気合いの一撃
皆様あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします
「そうとう怒ってるなぁ?まぁこれだけおちょくられてボコボコにされたらキレるのもおかしくないか」
「「「「「ギャオォォォン!!」」」」」
HPがどのくらい減ったらとまでは聞いてなかったけど、ドラーケンの足の先がドラゴンっぽくなった。あれで噛みついてくるようになった訳だ。アンガーアンプルの効果も一回切れてしまったみたいで向こうにヘイトが向きそうになっていたので追いアンガーアンプルでヘイトをまた僕に向ける。あれだけ攻撃されてもヘイトは僕にしか来ないってアンプルの怒らせる効果って相当だな……
「それじゃあ僕もそろそろ使うか。来い!」
黒い靄が集まり、僕の腰から伸びて尻尾の様になる。これ結構使いやすいんだよなぁ
「こっちもやらせてもらうよ!」
足先の頭が噛みついてくるのなら、次はその目玉を潰してやろう。今回は攻撃を深淵に絞り、僕自身は回避に専念だ
「ありゃあマジでどうなってるんだ?」
「あの時の黒い姿とはちょっと違いますの?」
「それよりもアイツ……まだ一撃も喰らってないぞ?」
「あれが彼の実力……」
「彼に1度くらい挑んでみようとは思っていましたが……これほどとは」
ハチの事を良く知らない元勇者軍の面々は何故あれで戦えるのか分からないと言いたそうな表情で見ている
「あれが彼の実力さ。型に囚われない自由なスタイルで戦う。理不尽なまでの強さだ」
「「「「「なるほど……」」」」」
ハスバが戦いながらハチ君の説明をするが、当の本人には何一つ知らされていない勝手に言われているだけである
「だけどあれは知らないな……初めて見た」
「掲示板に上がっていた黒い尻尾でしょうか」
「何にせよ今あんな戦い方が出来るのはハチ君だけだろう」
「本当にあの状況で死なないのも凄いですが、バッチリヘイトを集めてこっちが楽に攻撃出来る状態を維持出来てるのも凄くないですか?」
ハチは現在、ドラーケンの体を飛び跳ね、黒い尾で敵のドラゴン頭の目を攻撃しながらヘイトを稼ぐ回避タンクスタイル。基本的な防御を固めてヘイトを集めるタンクとはまるで違う
「型に囚われないってレベルじゃねぇぞ……?」
「回避タンクは確かにあるが……あれはもうダメージディーラーレベルで攻撃してないか?」
「とりあえずボケっとしてないで攻撃するんですの!あのヤベーのがヘイトを受け持ってくれてるうちにとっとと仕留めるんですの!」
そんな事を言われている当のハチはというと……
「おっと、沈むのは待ちなよ?」
「「「「ギュオオアアアン!?」」」」
ドラーケン本体の(だと思われる)イカの目を攻撃すると一定時間沈まないという特性があるらしく、沈んで引き剥がそうとしたところをキャンセルしてヘイトチャージと攻撃可能な範囲を確保する作業を継続していた
「これなら他の人でも出来そうかも」
多分船の上から遠距離攻撃でドラーケンの目に対してチクチクしてやれば浮上してくるからその隙にイカの腹部分に乗り込んで攻撃、沈みそうなら目を遠距離からチクチク……ってやれば近接も無理なく腹の上で攻撃に参加出来るだろう。最初から海に入って目玉を攻撃したからいきなり浮かんだ状態で戦闘がスタートしてるけど、多分これ足に攻撃してある程度ダメージが貯まったら体が後から出てくるって設計かな?うん、それなら他の人にも出来るな
「おーい」
装甲船と台船に手を振る。横付けしてこっちに乗り移って攻撃した方がダメージも与えやすいのでは?
「ヒャッハー!しらたき!ちょっと聞いてきてくれ!」
ダイコーンさんがスライムのしらたきちゃんに海を泳がせて僕の元に寄越してきた。要件を伝えるにはこの方法が良いか。大声で会話するより楽かもしれない
「船をコイツに横付けして物理が得意な人はこっちに乗り移って攻撃してって伝えて!」
「ーーー!(分かりました)」
伝える要件は伝えたし、これでラストスパートだ
「ーーー!(これ)」
「マジかよ……ヒャッハー!アイツに乗り込んでラストスパートだってよ!」
「「「「「!?」」」」」
「行きましょう。遠距離からチマチマ攻撃するより乗り込んで大技を叩き込んだ方が速いです」
「そうだな、所謂あの状態は一種のダウン状態の様な物だろう。乗り込んで攻撃するのが一番手っ取り早い」
「乗り込んでボコボコにすれば良いんだよねっ!あはっ!」
「たまには良い所見せないとねぇ?」
「彼があれだけやってるんだから自分達だけ安全圏から高みの見物って訳にはいかないだろう?」
「あの人がヘイト稼いでますからまぁ大丈夫でしょう」
「自分もあの人の役に立ちたい!」
「そろそろアンガーアンプルも無くなるかもしれません。そうなったらアレの対処、私達に出来ますか?」
覚悟が決まっている元魔王軍の圧を受けたら全員で行くしかない。と言わんばかりに装甲船の進路がドラーケンに向く。元々近い所ではあった為、接舷自体はスムーズに行えた
「足がドラゴンみたいになってるので相手のHPも結構減ってるハズです!さっさとケリをつけてください!【アビスフォーム】」
ドラーケンに乗り込んできた皆に言って【アビスフォーム】も解禁する。背中の4つの触手と1つの尾。その全てに斬撃が付与された状態で腹の上でウィンドミルだ!
「ギュアアアアッ!?」
ふーむ、【アビスフォーム】中でも雷属性消えてないみたいだ。これ強いな~
「【熱刃参刀】!」
「【フレアスラスト】!」
「【リボルビングフレイム】!」
「【炎斧衝撃ぃ~!】」
「ギュッギョアアアアアアア!?」
うん、なんか僕……遊んでるだけだったかもしれない。恐ろしい火力を目の前で見せつけられた気がする
「これは、ラストの一撃貰っても良い感じかな?」
「決めてくれ!ハチ君!」
「まだ何か隠してるんですよね!見せちゃってくださいよぉ!」
「ハチさん!最後の一撃お願いします!」
「そこまで言われたら仕方がないなぁ?」
獲得経験値が減る?アイテムが全然入手出来ない?悪いが全部我慢してくれ。ここはこれを使わないと締まらない
「はっ!」
触手4つと尻尾、両足に力を入れて上に向かって跳ぶ。3、40mくらい飛び上がったんじゃないだろうか?かなりの跳躍力だ。ドラーケンもジャンプしたところが凹んでいるし……まぁそれはどうでもいい。ラスト。決めさせてもらおう
「【深淵の一撃】」
右手を下に向けて落下を始めたら黒い靄が右手に集まって来た。さぁ、今回の一撃はなんだ?
「えっ!?これは……よし!」
円錐状に巨大な靄が固まり、回転を始める。これはもうそういう物だよね!?良いよね!?
「僕のドリルは海を割るドリルだぁぁぁ!」
深淵の巨大ドリルをドラーケンの足を物ともせず、眉間をぶち抜いた