白武と黒武への報酬
「これならサラマンダーを殲滅出来るかな?」
青く燃える木の所に辿り着き、残ったサラマンダーの数を見てみると5体。白武と黒武の2人と一緒ならサラマンダーを殲滅して青く燃える木を集める事も可能になるんじゃないかな?
「よし、2人とも行こうか。まずは1人1体で行こう」
不意打ちで1体ずつ倒せれば数の有利をひっくり返せるし、失敗するにしても誰か1人くらいは成功するだろうし、逃げられない地形でも無いから仕切り直しも出来る。気楽に戦闘出来る心の余裕は大きなアドバンテージだ
「【ミスティックミスト】」
ほんとこれには何度も助けられている。霧のお陰で対複数相手でもかなり楽に近距離に詰められたり出来るのでこれには何度も助けられている
「よし、じゃあ手前の左右に居る奴よろしく」
「「……」」
3人でサラマンダーに向かって走り出し、顔の下に入り込む。相手がそれなりにデカいからこそ出来る相手の死角から頭部への不意打ち。2人は槍を一度短くしてから腕部に装着してアッパー。カッコ良かったので僕はハンドスプリングの要領で地面を力強く押してサラマンダーの頭部にキック。ついでに足に深淵をドリル状に纏わせてそのまま蹴り抜く……というか貫通する。海での【深淵の一撃】の深淵ドリルを思い出しながらやってみたけどこれは中々凄いかもしれない……ついでに素材も取れなくなりそうだけど
「右のをやって!」
2人には右の1体を任せて僕は左の1体の方に向かう。流石に不意打ちとはいえ、3体も倒れれば向こうも臨戦態勢になるだろう。そうなったらサラマンダー1体にあの2人を当てる方が安心だ。霧の中でむやみに炎を吐かれる可能性もあるし、可能な限り瞬殺をして欲しい。僕の方は新しく使えるようになった深淵を戦闘の主体として使用したり、補助的に使用してみたり色々試させて欲しい
「このタイミングで!」
サラマンダーが口を開き、ブレスを吐こうとするタイミングで深淵を使ってサラマンダーの口を縛る。炎を吐こうとしていたのか口の中で行き場を無くした炎が頬の部分を赤くしている。その隙に背後に回り、頭部に踵落とし。そして大体この辺と当たりを付けた所に貫き手を差し込み、サラマンダーの心臓を抜く。体内で炎を生成しているからか心臓もかなり熱いな?
「うまく不意を突けば一撃必殺も夢じゃないな」
防御無視の急所一点突き。頭に足技を当てなければならないが、まともな生命体ならこの攻撃で基本は倒せる。深淵と【バインドハンド】とか合わせて相手を固定してから蹴りからのハツ抜きコンボも出来そうだ
「すまないサラマンダー達よ。君達の素材もしっかり使わせてもらうよ」
「「……」」
合掌してサラマンダー達の死体を泡沫バッグに仕舞う。白武と黒武の2人も僕の真似をしてサラマンダーの死体に合掌していた。正直今更命の大切さを僕が言うのもちゃんちゃらおかしいと言われても仕方がないが、せめて2人の前くらいは一応主としてカッコ良く決めたかった
「2人とも燃えないように気を付けながら木を倒して」
「「……」」
合掌を終え、2人には青く燃える木の伐採を頼んだ。サラマンダーの死体はあの造船所に持って行こう。この街の情報とかそれで色々入手出来ないかな?
「おぉ、おわ…ってもう木材になってる……」
近くに残っていたサラマンダーの巣には冒険者の物と思わしきボロボロの武器とか防具があったのでそこの調査をしていたら白武と黒武の2人は既にカーボンウッドに加工してくれていた。木を倒せとは言ったけどここまでしてくれるとは……これは今度日頃のお礼をしに行かないと。2人って何が好きかな?虫だから樹液的な物か、それとも普通にご飯とか食べるのか……でも御稲の国を他の虫達と襲って稲を食べてたし、米とかも喜んでくれるのか?
「今度何か好きな食べ物でも作ってあげよう。何でも良いよ?日頃のお礼って事で」
「「……」」
2人で向かい合い、何かをテレパシーの様にやり取りしているのか、言葉は一切無いが討論している様な雰囲気を感じる。お互いに食べたい物を統一しようとしているんだろうか
「別に2人別々の物でも良いよ」
「……」「……」
お互いに顎を指で押さえて思案している。白と黒の鏡合わせみたいだなぁ
「おっ、地面に書いた」
少し待っていたら2人が槍で地面に食べたい物の名前を書き出したので確認してみると……
「蜂蜜たっぷりパンケーキとペロペロキャンディー?」
何とも可愛らしい食べものを要求してきたうちの虫武人コンビ。イメージと違うとかのレベルじゃないがこれは作ってあげなきゃいけないなぁ?
「オッケー。その2つはちゃんと作るよ」
ちゃんと作るとは言ったけどパンケーキの方は素材があればすぐに作れるけど、問題はペロペロキャンディの方。飴を一から作らなければならないから今度飴の作り方を調べておこう。何か必要になった時はホフマンさんに助けてもらおうかな?
「「……!」」
うん、言葉は無くてもありがたき幸せ!って感じで跪いてるなぁ?まぁ注文された分のカーボンウッドは集まったし、2人の為にもまずは飴作りかな