまれるから困ったものだけど、別に何かやらかしたとかはしてないハズ
「ん?ん?もしかしてあの外のお店の事?」
「それなら我々のせいかもしれない。来る途中に何か魔力を込められる看板があったからそれに魔力を込めちゃえとモルガ師匠に言われたので込めてみたが……」
今まで特に変わりなくて、僕がキッチンに居る間に変わったとするのなら、多分それしか理由が無いと思う。まさかのモルガ師匠が裏で何かしていたとは
「確かにこの屋台とか、サーディライにあった屋台とかと似ている様な……」
ジェリスさんが見せる外の景色に映っている屋台の数軒はサーディライで見た屋台に似ている気がする
「これは……異文化交流的な事なのかな?でも、これのお陰で通りで物を売ってる人達にはプラスになったと思うからリリウムさんには感謝しないとだね。ありがとうございます」
「感謝します」
「アリガトウゴザイマス」
多分リリウムさんが込めた魔力のお陰で店が露店から軒並み屋台にレベルアップ出来たんだろう。感謝だ
「あ、あぁ……それは良いんだが、それよりもハチ君?この方は天使で間違いないのか?」
「一応はもう神に仕えてないから元天使って言うのが多分正しいジェリスさん。で、さっき入ってきたのが元々は地獄に居たけど、今はここで暮らしているゲヘナ・マキアのゲヘちゃん」
「すまない、思考がちょっと追いつかなくて……」
頭を押さえるリリウムさん。だが、更に追い打ちをかけるようにもう一人……もう一柱がやってきた
「うぉ~いハチぃ?居るのは分かってるぞぉ!また何か美味そうな物を作ってるんだろう?観念して試食を……」
「残念だけど、ついさっき作ってたクッキーは皆で食べちゃったんだよねぇ」
扉を開けたのはそこそこ大きくて白い狐……
「うそーん!?」
もとい、ウカタマである
「とりあえず今からもう一回作るから少し待ってて」
「そう来なくっちゃ!」
「こ、今度はどんな……」
次はどんなのが来たのか尋ねるリリウムさん。これは僕の口から言うべきか、ウカタマの口から言わせるべきか
「ほう?私が誰かと尋ねるかっ!?ならば答えて……」
「そいつはウカタマ。平たく言えば豊作の神様だよ」
「「「へっ?神?」」」
長くなりそうだったので先に答える
「ハチぃ?ここはビシッと名乗ってカッコ良く決める所だったと思うんだけど?」
「さっき「うそーん!?」とか言って威厳も何も無いでしょ?それにすぐクッキー出来るんだから長い挨拶はしなくて良いの」
僕とウカタマとのやり取りを見ていた3人は少しあたふたしている様に見える。まぁ僕が神様と紹介しておいて、その神様が自己紹介する所を横取りしたんだから険悪な雰囲気になると思ったんだろう
「へーい、でも出来たては一番にくれ~」
「はいはい」
生地を捏ねながらすぐにまた天板に並べて焼く
「ほい」
出来たてクッキーの半分をすぐにウカタマの所まで持って行く
「あっふあっふ!うん、美味い!」
「ウカタマ様?一人で食べる焼きたてクッキーは美味しいですか?」
「うん、美味いよ~……いや、待って下さいこれには訳が……」
ウカタマの後ろにいつの間にか立っていた飯綱さんの静かなる怒りにビビるウカタマ
「飯綱さんもいらっしゃい。来ると思って飯綱さんの分も焼いてあったよ」
「ありがとうございます。本当に美味しいですね」
ウカタマだけで来るのは無いだろうと思っていたので飯綱さんの分を残しておいて正解だった
「ハ、ハチ君?この方達ともこの島で一緒に暮らしているのかい?」
「この2人は一緒に暮らしていると言うと少し語弊がありますけど、来たい時に来るモルガ師匠みたいな立場の方達ですね。他にも色々住んでますけど、皆で場所を分けて、人に会っても良いのはこの近辺に居て、会いたくないのは遠くの方に居てみたいな感じで分かれてます」
住み分けは本当に大事だと思う
「なんという規格外……」
「「共存のレベルが違う」」
この人達に幽霊シスターとか悪魔、でっかい蜘蛛に凄い力を持っている水蛇、女性型アンドロイドとか住んでますよって言ったらひっくり返りそうだな……