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604/2001

深淵開花

「お?あれは……ラブカか?」

 黒く長い体、噛みついたら二度と離さないと言わんばかりの内向きの牙、ギョロっとした目玉。深海ならではの見た目が怖くて不気味な存在だ。それが3体くらい纏まってこっちに向かってやって来た


「あれは噛まれたら一発アウトっぽいな……」

 一噛みされたら傷口はぐちゃぐちゃになりそうだ


「というか、多分【アビスフォーム】のせいで寄って来てるのかもしれないな」

【アビスフォーム】は【抑圧】の効果で発動中はヘイトを集める効果があるし、下手にヘイトを集めて対多数になるのは非常に危ない。このラブカの相手を終えたらすぐ解除しよう


「くっ!」

 ラブカの噛みつき攻撃を触手2本を使い、上顎と下顎を押さえて防ぐ。触手は4つあるからラブカ2体は触手で防ぎ、残った一体は両手を使って噛まれないように押さえるが……このままでは敵の増援が来て防ぎきれなくなる。【アビスフォーム】を使った状態でなんとか抑えているが、この状況ではスキルも魔法も使えないから確実な死が僕に迫ってきているのを肌で感じる。あと1つ攻め手があれば……


「今使えなくてどうするんだ!」

 こういう時に僕自身の深淵が使えないと意味が無い!


「僕に……従え!」

 アビス様から託された僕の深淵領域。こういう形であって欲しいよりもまずはどんな形でも良い。僕の意思に従え!




「!?」

 僕の想いを込めた一言に呼応するように胸の部分から黒い弾丸の様な深淵がラブカ達のエラの部分を右から左に貫通して3体の動きを止める


「そうだ!それで良い!はぁ!」

 左右に何度も黒い弾丸の様な深淵がラブカのエラの部分を行ったり来たりしてボロボロにしていく。動きが鈍くなっていくのを触手で感じ、タイミングを見計らってラブカの首を【触手攻撃】で斬撃を付与した触手で斬り落とす


「【解除】」

 首を落としたラブカが泳げる訳もなく、3体のラブカの死体が海底に沈んでいく。これは一旦この場から離れるべきだろう。色々今起きた事を整理したいし、ヘイトを集めないように【アビスフォーム】は一旦解除して逃げよう。ラブカの死体は一旦スルーだ


「あ、やべ……帰り道どっちだ?」

 真っ暗な深海。道しるべも無いからルールイアがどっちにあるか分からない。これは完全にやらかしてしまった感があるぞ……


「これはもう頼るしかないか」

 敵が来る可能性もかなり高いがアレを吹いてみるしかない


「頼む来てくれ船長!」

 オルカの魔笛をインベントリから取り出す。海の中だけどちゃんと吹けるかな?ダイビング・デッドマン号が来てくれれば何とかルールイアには帰れると思うけど……


「~~~~~♪」

 水中で不思議な音色が響き渡る。何だろう?鳴き声の様にも聞こえるし、笛の音みたいにも聞こえる。これは音で敵が寄ってくるぞ?


「うおぁ……これはヤバいかも」

【察気術】で捉えるオーラの数が10や20で収まらないレベルに増えてきた。これは今度こそ死んだかも……




「天が呼ぶ!海が呼ぶ!我等の恩人様が呼ぶ!水さえあればどこへでも!ダイビング・デッドマン号ただいま登場!」

「船長!」

 深海の暗闇を引き裂く様にかなり近くまで迫っていた深海の生物達を吹き飛ばす様にダイビング・デッドマン号が僕の前にやって来た。かっこいい登場したなぁ?


「恩人!呼んだか?今度は何処に連れて行って欲しいんだ?」

「助かりました船長!実はルールイアの場所が分からなくなってしまって……」

 船に乗って船長とお話する。船に乗ってる皆も元気そうで何より


「なるほどな!にしても良くこんな所で生きてたな?普通は水圧から身を守るアイテムでもないとこんなに深い所人間じゃ無理だぞ……」

「それはまぁ色んな助けがあって何とか生きてるって状態です。これだけ過酷な環境なら成長出来るかなぁって。まぁそれで迷ってしまって船長にはご迷惑をお掛けしてしまってますが……」

 本来はこんな事で呼ぶべきでは無いだろう。悪い事したとは思っている


「ほぉ、お前ら!恩人のこの心意気を見ろ!自分を成長させる為にあえて困難に突っ込んでいく!こんな立派な人の手助けなら喜んでやってやろうじゃねぇか!」

「「「アイサー!!」」」

 船に乗ってる骸骨船員達もなんか笑ってる気がする。僕の手助けを喜んでやるって言うのは建前じゃなくて本音っぽい


「そんじゃルールイアまで送るか?」

「あ、それはちょっと待って下さい。実は衛兵みたいな人魚さんに黙ってドームから出たんで、船に乗って入港したら怒られちゃうかもしれないんでルールイア近くまで乗せてくれればそれで……」

 一応金無しで街に飛ばされた設定だから船で入ってきたなんて事知られたらまたドームから出たってバレてしまう


「恩人がそういうのならルールイアが見える距離まで乗せて、そこから先は自力で帰るって方が良いんだな?」

「あぁ、それは助かります!船長。それでお願いしても?」

「任された!」

 これでとりあえずルールイアに帰る事が出来る訳だ……あっそういえば船長ってルールイアに真っ直ぐ行けるんだよな?って事はルールイアの位置データを持っているのでは?


「船長?ルールイアの位置データって持ってます?」

「位置データ?持っているがそれがどうした?」

「その位置データ、教えてくれませんか?」

 棄てられた教会の時みたいに位置データがあれば帰り道が分からない問題は無くなる。これは結構大事な情報だ


「ほら、これで良いか?」

『海底都市ルールイア の位置データを入手しました』


 よし、これで次から船長達に迷惑を掛けずに帰る事が出来るな!



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― 新着の感想 ―
[一言] はぁあああああ///ハチくんに従わせられたぁぁぁぁい!
[良い点] 〉「僕に……従え!」 〉「そうだ!それで良い!はぁ!」 強い言葉のハチくんも格好いい♪
[一言] 船長からしたらもっと頼ってほしいのが本音じゃないかな? 骨が真っ赤になれば本音が透けて見えそうだけどね 透けるトンなだけに
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