師匠の後押し
『ハチ様、おいしいです』
「おいしい?良かった。おかわり欲しかったら幾らでも作っちゃうよ?」
城に戻ってパンケーキを白武と黒武に作っているけど食材はたんまり仕入れてきてるから、100人前くらい作っちゃうぞ?
「待て待てー!この私達を差し置いて甘い物を食べるとは許さーん!」
「のわっ!?急に出てきた!?」
「甘い物の察知は本当に早いですね……すみませんハチさん」
扉をバーンッと開けて乗り込んできたモルガ師匠と飯綱さん。すみませんと言いつつスッと席に着いているあたり飯綱さんも抜け目ない
「まぁ来ると思ってましたよ。はい、どうぞ」
パンケーキを2人分出す。どうせ来ると思ってたから用意はしておいた
「うんうん、美味しそう!」
「いただきます」
どうしよう。あのキラーワードを言うべきかな?
「とりあえず提供はしますけど、食べ過ぎたら……」
「「……」」
キラーワードを言う前に2人の手が止まった。流石に乙女の2人にこれに続く言葉は言わなくても分かる一言だったみたいだ
「ハチ君ハチ君、その先の言葉は言っちゃいけないよ?」
「最近、その事でウカタマ様を罰する事になりました」
なんだ?ウカタマもしかして飯綱さんに例の言葉を言っちゃったのか?それはダメだよなぁ……
「とりあえずこれ以上は何も言いませんが、どのくらい食べたいですか?」
「「……」」
沈黙するけどその両手には既にフォークとナイフが握られている。一応牽制はしておいたけど……
「ハチさん」
「はい」
「今は嫌な事は忘れましょう」
飯綱さんの有無を言わせない一言。これは逆らわない方が良いな
「そーだそーだ!あとで消費すれば良いんだー!」
「分かりました」
まぁ1日くらいは良いか。2人なら体型キープするくらいは出来るだろう
「今日は…忘れましょうか。あ、ポン君ありがとうね。ポン君も食べる?」
「大丈夫」
「そっか、今日はありがとう。お疲れ様」
「おつかれさまー」
パンドーラを閉じてポン君を帰還させる。用事があったらポン君の本体がここまで来てくれるかな
「とりあえずこっちに着替えておくか」
ポン君が帰還した事で恰好も白ローブに戻ってしまったので、雰囲気を重視する為に執事服に着替える。まぁしなくても良いんだけどね?
「コホン、紅茶は要りますか?」
「おっ!要る要る~!」
「いただきます」
紅茶を用意するかと聞いてみたらすぐにいただきますと返事が来る
「それじゃあ準備しますね」
お湯を沸騰させている間にティーポットも湯通しして温めておく。あれ?なんか勝手に……あぁ、これが執事らしく動けるって奴なのか?
「よし」
ティーポットにティースプーンで掬った茶葉を入れて、お湯を入れる。何となく4杯分くらい入ってるのかな?ほとんど無意識で出来てるから執事補助の能力凄いな
「少々お待ちください」
蒸らしの工程約3分。これを待っている間にパンケーキ無くなりそうだな……一応インベントリに作り置きしてる物があるから要求されたらそれを出すか
「ハチ君ハチ君、おかわり」
「私も良いですか?」
『おかわり、ください』
「はい、どうぞ」
ほとんどノータイムで4人の前にパンケーキを準備する。我ながら手際も凄い早いなぁ?パンケーキを出し終わったら即座に紅茶の方に戻ってるし
「これで、準備完了と」
茶漉しも湯通ししてからティーポットの紅茶をカップに入れていく。最後の1滴までうま味があるからカップに注いでいくと丁度4杯分用意出来た。完璧な配分だなぁ……
「お待たせしました」
「うんうん、出来る弟子を持って師匠としても鼻が高いねぇ」
「これは……とてもいい香りです」
『これも、おいしいです』
美味しい紅茶を提供出来たのでこの執事ムーブの補助機能はかなり有用だな
「そうそう、その恰好を見て思ったけど、確か夜会に来た執事を探してる偉い人が居たんだけど、その執事ってハチ君じゃない?」
「えーと、その夜会があったのってサーディライの街ですか?」
「うんうん、リリウムってのが開いた夜会なんだけどね?」
「あー、心当たりしかないですねぇ」
間違いなくそれ僕だな?というかリリウムさんまだ探してたんだ
「やっぱりやっぱり、行ってあげた方が良いよ?」
「行って拘束とかされないですかね?それがちょっと心配なんですけど……」
正直戦闘になるとかより拘束される方が辛い。自由を保障されてるのなら全然行っても良いけど、あの城に行きました捕まりましたなんて笑えないし
「うんうん、それに関しては大丈夫だと思うよ。多分話をしたいだけだと思うから」
「話をしたいだけでかなり大規模な捜索されてるみたいですけど……」
「うんうん、あの子そういう所があるからねぇ……大分気に入られてるみたいだからどうしても話がしたいんだよ。きっと」
「師匠がそこまで言うのなら一回行ってみようかな」
拘束されない……かもしれないなら行ってみても良いかな
「行っちゃえ行っちゃえ!どうせハチ君ならすぐ終わるから」
「これでもし面倒事になったら師匠にはもう料理とか作らないですけど、それでも大丈夫ですか?」
「…………大丈夫大丈夫!もしそうなったら私が一言言ってあげるよ!だからその条件は消してくれるかな!」
めっちゃ言葉に詰まってたけど、本当に大丈夫かなぁ?