お出迎え
「移動手段もなんとか確保出来たっぽいし、これでかなり楽になったかも」
海を渡る手段はダイビング・デッドマン号を呼んで船で渡ろうかと思ってたタイミングでこの手紙
『本来ならセレモニーの招待状として出すべきだが、今までのハチさんの傾向的に、セレモニーに参加するよりも飛行船の試運転に参加する方が好きそうだと思ってな?もし、乗りたいと思ってんなら言ってくれれば誰よりも先に乗せるぜ?』
完成セレモニーよりも試運転の方が好きそうと思われてるとは……造船所のおじさん、分かってるじゃないか!なにより乗せてもらえるのは願ってもないチャンスだ。これにエリシアちゃんとフォビオ君を乗せればパパっと海を越えられるだろう。可能な限り街の中に入らない事が魅了が勝手に出ちゃう2人を護衛する時の難易度に関わって来ると思うし、飛行船をどうにか街の外で乗れるようにお願いしてみるか。その辺のお願いも今から動かないと間に合わないだろうから行くか
「よぉし、そうと決まったら急いでアポ取ってこよう!じゃ!」
ここに居ても話は何も進まないのでフィフティシアに行って造船所のおじさん達に話を付けて、どこで乗るとか決めておこう
「行ってしまった」
「行っちゃった」
リリウムとモルガの2人は何とも言えない雰囲気のままハチに城に置いて行かれたのであった
「手紙受け取りましたよ!」
「うおっ!早速来たか!今すぐ乗るのか?」
泉でワープして造船所に真っ直ぐに向かったら完成したらしい飛行船の前で腕を組んで見ているおじさん達を見つけた。やっとこだわりの船を造れたんだな……にしても腕組んで並んでるの凄い絵になってたなぁ
「いえ、知らせてくれたのですぐに来たんですけど、ちょっと相談したい事がありましてね」
「どんな相談だ?」
「実は……」
2人程海の向こうまで運びたい事、その2人にちょっとした問題があるから可能な限り乗る人数を少なくしたい事、街に入りたくないので街の外で途中で拾ってもらう事は可能なのかなど聞いてみた
「なるほどな、要するにその2人を運ぶためにコイツを使いたいと、そういう訳だな?」
「はい、海の向こうで2人のお姉さんが待っているので無事に送り届けられるのかなっていう試運転にもピッタリだと思うんで乗せてもらえたらと……」
「ハチさん」
「はい……」
どうだ?ダメか?
「そのくらい任せてくれ!街の外で乗れるようにすれば良いんだな?だったら……この辺りでどうだ?」
街とその近辺の地図を近くの丸太のテーブルの上で開き、東側に指をさすおじさん。指をさした場所は門のすぐ近くだし、これなら街の中に入らなくて済むから良いな
「そこでお願いします。2~3日以内に準備って可能ですか?」
「1日で準備出来るぜ?いやぁ、やっぱ炎龍水晶は性能が高いぜ」
「え?あの水晶、奥さんのプレゼントに使わなかったんですか!?」
それはちょっと約束と違うぞ?
「か、勘違いしないでくれ!ちゃんと嫁には炎龍水晶のブローチを贈った!だが、あんだけデカいと量があり過ぎて、他にも使えるから……な?あの1個を全部使ったら嫁の全身が炎龍水晶まみれになっちまうし、そんな事したら嫁の価値観がぶっ壊れるからよ……」
確かに急にお金持ちになったら金銭感覚とか狂ってしまうもんな。価値観を壊さない程度でのプレゼントを考えたらブローチくらいにして残りは飛行船の素材にしたと……納得出来る様な出来ない様な
「まぁ、ちゃんと奥さんにプレゼントをしているのなら良いか……残りを飛行船のパーツにして性能が上がっているって事なら速度の方は?」
「勿論上がってるぜ?お陰様で俺達の想像以上の性能と言っても過言じゃない」
どのくらい速いんだろう……なんかちょっと怖くなってきた
「では3日後にさっきの場所で飛行船の準備をお願いします。試運転で海の向こう、フォーシアス……サーディライまで行けますかね?」
「うーん……悪いが今回はフォーシアスまでにしてもらえないか?あくまで試運転だから海を越える程度で勘弁して欲しい」
まぁそうか。流石にフォーシアスより先は無理か……じゃあフォーシアスからサーディライは徒歩で戻って行けば良いんだな?もうナチュラルに歩いて帰る予定だけど、こういう護衛クエスト系で泉でワープ出来るなんて最初から考えていない。そんな楽が出来たらリリウムさんが僕に護衛なんて頼まないだろう
「分かりました。では3日後にフォーシアスまでお願いします」
「あぁ!任された!」
これで明日ログインしたら丁度良い感じに飛行船の準備と2人の出迎えが出来るかな。あとは寝る前に色々と護衛の為の準備に奔走しないといけないなぁ……
「よーし。準備はしっかりしたし、頑張って行こう!」
ログインしてフィフティシアの街に降り立つ。色々と準備してきたし、後は件の2人を保護しないといけないけど……多分北側から来るよね?
「よし、いつでも来い」
一応リリウムさんから派遣された護衛って事と、護衛が来るまでそのおじいさんが見ているらしいから最初から執事服で行こう。護衛が来るまでとは言ってたけど、一応リリウムさんのおじいさんがいつまで見ているか分からないし、礼儀正しくしておかないとマズいよな?
「……ろそろ着くよ」
「…だね、やっと」
遠くから歩いてくるフードを被ったローブ姿の2人組。まだ遠いけど、多分僕とそんなに身長が変わらないんじゃないかな?ならいよいよ来たか
「失礼ですがエリシア様とフォビオ様でしょうか?」
「「うわぁっ!?」」
ちょっと驚かそうと思ってギリーマントを被りながら少し迂回をして2人の後ろから声を掛けたら凄い驚かれた。その時に2人のフードの下に白銀の髪と赤い瞳、驚いた時に牙も見えた。これはもう確定だな