失言の代償
「……なんで寝室に?」
部屋にはキングサイズのベッドや立派なクローゼット、窓際にティーテーブル。他には棺桶なんかも部屋の中に置いてあった。多分というか100%ここリリウムさんの寝室だよな?
「ハチ君には私がしっかりお礼をしようかと」
「なんか怖いんでやっぱりお礼は要らないです」
寝室に連れていかれてお礼とか何されるか分かった物では無い。丁寧にお断りしよう
「ちょ!?変な事言わないでくれ!」
「なんか碌な事じゃない気もするし、お礼は良いので今日は帰ります」
「違う違う!ハチ君へのお礼はちゃんとした物を贈るつもりなんだ。ただ、私のコレクションは私の寝室にあるからハチ君には私の寝室に来てもらう必要があってね?」
なるほど、確かに自分の寝室に大事な物を仕舞っておくのは納得出来る。これは僕の勘違いだったかもしれない
「そうだったんですね。そういう事だったら僕の勘違いなので謝ります。ごめんなさい」
しっかり頭を下げてリリウムさんに謝る。完全に僕の勘違いでリリウムさんに嫌な思いをさせたのなら僕が悪い
「……い、いやいや!良いんだ。頭を上げてくれ」
何か焦っているみたいだが、まぁ良いか
「そ、それでだな?それで、ハチ君が何が良いか選んでくれないか?」
報酬アイテムを自分で選べって事なんだろう。でも何だかなぁ……
「リリウムさん、一つ質問なんですけど、小さい時に友達代とか払ったりしてません?ダンスパーティーの時もそうですけど、なんか引き留める為に物をあげてるように思えるんですけど」
「……」
これはやらかしてしまったかもしれない。普通に失礼だった
「……ハチ君にはそう見えてしまうのか?」
「……はい」
流石に気まず過ぎる……
「やっぱり良くないかな……」
「悪いとは言いませんけど、物で繋ぎとめるみたいな事はしなくても、リリウムさん自身に充分魅力がありますから、無理に物で繋ぎとめようとしなくても大丈夫だと思います。ただ単純にプレゼントをしたいからしていただけだったら、僕が勘違いして適当な事を言ってしまったので申し訳ありませんでした」
気まずい。完全に悪い事をした……フォローを入れたけど、これ、許してもらえるかな……
「うん、いや……やっぱり許せないな!」
何か考え込んで許せないとの結論。謝って許される事じゃなかったか
「さっきのハチ君の失言はハチ君の血で手を打とう!」
……失言をした代償はデカい。これは完全に言い逃れ出来ないからまた今度は許されない。報酬云々の話がこうなってしまうとは
「吸血鬼に噛まれても吸血鬼にしたり、気絶させたりしない事も出来るんですよね?」
「っ!もちろんだ!それは吸血鬼側でコントロール出来る」
「じゃあリリウムさんに失礼な物言いをした自分への罰として血を吸っても構いません。貧血で倒れない程度にしてくれると助かりますが……」
「じゃあその首!首出して!」
首を差し出せとか武将かな?勿論そういう意味合いじゃないとは分かってるけど
「先に言っておきますけど、リリウムさんを信用して血をあげます。もしこれで僕がリリウムさんに洗脳されたとかになった場合は僕の友達の何かがリリウムさんを消しに来るかもしれないとだけ覚えていてくれれば良いです。因みに死神さんとか悪魔とも知り合いなので」
何処で誰が見ているか分からないけど、リリウムさんに直接噛みつかれて血を吸われるとなった場合にリリウムさんが何らかの魔法とかで僕が離れられないみたいな事をしない様に牽制を入れておく。「誰か」では無く「何か」と言っておいた方が人ならざる者との繋がりを意識させられるだろう
「大丈夫!そんな事をしたらモルガ様にも怒られるだろうからしないよ。でも、やっとハチ君を味見出来るんだね!いただきます!」
一瞬で僕の背後に回り込み、首筋をカプリ。注射っぽい痛みと何か吸われて全身の力が少し抜ける感覚。立っていられない訳では無いけど、あの2人に吸われた時よりも早いスピードでHPの上限が減っている。やっぱり直接噛みつかれるって結構危ないんだな
「ぷはぁ、この濃厚な味わい!そしてこの香り!んー素晴らしい!」
血を吸われた時間としては10秒にも満たない時間だったと思うけど、ガッツリ血を吸われて足元がおぼつかないので最後の乾肝丸をリリウムさんに出来るだけ見せない様に食べた
「これで、さっきの失言の件は許してくれますか?」
「もちろんさ!それに、これだけ新鮮で美味な血を貰えたんだ。やっぱりハチ君には私からのプレゼントを受け取ってもらいたい。今後も友好的な関係を築きたいよ」
壁に飾ってある小さめの絵が何個か飾ってある所に向かい、何か押しているリリウムさん。すると、寝室の壁の一部が開いた。隠し扉すげぇ……
「この中の物で欲しい物があったら遠慮なく言ってくれ。2人をここまで護衛してくれたお礼はそれにするよ」
隠し部屋の中は展示室の様に様々な物が置かれていた。武器や服、宝石にアクセサリー。何かチケットの様な物もある。あと思ったのはこの隠し部屋、手前から奥に向かって床の色が違う。壁もそうだ。何か区切りが有ったように思える
「今回はかなり頑張ってもらったからね。私のコレクションを全て見せてあげよう」
どうやら手前から奥に向かってレア度も上がるみたいだな?