糸口
「ドラーケンを倒しに行くんだな?よし!任せとけ!」
「ドラーケン?」
海のボスを倒しに行くと船長に話したら想像とは違う名前が出てきた。クラーケンではないのか
「おっと、恩人さん、相手をクラーケンと勘違いしたらだめだぜ?奴はクラーケンよりもっと厄介だ。何せ足を一本ぶった切ったら2本に増えやがる。それに追い詰めたら触手の先がドラゴンの頭みたいになるから気を付けるんだぜ?」
切ったら増える頭……ハイドラかな?もしかして見る方向が上か下かで別の生物に見えるみたいな奴か。ハイドラとクラーケンをくっ付けたようなボス……想像するだけでもやばそうなボスだ
『ハチ君?その船は?』
『なんですかその船!?』
『ハチさん?その船の情報何か教えてもらえますか!?』
まぁ、フレンドからメッセージが届くけどとりあえず聞いてきた人には『乗せてもらってるだけです』とだけ返しておこう
「船長、ちょっと待っててください。船長から貰った情報を向こうの船の人達にも教えて来るんで」
「おう!待っとくぜ」
ダイビング・デッドマン号から装甲船の方に飛び移って情報共有をしに行く
「触手を切ると増えて、HPが減ると触手の先がドラゴンみたいになるらしいです。だからそれだけ気を付ければある程度楽に戦えるかと」
「どうしてそんな情報を……」
「まぁ船長からの情報ですね」
別にジェイドさんに多くを喋る必要は無いと思う。必要な情報は既に渡したし、連携において問題は発生しないハズだ
「とりあえずそう言う事なので、戻ります」
「そっちの船にも何人か乗せた方が……」
「海の中も進むので水中呼吸が出来ないと乗せられないです。そもそもこっちでヘイトを稼ぐのに余計な犠牲は要らないでしょう?」
勿論死ぬ気はさらさら無いし、水中で呼吸出来ない事で余計な犠牲を出して攻撃性能を下げるとか無駄でしかない
「し、しかし!」
「そんな心配するのなら僕がやられる前に倒してくれますか?」
防御に戦力を割かなくても良いようにヘイトを稼ぐって言ってるのに……
「まぁ居なくなってもたかが1人です。一人落ちて戦線を立て直せなかったらそれこそパーティ編成から見直した方が良いと思います」
こうでも言えばパーティリーダーみたいなジェイドさんはそれ以上言えまい
「確かに、君の言うとおりだ……1人落ちただけで立て直せなくなるのはパーティとして良くない」
「じゃあこれからボス討伐頑張りましょう」
サクッと挨拶だけ終わらせてダイビング・デッドマン号に戻る
「それじゃあ船長!お願いします!」
「あぁ!行くぜ!」
「「「「「アイサー!」」」」」
「遅れるな!俺達も行くぞ!」
台船を繋いだ装甲船とダイビング・デッドマン号で海を進み、ドラーケンが出てくる場所まで進んでいく
「にしても恩人さんがドラーケンを倒しに行きたいとはなぁ?勝ち目はなんかあるのか?」
「勝ち目ですか?やってみないと分からないですね。ただ、糸口になりそうな物はあります」
空島で渡されたあのアイテム。なんか改良したらしいけどまだ確認はしてなかったな
『生生流転の懐中属計 5秒毎にこのアイテムから発生する属性が変わる。変化する属性を1つ保存する事が出来る』
変幻時在の属性計と同じ5秒毎の属性変化だけど、変化していく属性で気に入ったのがあれば属性計自体に1個保存出来るみたいだ。これは凄くありがたいな?戦う場所とか戦う相手が決まってたら戦闘前にこれを使っておいて、欲しい属性が出た時に保存して使える。多分一回使ったら保存は破棄されちゃうだろうけど、執事服でずっと戦っていれば問題無いな
「船長?ドラーケンって苦手な属性ってあります?」
名前も知ってたし、船長なら相手の苦手な属性とか分かるかな?
「あぁ?海の生きもんは基本火が苦手だ。水中で火なんて浴びた事は無いからな。後は……雷も苦手だな。ドラーケンも雷は苦手だ」
ほうほう、火か雷が有効打になるんだな
「情報ありがとうございます。今度一緒にお宝でも探しに行きますか?」
冗談交じりにお宝探しのお手伝いを提案してみた。まぁ素人を参加させるとは思わないけど……
「おぉ、そりゃあ良いな!そんじゃあ今度水中火山の近くに良い感じの奴があったからそこの探索を頼むぜ!」
……マジ?海底火山ってこりゃまた凄い環境の所に行く事になるなぁ?
「まぁそれはドラーケンを倒してちょっと落ち着いてからでも良いですかね?」
「お宝は早くに獲りに行った方が良いんだがな……まぁ少しくらいは休む時間も必要か。そのくらいは待ってやるさ」
「運んでもらっているお礼を返す為に可能な限り急ぐつもりなんで……」
まさか冗談半分で言った事がこんな事に繋がるとは思わなかった。ドラーケンを倒せたらジェイドさんとの会話と海底火山近くのお宝回収か。中々忙しいなぁ?そうだ。海の向こうを越えたらルクレシアさんにも会いにいったりもしないと……それに星座魔法の情報も集めないとなぁ……
「そろそろ奴が来る海域だぜ!準備しな!」
「はい!」
いよいよボス戦が始まる海域に突入だ。徐々に海も荒れ、何となく海の色が黒くなっている気がする。さぁ決戦だ