執事、城へ
「じゃあ今度行ってみます。そろそろ僕は寝るので」
「そっかそっか。おやすみ~」
「お疲れさまでした」
『おつかれさまでした』
皆に挨拶をして落ちる。何気におかわり強制終了な事に皆気が付いているんだろうか?
「さて、とりあえず来てみたけども……」
一応隠れながらサーディライの城までやって来た。いきなり捕縛とかされなきゃ良いんだけど……一応恰好も執事服で来たから最悪別の服に着替えて逃げ出す事も可能だろう
「すみません、御用の無い方は……あら貴方は」
「わたくしをお探しとの事でしたので、参上致しました」
名乗りはしないけどとりあえず挨拶してみる。これで通してくれるかな?
「どうぞ、中へお進みください」
「分かりました」
門の前から退いてくれたので、城の中に入っていく。執事単体で城に入っていくってなんか妙な感じ
「さて、どう来る……」
中に入ってみたけど、前回と城の中が変わっている気がする。今回は外見と中のサイズ感が合っているからやっぱりあの夜会の時は何か魔法で拡張してたのかな?
「んえー……お客さん?」
「あらら……」
寝起きなのか目を擦っているリリウムさん。だけどその恰好は髪は寝ぐせでボッサボサでパジャマみたいな服を着てるけど結構はだけてる。これは良くないな……何処かに布とかあるかな?
「おっ、これちょっとお借りします」
見回してみると割と近場にあったテーブルにグラスとボトルとフルーツが置いてあり、その近くにイーゼルだっけ?絵を描く為の台と書いてる途中の絵もあった。そこでテーブルに敷いてあったテーブルクロスを勢いよくバッと引き抜いたらリリウムさんの元に走り寄り、テーブルクロスで体を隠す。普通に考えたらテーブルクロスの大きさが全然足りる気がしないけど古代ローマの人が着ていたトーガみたいな感じになっていた。これも執事補助のパワーなのかな?
「勝手に失礼しました。何か御用でしょうか?」
寝起きの女性をテーブルクロスで巻いてから何か御用も何もないと思うけども、呼び寄せた理由を聞きたい
「あぇ……誰ぇ?」
ダメだこりゃ。全然目が覚めてない
「しっかり目を覚ますまで待ってますので、一度着替えてきた方がよろしいですよ」
リリウムさんをUターンさせて出てきた扉の方に帰す。あの夜会の時と全然違うな……
「っ!……や、やあやあ!よく来てきゅれたね!」
リリウムさんをUターンさせた後、描いている途中の絵を眺めたりしながら時間を潰していたら扉が勢いよく開いた。しっかり着替えを済ませてちゃんと目が覚めたみたいなリリウムさんだったけど、流石に状況を理解したのか、大分焦っているみたいで噛んでいた
「それで、どのような用事でわたくしめを探していたのでしょうか?」
一応精神的アドバンテージはこっちの方が上だな。あの時は厄介な人だと思ってたけど、朝が弱いならこっちが付け入る隙はある。これなら何か要求されても躱せそうだな
「え、それは……き、君と一度しっかり話をしてみたくてね!」
「何について話をすれば良いのでしょうか」
「うぐっ……そ、そうだ!せっかくだから何か食べないかい?」
「せっかくですが遠慮しておきます。然程空腹ではありませんので」
失礼承知でご飯は拒否する。ご飯をご馳走してどうにかイーブンに持ち込もうとしてたのかな?詳細は分からないけど
「そ、そうか……じゃあえっと、そう!名前!名前を教えてくれないか!」
「何故でしょう?あの時の夜会の様に執事君で良いのではありませんか?」
「なんという手強さ……」
なんか若干虐めてるようになってるかな?もう少し手心を加えるべきか
「要件が特に無いのであればわたくしは失礼させてもらいますが」
「頼む!もう少し私と会話をしてくれないか?君の事が心配なんだ」
「心配?もう少し分かりやすく説明していただけますか?」
僕が心配で会話したいってどういう事?
「私が心配しているのは……執事君、君はもしかして異性を異性として見れないんじゃないか?自分で言うのもなんだが、私自身魅力的な体をしているとは思うが、君は一切厭らしい視線を向けてこない。そういう所がどうしても気になってしまってね」
なんか僕が知らない内にとんでもない勘違いが起こってない?
「どうしてそういう結論に辿り着いたのかは分かりませんが、別に異性は異性として見れますよ。ただ、そういうのは失礼になるので相手の目を見て会話しています」
勿論気にならない訳ではない。ただ、ここで視線を落としたら間違いなく精神的アドバンテージが無くなると思うから相手の目を見たまま会話している。リリウムさんは今寝起きで余裕がないとはいえ、付け入る隙を与えたらいつこのパワーバランスが崩れるか分からない。絶対に相手の目から逸らさない様に気を付けなきゃ……
「なるほど、強靭な理性を持っているからこそ出来るか……それを出来る男は中々居ないよ。やっぱり君は他の男とはかなり違うようだ」
「誤解は解けたでしょうか?リリウム様が心配されているような事はありませんので、これで話は終わりですね。これにて失礼させていただきます」
「まぁ待ってくれ。もう少しお話しようじゃないか」
リリウムさんが指パッチンしたら城の出入り口の扉が勝手に閉まった。やっぱり面倒な事になったか……