水あめ完成
「おやおや、なにか予感がすると思って来てみればこれはなにか食べ物を作っているねぇ?」
「げぇ!モルガ師匠!」
「ちょいちょい、ハチくぅん?げぇ!はないんじゃないかな?げぇ!は」
ウカタマと飯綱さん、白武と黒武の4人と一緒に水あめを作っていたらいつの間にかモルガ師匠がやって来ていた
「だって師匠手伝わないで食べるだけのつもりでしょ……?」
「うぅ、うぅ……手伝えないけど仲間外れはやだよぉー」
これ卑怯だなぁ……
「分かりましたよ。じゃあ邪魔しないようにしてたら師匠にも水あめをあげます」
「やったやった!さぁ弟子よ!師匠の為に水あめを作るのだ!」
「はいはい……これは思っていたよりも大変な作業になりそうだなぁ」
横暴な師匠だが、放置するのも可哀想なので水あめを作る作業を見学してもらおう。もしかすると作り方を覚えて自分で食べ物を作る事が出来るようになるかもしれない
「とりあえずウカタマのお陰で素材は何とかなったし、あとはこれを調理しよう」
「中々難しい物を要求するから困った物だよ」
もち米と麦のもやしを乾燥させたものを用意してもらった。もち米を水を多めで炊いてお粥状に、その間に乾燥した麦もやしをすりつぶして粉状にする作業を平行して行う
「飯綱さん、このすりつぶし作業をやってもらえますか?」
「分かりました。すりつぶします」
割烹着を着た飯綱さんがすりこぎで乾燥麦もやしを丁寧に粉末にしていく。これを後でもち米のお粥に入れよう
「とりあえず師匠もやりますか。このくらいなら問題無いでしょう」
「なるほどなるほど、それを手伝えば正式に報酬を貰えるって訳だね!」
「はい、失敗したら師匠の取り分は無しです」
にっこり笑顔でモルガ師匠に失敗しないように警告する。これで失敗したら温情は無しだ
「いやいや、プレッシャーが強過ぎないかい?」
「ただ粉末にするだけですよ?魔法の薬とか作る時にやるんじゃないですか?」
「まぁまぁ、やらない訳じゃないけどさぁ?」
「じゃあしっかりやってください。そうしたら多分美味しい水あめが出来るんで」
実際に作るのは初めてだけどお粥の方も温度管理を気を付けて作っていく
「このくらいでよろしいですか?」
「うん、これだけ粉末状になってれば大丈夫だと思うから入れちゃいましょう」
「私も私も!これで良い?」
「やれば出来るじゃないですか師匠」
「ふふんふふん」
あとはこの粉末状にした麦芽と合わせて60度くらいをキープしながら1日置いた物を漉し布で濾して煮詰めれば水あめの完成だ
「よし、じゃあこれを1日置きましょう」
「うそうそ!そんなに待ってられないよ!」
師匠が鍋に近付いて行き、懐から何かを取り出す
「やっちゃうよやっちゃうよ?24時間ぶっ飛べー!」
全てがガラスで出来た砂時計……多少装飾が豪華な気がするけど、前にワリアさんと鮭とばを作った時に使っていたアイテムに似ている。時間を飛ばすアイテムだ
「よしよし、これですぐに次の作業に移れるよね?」
「なんでこういう時だけはすぐにそういうアイテムが出てくるんですかねぇ?僕の修行の時は碌な物出てこなかったのに……」
塀のペンキ塗りや雑草抜きの思い出がよみがえる
「師匠であるならキチンと修行の環境を整えるべきだと思いますが……」
そういえば飯綱さんもアイリスさんに魔札を教えてた師匠の期間があったな。どうしてこれ程師匠らしさに差が出てしまうのか
「いやいや、だってハチ君だよ?下手に型にはめて教えるよりも自分でどうやったら良くなるのかとか考えさせた方が面白い成長すると思うじゃない?」
「……」
そこ黙ってこっちを見ないで欲しかったなぁ
「とにかくとにかく!これで1日置くとかいう工程は終わったから次々!」
「えっと、じゃあこれを漉して液体の方を煮詰めれば水あめの完成です。漉し布を持って来るのでちょっと待っててくだ……」
「漉し作業終わりました」
「早っ!?」
飯綱さんがどこから取り出したのか向こう側が見えるくらいの布を既に鍋に被せてひっくり返していた。下に受け止める鍋を既に用意していて、ボタボタ……というか、もはや水をそのまま蛇口から出しているくらいの速度で濾し作業を済ませていた。世の中色んな便利な道具がある物だ
「じゃ、じゃあこれを煮詰めますね……」
思った以上のスピードで調理が進み、これでもう煮詰めるだけとなってしまった。一応焦げたら大変なので僕が責任をもってへらで鍋の水あめの素を混ぜる。ここまでやって失敗したなんて言ったら皆悲しむし、絶対に失敗はしないぞ
『水あめ 空腹度回復+10% そのまま食べてよし、加工してよしの甘い食べ物。体にくっ付くと取るのが大変』
確かに髪とかに水あめが付いて大変になったとかクラスの誰かが言ってた気がする。どういう風に食べていたのか見当が付かないけど……
「これで水あめは完成っと」
「「「おぉ~!」」」
材料を提供してくれたウカタマ、作業を手伝った飯綱さん、時間をぶっ飛ばしたモルガ師匠。意外と師匠も居なかったら時間が掛かっていたので居てくれて良かったのかもしれない