予行練習
「で、帰るのか?」
「作りたい物は作れたので……あ、何か手伝って欲しい事とかあります?僕も手伝ってもらったのでセーレさんが何か手伝って欲しい事があるのなら手伝いますよ」
ここまでしてもらってはい、さようならは流石に手伝ってくれたセーレさんに失礼だ。何か手伝ってお返ししよう
「そうだな……確か、逃げる人間を捕まえるんだったか?なら逃げ出した亡者を捕まえるとかどうだ?練習としては丁度良いと思うが」
「それ、やらせてください」
逃げる相手を捕まえるという経験はイベントに活かせるだろう
「そんじゃあ、あの岩を登って逃げてる奴を捕まえてくれ」
パチンッとセーレさんが指パッチンをすると、エレベーターの近くにあった宙に浮かぶ岩の所にワープさせられた。岩を登っている亡者を4体、目視で確認出来るからアイツらを捕縛すればいいんだな
「あの4体を捕縛で良いんですよね」
「あぁ、アイツらは……初犯だな。とっ捕まえたら落として良い。そうしたら落ちてきた奴はこっちで何とかする。一応逃げ出す奴を見つけたら止めるようにはしてるんだが……まぁ面倒だし、上でどうせ死神様が落とすしな」
上は死神のパトロール、下は悪魔のきまぐれで亡者を捕まえる感じになってるのね。これは死神も大変な訳だ……
「それじゃあ早速使ってみるか」
呪博徒の耳飾りを外し、偽食の宝呪を装備……これどうやって装備するんだろ?
「ん、この茨……あ、動かせるんだ。じゃあこれで固定…出来た!」
宝呪に付いていた茨は動かせるみたいなので、茨をベルトの内側に通して宝呪に茨を喰い込ませると良い感じに装備出来た。意外とこの茨は肌には食い込んだりしないみたいなので見た目的にはベルトの追加アイテムみたいになった
「2分…いや多めに見積もって3分かな」
ベルトのパワーを使うとして一気に改造ジャーキーを3つ食べてみる。普通に味を感じたら間違いなく吐いてもおかしくないが……
「おっ、味を感じない」
食感はあるけど完全に味は感じないのでこれなら違法改造のジャーキーの連続投与とか、改良して一気に食べられる量を増やす改良とか出来るかもしれない。普通に食べられる物を作るという今までの僕の中での「料理」という枠組みから逸脱したそれの性能のみに焦点を当てた「料理のような物」の製作も視野に入れる事が出来る。これは完全に今までの僕には無かった考えだな
「よし、それじゃあ捕まえちゃうぞぉ?」
ベルトのバッタパワーを使い、宙に浮く岩を足場に跳んで亡者を追いかける
「ナ、ナンダァ!?」
「ヒトカ?」
「ハヤクノボレェ!」
「ドケドケ!」
すっごい逃げてるけどこっちは岩を1つ2つ飛ばして追えるから追いかける立場の練習もするか
「キャハハハハ!どうしたの?そんなんじゃすぐに追いつかれちゃうよォ?もっと必死で逃げなきゃあダメじゃないか……ねぇ!?」
両手両足で岩に張り付いては跳び、張り付いては跳びを繰り返し、高笑いしながら亡者を追いかける。相手に恐怖心を与える為には人間らしさをかなぐり捨てなきゃダメだろう
「「「「ヒエッ…」」」」
「逃げないのぉ?捕まったらどうなるか分かってるのかなぁ?分かってないのかなぁ!」
なんだろう、ヤンデレ?ちょっと違うか
「ドケッ!」
「ジャマダッ!」
「ニゲナキャ!」
「ツカマルワケニハッ!」
おぉ、やっと必死になってくれたか。とりあえず捕獲は魔糸で後ろ手に両手を縛って落とせば良いか
「キャハハハ!一人目、つーかまえたぁ」
「ギャアアアァァ!!」
ジャンプして最初の亡者に追いついたので、亡者の頭掴んで岩に押し当てる。魔糸を出して両手を縛り、下に蹴り落とす
「「「ハヤクアガレェ!」」」
他の亡者を蹴り落としてでも登ろうとする亡者達を追いかける。蹴落としあいをしてるから全体的に遅くなって追いかけるのも楽だなぁ
「二人目」
「ヒアァァァ!」
「三人目」
「イワァァァ!」
魔糸拘束からの蹴り落としで地獄に送り帰す作業をして最後の1人になった。蹴落としあいが無くなったから最後の1人の逃げる速度が上がった。結構良い速度で上がるなぁ?だけど3分を越えるのはあの亡者に負けた感が出るので冥界までわざと捕まえないで追いかけるのは止めておこう。だって冥界まで行ったら死神さん達に迷惑になるしね
「君で、最後だよ?」
「イ、イヤダァ!ハナセェ!」
ガシッと亡者の左足を掴み、その場で停止する。これで僕を蹴落とそうとするなら触手を出すまでだ
「危ないじゃないか?なんだい?股を引き裂いて欲しいのかな」
「アガガガガ」
ニコニコ笑顔で触手を出してもう片方の足に巻き付かせる。そして岩にしがみついていた両手を触手の先端で叩き、手を離させて逆さまになった亡者の股を強制的に開脚させる。ストレッチが足りてない……じゃなくてせっかくだし、イベントでもやりたいけど場所があるか分からないから今ちょっとやっちゃおう
「ふぅ、掴んでるのは触手だ。利き腕じゃないんだぜ?」
でも多分僕の中で一番力がある「手」だと思います
「タ、タスケテ……」
「お前を助けてやろうか?」
「ホ、ホントカ?」
うーん、やっぱりこれはやる前に一旦約束しないとダメだな。唐突過ぎるかも
「今のは嘘だ」
「ウワァァァァ」
でもやりたい事出来てスッキリ!