人形修復!
「それで、ハチは何でこんな所までやって来たんだ?ここには特に何も無いぞ?」
「えーっと、何で来たかって言われたら明確には言えないんですけど多分情報を求めてが正しいのかな?」
「あるかどうかも分からない情報を求めてこんな所まで来たのか!?ハチ……君はバカなんじゃないか?」
おおぅ……ストレートな罵倒。言われてみれば確かにバカかもしれない。でも、皆が登ってみれば何かあるかもしれないと教えてくれたから来てみたんだよね
「バカかもね。でも、僕はこのアルファン山の山頂まで登って来たからヘックスさんって存在が居るって知ることが出来たよ?村の皆に土産話として話せるかも……もしかしてヘックスさんの存在って秘密にしなきゃいけない感じかな?だったら話せないな……良い景色だったくらいにしようかな?」
「プフッ!プフフッ!そんな事考えていたのか?大丈夫だ。その村の住人か?私の事を話しても問題無いさ。それで、どんな情報を探して来たんだ?」
吹き出しながらも僕の話は聞いてくれるみたいだ
「えっと、これの残りのパーツを探してます」
そう言って人形の右腕、左腕、左足を取り出す
「ほう?これを何処で手に入れた?」
真剣な表情でパーツを見ながら僕に訊ねるヘックスさん。やっぱり神時代の物の修復って軽々しくやっちゃいけないのかな?
「まぁ村の周辺でパーツを持ってた皆が僕に渡してくれたので修復してあげないと可哀想かなぁって」
「ほう……ところでハチ。この人形を修復すれば絶大な力でハチの剣となり、盾となってくれるだろう。そんな力を持った人形を修復してどうしたい?」
ヘックスさんが僕を試すような事を聞いてくる
「どうしたいって言われても……壊れちゃってるから修復して元の形に戻してあげたいだけなんだ。元の形に戻す事が出来て、もしその人形が動くなら自由にしてあげたいし、動かないのであればそれこそヘックスさんとかに託した方が近い存在だから人形にとってその方が良いんじゃ無いかな?」
「ほうほう?」
興味深そうに聞くヘックスさん
「力が欲しくな……コホン、力が欲しいか?」
何かそれっぽく言い直すヘックスさん。力が欲しいかだって?
「力(STR)は要らないかなぁ?」
「何か差異がある気がするが……その人形が修復されてもハチは人形に強要する事は無いんだな?」
「むしろ自由になってほしい。聞いた話だと魔力を流していないと動く事も出来ないみたいだし、その辺ヘックスさんって何とか出来たりする?」
魔力を込めてあげないと動けないとか可哀想だし、その辺何とかできたりしないかな?
「面白い!やってやろうじゃないか!」
「ん?」
何か不思議に感じた。やってやろう?
「やってやろうって……ヘックスさんもしかしてパーツ持ってるの?」
「あぁ、山に散らばっていたからな。私も残りを探していたのだ」
「じゃあ僕の持ってるパーツを全てヘックスさんに渡します」
「は?会って間もない私を信じるのか?神時代の戦闘人形だぞ?本当に良いのか?」
『注意!レガシークエストの報酬アイテムが無くなります。本当によろしいですか?』
なんだなんだ、いきなり警告まで出てきたぞ?というかレガシークエストの報酬アイテムってやっぱり人形だったのか
「僕はヘックスさんの優しさのお陰でここまで来れましたからね。その優しさがあるのなら人形のパーツもヘックスさんに託せます」
報酬が無くなるって言われても出来るだけ近い存在が主人の方が人形としても幸せなんじゃないかな?
「……分かった。ではこのパーツは貰うぞ?」
「あ、1個だけ条件を付けても良いですか?」
「ん?何だ?」
「人形を完成させたらで良いんで僕と一緒に村まで一度来て欲しいんですけど……ダメですかね?」
話しても良いという事なら村までついて来てくれないかな?
「良いだろう。私もハチが来た村が気になっていたからな」
多分だけどアトラさんに完成した人形を一度見せたらクエスト自体はクリア出来るんじゃないかと思うから所有権を持つ事になるだろうヘックスさんも一緒に連れて行けたなら万全だろう
「じゃあまずは一緒に組み立てよう!」
玉座に座っていた大きな体の方からストレッチャーの様な物が出てきてその上に頭と胴体と右足だけの人形が乗っていた。眠っている様な表情だけどこのままだと怖いな……
「おぉ……じゃあこれで完成するんですね!」
「ではまず足をつけよう」
僕の出していたパーツから左足をヘックスさんが取り付ける
「結構スッとはまるんですね?」
「まぁ元々そういう物だからな?では左手の方を頼む」
「分かりました」
僕が人形の左手を持ち、ヘックスさんが右手を持つ。そして……
「「せーの!」」
同時に人形の腕をはめる
「最後にハチの願いでもあるからな。このコアを人形に搭載する」
ヘックスさんが白というか透明の水晶玉みたいな物を人形の胸部を開き、中に入れた
すると波動の様な物が出て少し人形から離される。人形少女の両目が開き、ストレッチャーの様な物から起き上がる
「…………!」
「…………!」
人形とヘックスさんが何か会話している様だけど傍から見たら目を合わせているだけみたいだ
「よし!マスター登録完了だ。ハチ、半分は君が集めたんだから出来れば名前を付けてやってくれないか?」
「名前、名前かぁ……無垢なる人形だし、ピュアルとかどう?」
「良い名前だ。では今日からはピュアルとしよう。私の身の回りの世話を頼むぞ?」
「…………!」
声はないけど喜んでいるみたいな様子だ。ほとんど裸同然だった姿から灰色のなんかカッコイイ服装に変わっている。良く分からないけど多分ヘックスさんが何かしたんだろう
「ハチ、君には感謝しかない。とても貴重な神時代の戦闘人形のパーツを譲ってくれてピュアルを復活させることが出来た」
「僕も復活させたかったからね。ウィンウィンの関係だよ」
ヘックスさんの後ろで笑顔のピュアルを見ればこうして良かったと思う
「いや、このままでは君は損をしている。お礼をさせてくれ」
「別にお礼なんて要らないよ?」
「いや、私の気が済まない。見た所その装備……良い物もあるがとても貧弱な物もあるな?どうだろう、私から防具をプレゼントさせてくれ」
「…………!」
断らせないと言わんばかりの眼力。これは貰わないと2人を連れて村に行くのも無理そうだ
「分かった。それで真のウィンウィンの関係だね」
「あぁ、じゃあこれをやろう!」
そう言ってヘックスさんは玉座から何かを取り出した