深海戦闘
「困難な状況が僕の深淵を成長させる可能性があるのなら……やっぱり深海での戦闘はやらないとな」
深海という極限環境での戦闘。これで僕の深淵が育たなかったらもうどうしたら良いか分からないぞ?あとはどう衛兵にバレないように動くかだが、これに関してはルールイアから離れてしまえば危険度は大幅に上がるが、バレて怒られるという問題はクリア出来るだろう
「よし、まずは【アビスフォーム】の制限無しでやるか」
最初は今まで通り【アビスフォーム】を使用して戦闘。それでやっていけたら【アビスフォーム】無しで……
そういう感じでやっていこう。もう少し慣らしをしたかったけどバレてしまったから直ぐに戦闘出来る状態。【アビスフォーム】を使用する事を躊躇うのは良くない。使える物は使っていこう
「だけど今日は目を付けられちゃったし、大人しくしていよう。明日からが本番だな」
衛兵人魚の同情を誘うやり方をやったから今すぐにレベル上げに向かうとすぐに止められてしまうだろう。今日は諦めて明日やろう
「やっぱりこういう時には橋の下に隠れるのが一番だな」
宿に泊まる費用も無ければ、泊まる気も無かったので適当な橋(水の中だから意味無い気がするけど)の下に張り付いてログアウトしてみたけど誰かにバレた様子も無かった。こういう所に隠れるのは充分使えそうだな?人魚は橋の下までは確認しないみたいだ
「よし、それじゃあ行くか。えーっと……これで良いか」
岩マントを被り、海底の岩に擬態しながらドームの外を目指す。何処に行っても隠れなきゃいけないのは変わらないなぁ……
「よし、【アダプタン】」
マントを仕舞い、ドームの外に飛び出す。とりあえずまた衛兵に見つかったら面倒だし真っ直ぐ進んでみよう
「うわぁ、強烈なの居るなぁ?」
進んでみたら牙がガタガタで、それで物が食べられるのか不安になるような歯並びのチョウチンアンコウが居た。こんな光の届かない深海で光っている提灯が気にならない訳が無い。これは確かに引き寄せる効果があると思う
「深海初戦闘は君に決まりだ」
チョウチンアンコウ。深海魚を代表する1匹と言っても過言じゃない存在。深海戦の初戦相手には充分な相手だろう
「【アビスフォーム】」
体に深淵を纏い、触手で戦闘出来る様にする。さぁ、勝負だ!
「ガチンガチン!」
あの歯並びで口を開けたり閉じたりしながらこっちに向かってくるチョウチンアンコウ。まずはどう動くべきか……
「これは中々……こっわ!」
チョウチンアンコウの顔に触手を突き刺し、喰らい付こうとする牙に捕まらない様に距離を作る。お腹の前で牙がガチンガチンと音を鳴らしながらかなりのスピードで泳ぐチョウチンアンコウ。下手に海底や岩にぶつけられたら喰らい付かれておしまいだ
「こんの!」
触手に力を入れ、体をチョウチンアンコウの上に持って行き、提灯部分を掴む。これで一応攻撃範囲からは逃れたハズだが、逃れただけでまだアンコウは死んでいない。動けなくするには脳を破壊するのが一番だろうからアンコウの目の付近から触手を上向きに突き刺す
「…………」
ビクビクと少し痙攣したかと思えばピクリとも動かなくなるアンコウ。ある意味一撃必殺な攻撃方法だが、これは相手に取りつかなければ出来ない手法だ。狙ってやるには手足4つじゃ足りない。【アビスフォーム】無しでの深海戦闘法には組み込めないな
「脳を破壊するのは良さそうだけど、手足だけじゃ足りないのは良くないな。もっといい方法があるかも」
脳を狙っていく攻撃方法は悪くは無いと思う。難しいという一点を除けばね?魚はデリケートな生き物だし、陸に上げるとか出来れば倒すのは簡単かもしれない。だが、そんな出来ない事を想像するよりも相手のホームグラウンドでなんとか倒せる手段を見つけないとダメだ
「とりあえずこの死体に他の奴が寄ってくるとマズいし、バッグに仕舞っておくか」
深海には餌が少ないから血の匂い的な物に敏感で寄ってくる生物がいるかもしれない。すぐに倒したチョウチンアンコウの死体を泡沫バッグに入れる事にした。深海魚だし、これは一度喰えるかどうか確認してみなきゃ
『ランタンアンコウ の死体を入手』
ランタンアンコウかぁ……提灯部分は海の中での灯りとかに使えたりするのかな?でもあれ現実だと細菌が光ってるんじゃなかったっけ?
「まぁ、そこは現実とは違うか」
分かりやすくファンタジーな生物として頭にランタンが釣り下がっているアンコウが居ても不思議じゃない。倒せないとかそういう奴じゃなくて良かったと喜ぼう
「近くに他の魚は居ないな。連戦にはなりにくいかも?」
一体倒したら血の匂いに誘われてまた一匹みたいな連鎖は無いみたいだ。【察気術】でずっと探っているけど他の生物の気配は無い。一度戦闘になっても立て直しの時間はありそうだな
「よし!次の獲物を探しに行くか!」
何時までも余韻に浸っていても何も起きない。次の生物を探しに行こう!
「さぁ、何が来るのか……出来ればチョウチンアンコウ以外でよろしく!」
折角なら違う種類の深海魚来てくれよ?