ツンデレ疑惑
「無意識のうちに尻尾で立ってたのか……とりあえず一回頭もスッキリしたし、もう一回やってみよう」
坐禅で頭もスッキリしたので、もう一度あの的の破壊を試みてみよう
「すぅー…ふぅ……よし!」
最後に深呼吸をしてからもう一度的に向かって攻撃する
「おっ?射程ちょっと伸びた?」
精神統一してみたら若干射程が伸びたみたいだ。さっきギリッギリで届かなかった的に何とか届いて的の中心からちょっとズレた所に尻尾の先端が刺さった
「もしかして考えるのも必要だけど、無心になれば深淵の質が良くなる?」
動かす為にはある程度イメージは必要だけど、無心になれば深淵の性能が上がるのかな?
「あの時は深海っていう若干ストレスの掛かる場所だったけど、ここだとそこまでストレスも感じないから出来たのかな……環境に影響されちゃうのは中々厳しいな」
時間を掛けて精神統一出来れば質の良い深淵になって、射程とかパワーは強くなりそうだけどそういう時間が取れなきゃ出来ないな
「よっ!おぉ?」
もう一度的に向かって深淵尻尾を伸ばしたら黒い深淵尻尾の先端が赤く光って伸びた。お陰で的に命中して破壊する事が出来た
「おぉ!出来たぁ!」
なるほど、伸ばしきったと僕が勝手に思ってただけで、もう一段階先があったのか
「ほぉ?ではもう一度やって見せろ」
「はい!もう一回お願いします」
もう一度的を用意してもらってさっきのが出せるのかやってみる
「よっと!あれ……?」
もう一度赤く輝く攻撃を出してみたら体の力が抜ける感覚が起きて立っていられなくなった。あれ1回しかまともに使えないのか……
「流石にさっきの力は何度も使用は出来ない様だな?」
「ちょっと…頭がクラクラしますね。もう少しだけ待ってもらえますか……?」
頭がクラクラして立っているのもやっとな状態だ。でも許してくれないんだろうなぁ……
「そうか……まぁ出せただけでも今回の訓練としては充分だろう」
「え?今すぐ立てって言わないんですか?」
「ハチ君、大分毒されてるねぇ?」
「アビス様の訓練ってあっちと比べるとかなり激しいからこのくらいで弱音を吐くなって言われるのかとばっかり……」
毒されていると言われればそうかもしれないけど、ここが戦場だったらそんな甘えは許されないだろう。自分が何を何回使えるのか、使ったらどうなるのかを分かっていなければ間違いなく実際の戦闘で大変な事になるだろう
「やはり、もっとやるべきだったか?」
「いえいえいえっ!しっかり休ませていただきます!」
アビス様が休ませてくれると言うなら休ませてもらおう
「さっきも言った通り、今回の訓練である程度何か掴めたならそれで構わん。そろそろ帰るが良い」
「分かりました。でももう少しだけ休憩させてもらえると……」
「もう行け」
「へぶっ!?」
急に深淵から追い出されて気が付いたら草原のど真ん中……遠くに教会とかデカい門が見えるからここは空島だな?まさかの帰り道をショートカットさせてくれるとはアビス様めっちゃ優しい……
「もしかしてアビス様ってツンデレみたいなところが……痛った!?」
急に背後から頭を叩かれた。流石に聞かれてたか
「すみませんでした……」
「分かれば良い」
いやぁ、怒られちゃったなぁ
「もう少し体が動く様になったら……ホフマンさんに頼んでパンケーキの素材を貰いに行くか」
思った以上に体の動きが悪くなったので、動きが元に戻るまで少し草原で寝転がって休憩する事にした。でもそうか……使いやすいと思って尻尾にしてたけど、別に両手に深淵を纏ってリーチを伸ばすって使い方もアリだな……まぁ2つに分離させたら1つに纏めていた時より伸ばせる距離は短くなりそうだけどね
「よーし!復活!いやぁ、今度からあれをもうちょっとしっかり使えるように今後練習してみようか」
しっかり休憩した後、村の方の泉からホフマンさんの方に行く事にする。今は村の皆何してるかなぁ?
「おっ、おーい!ワイバーン君!」
「ギャオギャァァオ(おや?ハチさん、こんな所でどうしたん?)」
「ちょっとあの村の方まで乗せてくれない?近くまでで良いんだけど……」
「ギャァァオギャァァオ(そのくらいお安い御用や!)」
ワイバーン君に乗せてもらって村まで送ってもらう。意外と村まで距離もある所に出現したみたいだし、送ってもらえるのはありがたい
「ありがとう。助かったよ」
「ギャァァァオ(いつでも乗せるでー)」
ワイバーン君に村まで送ってもらったので、大分移動時間を短縮出来た。さて、何をやってるかなぁ
「ふぅ、良いのが出来た」
「何作ったの?」
「おっ、ハチか。今は着る物を作っていて、良いのが出来たんだよ~」
僕が村に辿り着いた時にはドナークさんが丁度服を作っていたらしく、自分の着る服を作っていたみたいだ
「せっかく出来たなら着てみたらどうです?」
「そうだな。ちょっと着てくる!」
ドナークさんが今作った服を着てくるらしいので少し待っていよう
「どうだ?似合ってるか?」
「うおっ綺麗……似合ってますね」
水色ベースの服に小さめの宝石やレース模様など、かなり凝っているデザイン。自然と口から綺麗と言葉が漏れてしまった
「そ、そうか?なんか照れるな……」
「ドナークさんの素の綺麗さを引き出してますね」
「ばかっ!そんな事言っても……何も出ないぞ?」
あんまり、言っても薄っぺらく取られてしまうかもしれないし、この辺で止めておこう
「ドナークさんの新しい服が見れただけで今、村に来た甲斐がありましたよ。これから出かける前に良い物見させてもらえました」
「あんまり変な事言うなよ?私は良いけど、他の女の子に言ってたら刺されてもおかしくないぞ?」
褒めるのそんなに良くなかったかなぁ……