覆面5人衆
「それじゃあまずは会場入りする前に一丁やりますか」
仮面をVの字型に変えて、さっきアイドル死神さんに耳打ちした時に貰ったマスクを皆に配る
「これは?」
「これから僕達悪役をやる訳ですから一応顔は隠しておこうと。それにマスク軍団で纏めた方が分かりやすいでしょう?」
観客になる人達にも分かりやすいように覆面マスクで統一感があればあっちが悪者なんだなと理解してくれるだろう
「それじゃあ会場まで行きましょうか。死神さんとさっき段取りを決めたのでゆっくり行きましょう」
段取りを決めたから直ぐに行こうという訳では無く、準備の時間も必要だからゆっくりと歩いて行こう。その間はちょっと発展した冥界の街並みを見ながらちょっとした演出みたいな物もやってみるか
「お客さん集めをしながら行くからとりあえず覆面を付けてくれる?」
これから街中で暴れ……はしないが注目を集めてより多くの人が来てくれるようにやってみるか
「分かりました。モルガ様も早く着ましょう」
「あいあい、どう?似合ってる?」
一応ガッツリした覆面マスクでは無く、目元だけの物であるから一応顔は隠れていると言って良いんだろうか?とりあえずこれで2人は覆面を付けてあとは白武と黒武だけだが……
「これ覆面どうしよう?おっ?」
白武と黒武の2人が覆面を被ろうとすると触角などを貫通して顔を隠せていた。凄いな?これならちゃんと顔も隠れてるから覆面として機能している。まぁ姿が特徴的過ぎるから覆面をする意味があるのかと言われたら微妙な所だけど……
「よし、じゃあ行きますか!」
覆面4人とVの形の仮面を着けた不審者集団が今、冥界の街へと繰り出す
「これが……冥界?」
「おやおや?随分と楽しそうな所だねぇ?」
冥界の大通りとでも言うべき所は霊達がお店の様な物を開いていたり、大道芸みたいな物も披露されていた。そこを通っていく僕達も相当奇妙な集団だが、目を引かなきゃ意味が無い
「すぅ……最強は誰だァ!」
めっちゃ恥ずかしいけど今の僕は仮面を着けているので恥ずかしくないもん
「な、なんだぁ!?」
「俺達は現世からの挑戦者!冥界のウォリアー達に勝負を挑むぜ!最強の5人を出しな!」
正直寄せ集めも良い所の5人だが、これくらい見栄を張らないと誰も注目してくれないだろう
「ん?あぁ!あのVの字型の仮面は!」
「知っているのか!?」
「前にランペイジと戦ったアイツだ!アイツが仲間を引き連れてリベンジに帰って来たんだ!これは知らせないと!」
めっちゃノリのいい1人が大通りを大声で宣伝しながら走って行った。前回の僕の事を覚えてくれていた人……いや霊だった
「よし、この調子でもっと宣伝しよう。皆は一応黙ってついて来てくれると凄みが出るのでお願いします」
とりあえず宣戦布告的なものをしたし、これで向こうが戦える時間まで待てばオッケーだ
「前回は奴に負けたが今回は仲間を連れてきた!冥界ファイトクラブは俺達が頂く!」
恐ろしく適当な事を言っているけど、誰ともそんな約束はしていない。とりあえずちょっとした危機感を持って欲しいので言ってみる
「「「な、なんだってー!!!」」」
このノリ良いなぁ。こういうノリで驚いてくれたりするからこっちも恥ずかしさが多少薄れる
「このままだと世紀の瞬間を見逃しちゃうぜ?ファイトクラブのウォリアー達が俺達の前で倒れるその瞬間をな!」
これ負けたらとんでもなく恥ずかしいな……でもやらなきゃ面白くないよなぁ?
「あんた達も見に来ないと大事なファイトクラブが無くなっちまうぜ?」
「「「応援に行かないと!」」」
いやぁ凄い助かる。素直な霊ばっかりだと僕も少しの無理で何とかなる
「いやいや、恐ろしいねぇ?さっきって別に何か契約とかはしてなかったんでしょ?」
「はい、別に契約とかはしてませんよ。単純に冥界ファイトクラブで盛り上げる為に5:5でタッグ戦とかも交えながら戦いたいんで戦う人を集めてもらえますかと、お願いしてみただけですから」
僕達を警戒して少し距離を置く霊達をよそに小声で皆と会話する。上手く盛り上がれば冥界のエネルギーが増すし、そうなるように死神さんだって喜んで協力してくれる。だからこそ今回は約3戦で盛り上がれる試合展開に持ち込みたい。絶対に一瞬で決められるのだけは避けなくては
「私達は可能な限り盛り上がる様な戦闘をすればよろしいのでしょうか?生憎そういう戦闘のやり方は分からないのですが……」
「飯綱さんは思うままに戦って欲しいかな。明らかに指示に従ってますみたいな戦闘をしたら白けちゃうし、何より飯綱さんとか師匠みたいな可愛い人が戦っているって事だけでも結構盛り上がると思うので自然体で戦ってくれるだけで充分です。そもそも僕が勝手に巻き込んだだけですからね」
一応、狐巫女な飯綱さんは誰がどう見ても美形で、モルガ師匠も結構負けず劣らずな美形である。マスクをしていても「あ、多分素顔はめっちゃ綺麗だこの人」みたいに顔のパーツ配置だけでも分かる人には分かるだろう。そんな2人が戦うだけで盛り上がる要素としては充分だ