分かれ道の選択
「迷路みたいですね?」
「これは……多分こっちかな?」
「ん?ハチ君、何か経路を示すヒントでもあるのかい」
「はんぺん、どうした?何か見つけたのか」
「わん(匂いますね)」
地下の探索をする時にダイコーンさんが召喚獣であるはんぺん君を呼び出して正解の道を探そうとしてた。首からケミカルライトをぶら下げて皆が歩きやすいように歩いたり、ちょっと可愛い……じゃなくて僕とはんぺん君が同じ方向を指し示した
「この方向に魔力反応があると言いますか、地面に魔力の道みたいなのがあるんですよね。だからこれを辿って行けば良いのかなと」
迷路っぽいけど道の端に細い魔力のガイドラインみたいな物が走ってる。分かれ道になっても片方にしか魔力のラインが走ってないし、ここを辿って行けば何かしらの所には行けるだろう
「警察犬か?」
「犬に負けないハチ君……」
「匂いで分かるんですか!?」
「そんな事が!?」
「あの、もの凄い勘違いしてると思いますが、別に匂いで道を見つけてる訳じゃないですからね?」
はんぺん君と別の方法で僕は追っていると思うから一緒にはしないで欲しい
「また分かれ道か。はんぺん君、せーの……こっち!」
「わん(こっち)」
「オッケー、じゃあこのまま進んで見よう」
「完全にはんぺん君と意見が一致している……凄い」
はんぺん君と意見が分かれるまではこのまま進むのが良いだろう。意見が分かれるような事になったら要注意だ
「せーの、こっち!」
「わん(こっち)」
「おっと、遂に分かれたか……ん?壁に何か書いてる」
今まではずっとはんぺん君と意見が合っていたけどここで僕は魔力の道が繋がっている左を選び、はんぺん君が右を選んだ。ここが何らかの分かれ道か
「ひふたみだりかぎりだらはしは……ふーむ、なんだこれ?」
一見良く分からない文章だけどこれは分かれ道の先に何が有るのかを指し示しているんだろう。どちらかが正解でどちらかが不正解……今までの流れだとこの文以外の所にこれを解く為の鍵が隠されているはずだ
「今回は文字の並び替えか?」
「14文字……いや、でも濁音が入ってるから違うか……」
「今回はひらがなですか」
「この下のマークって何でしょう?」
トーマ君が壁に書かれた文章の下に描かれた雑な丸に囲まれたひし形の図形を指差した。これがヒントになりそうだな
「これは……なんでひし形なんだ?なんで、こんな雑な丸で囲ってあるんだ?この文章との関係性はなんだ?」
何かの家紋とかならこのひし形を囲う丸はもっとちゃんと囲うはずだ。このマークは家紋では無い可能性が高いだろう
「そういやぁ、はんぺんが右を選んで、ハチが左を選んだ理由は何だ?」
そうか、確かに選んだ理由は言ってなかったな
「僕はここまで続いてきた魔力の道が左に曲がったので左だと思ったんですが、はんぺん君はこの魔力の道を追っていた訳では無かったみたいですね。だからこの違いは何だったのかなと……」
はんぺん君は別の何かを感じ取って右を選択したんだろう。僕の【察気術】だって万能では無い。イベントの時にやったみたいなポン君による知覚能力の上昇とかもしていないので、分かれた道の先がどうなっているのかは分からないからどっちに行ってみるべきか迷っているんだ
「わんわん(多分こっち)」
はんぺん君も多分こっちという曖昧な答え方だし、正解がどっちか分からないな……
「こういう時はやっぱり運に任せて棒で……あっ!」
「どうしたんだいハチ君?」
「急に大声出してどうした!」
「もしかして何か掴んだんですか?」
「何か思い浮かんだんです?」
棒で思い出した。そういえばこういう暗号法があったはずだ
「えーと、つまり……」
こういう時にも役に立つ【魔糸生成】を使い、棒状の糸と帯状の糸を出して帯状の糸の方に壁に書かれていた文字を書く
「これを棒に巻き付ければ……」
棒に巻きつける事で読めるようになるスキュタレー暗号。確か古代のギリシャとかその辺で使われてたと本で読んだ気がする
「あれは棒がひし形の形で紙を巻き付けろって意味のマークだったら……ひだりは ふりだし たからは みぎ おぉ!読める!読めるぞぉ!」
左は振り出し、宝は右。はい、僕が間違ってました。はんぺん君が正しかったです
「左は振り出し……最初に戻るって事はハチ君が辿っていた魔力の道と言う物はループを組む物だったんじゃないか?」
「なるほど、それは確かにありえそうですね」
魔力の道を辿って行ってしまうとループする……これは1人だったら騙されてたかも
「ハチが騙されるとはかなり珍しいんじゃねぇか?」
「そうですね。ハチさんがミスらしい選択をするなんて」
「僕は別に完璧超人じゃありませんよ?普通に間違える事もあれば失敗もします。今回ははんぺん君に助けられました。よーしよしよしよし」
「わふぅ(気持ちいい)」
最初からはんぺん君は右を選んでいたので素直に従っていれば良かったけど、一度否定してしまったので、はんぺん君を撫でて機嫌を取ろう
「いよいよお宝みたいだな」
「遂にか」
「遂にですね」
「まだ何かあるかもしれません」
「出来れば最後にして欲しいなぁ……」
そんな淡い期待を胸に宝の待つ方に進んで行ったが……
「「「「「知ってた」」」」」
はい、宝物庫らしい所の前に強固な扉とキーボード、ウィンドウが用意されていた