VSランペイジ
「よぉ?元気してたか?」
「馴れ馴れしいな。お前の方こそ前回の様に簡単にやられるなよ?私の力を見せつける事が出来ないからな」
なるほど、そう来たか
「言うねぇ?それじゃあ負けたら土下座でもしようか?」
「ほう?それ程の自信があると言う事か。ならば私は負けたら貴様の奴隷になってやろう」
「え?それはいらない……」
負けたら土下座で終わらせるつもりだったのになんか相手が勝手に負けたら奴隷とか言い出したんだけど……
「おォォと!まさかの負けたら奴隷ィ!?これはまた別の意味でも見逃せない試合になってきましたァ!さてェ、この言葉を受けたマスクドVはァ!?」
なんか話が大きくなってしまった。これ絶対あれじゃん……
「あぁもう分かったよ!俺が負けたらお前の奴隷で良いだろう?」
「来たァァァ!負けたら奴隷のデスマッチだァァ!」
地獄みたいなデスマッチだなぁ……というか負けられない要素が増えてしまったんだが?
「それでは始めてしまいましょう!負けたら奴隷のデスマッチィ!個人的にはファイトクラブがどうこうよりもこっちの結末の方が気になるぞォ!」
この司会「お前、司会降りろ」と言われても仕方ない気がする。どっちが奴隷になるかとかよりもファイトクラブの行方の方が大事だろう……
「それでは本日のラストマッチィ!ランペイジVSマスクドV!ファァイ!!」
ゴングを鳴らし、いよいよ最後の戦いが始まる
「はぁぁ!」
ドゴォォォンと凄まじい音を立てながら大剣がリングに叩きつけられる。僕に当てるつもりではないみたいだけど……あぁ、また修復したばかりのリングが
「あなたとは素手でやり合わないとキッチリと倒したとは言えませんから」
「へぇ、武器無しでやろうって事か。良いねぇ!そういうとこ好きだぜ!」
拳のやり取りは剣での打ち合いよりも更に近い距離での戦闘。相手と触れ合った状態での戦闘は相手が動くよりも先に相手の体を通してどうやって攻撃しようとしてくるか分かったりする。勿論相手もその可能性はあるけど、どれだけ先に動きを察知して一撃を貰わない様にするか、今の僕にはそれが一番必要な能力だ
「そういう軽口は嫌いだ!」
「うおっと!」
喰らったら頭が吹っ飛びそうな左ストレートを首を傾けて躱し、その腕を右手で掴んで引き寄せる。ゼロ距離戦闘はどうかな?
「離れろ!」
「そうはいかないなぁ?」
右足の膝蹴りで僕を蹴り飛ばして距離を開けようとするので、こっちは左膝で内側からその足を押す事で逸らす。外に、内に、何とか距離を取ってパンチやキックで攻撃して来ようとするランペイジの攻撃を逸らしながらゼロ距離状態を維持して相手にストレスを与え続ける。パーソナルスペースに入られる不快感を与え続ければ絶対にいつか集中が切れるだろう。大きな一撃を与えたくてもテイクバックするスペースも与えないレベルで詰めればどうしたって攻撃はしづらくなる。そうなると動きも鈍くなってくる訳で……
「なっ」
「ほら、立てよ」
簡単に足払いで転ばせる事も出来る。こうすれば見た目的にも、気持ち的にも上だと思わせる事が出来る
「なっなんだ今のはァ!ランペイジが尻もちをついたァ!」
司会も乗っかってくるから余計にランペイジも腹が立つだろう。言われなくても自分が一番分かってる
「やってくれますね……」
さし伸ばした手を払いのけて立ち上がるランペイジ。良いねぇ?屈しない感じが出て皆盛り上がっている
「負けるなー!」
「いけいけー!」
「ランペイジ頑張れー!」
ちっちゃい子供みたいなのも応援しているのか。人気者だなぁ
「マスクドVの異様なまでの接近戦ッ!あれは何だァ?ランペイジに気でもあるのかァ!」
「「「「ブーーブーー!」」」」
謎のブーイングで僕の悪役度がドンドン上がっていく。というか気があるってなんでそうなるの……戦いにくいようにゼロ距離戦闘してるのに
「はぁ!」
僕が観客を見ている間に腰の入った右拳が僕の顔面目掛けて飛んで来た。もちろん意識はランペイジの方を注意していたのでギリッギリまで見極めて、当たる瞬間に顔を右に向けてパンチの威力を低減しながら少し後ろに飛ぶ。ついでに仮面を変形させて顔の下半分を露出した形にする
「おォォッと!マスクドVのマスクが割れたァ!?これは負けるのが先かァ!それともマスクが全部壊れるのが先かァ!」
一応良いのを貰ったように見えるから僕が負けそうに見えるのは分かる。ただこの仮面は僕の意思で下半分を消しただけなのでマスクが壊れる事は無いんだよなぁ……
「今の感覚……まさかあの一撃を躱すとは。やりますね」
「さぁ、なんの事だか。良いの喰らって頭フラフラだぜ?」
「……ちっ」
拳を実際に打ってるランペイジには直撃しなかったのは分かるだろう。だが、周りの観客はランペイジが顔面に一発入れたという事で盛り上がっている。この差を今のランペイジはどう思っているだろうか?
「らぁ!」
拳ではダメだと思ったのか今度は左足でミドルキックを放ってきた。左のミドルは肝臓に当たると痛いから右のミドルより強いとされているけども……
「ふっ!」
右から来る左足をまずは右手で迎え、そのまま足の下をくぐるように左手を回して体も一緒に回る。所謂ドラゴンスクリューでカウンターだ