退院
「おいおい、そんな喜ぶと危ねぇぞ?」
「おっと……でもやった!今度こそやるんだ!」
今度こそアルテアに行ってみよう
「一応手が動かせる様になってから勉強はやってたから夏休みが短くなることは無いし、開始時期が夏休みと同じで沢山楽しめそうだ!」
「あぁそういやどこまで進んだんだ?」
どこまで進んだ?あぁ……
「この通り今まで通り動ける様になりましたよ!」
リハビリの成果を見せる為、ベッドから降りて歩き回ってからまたベッドに戻る
「あぁー……まぁリハビリもそうなんだが、ゲームの方だよゲームの」
「え?えっと……お恥ずかしながらキャラクターを作った所で終わっちゃいました」
やってた事と言えばリハビリ、リハビリ、またリハビリとリハビリ一点集中で頑張ってたのでキャラ作成すら中途半端な状態でリハビリしてましたと白状した
「ぷっ、はっはっは!マジかよお前さん?1ヵ月もあってキャラ作成だけって!……ウソだろ?」
「いや、マジです。オーブさんと毎日リハビリをやってここまで動ける様になったんです。ゲームは完璧に動ける様になってからやるって決めてリハビリを頑張ってたらβが終わっちゃってました」
「途中、そのオーブさんが何回か映像とか見せて冒険してみないか?とか勧めてなかったか?」
「確かに勧められた事はありましたけど、まずはリハビリだ!ってオーブさんを押し切ってました」
大丈夫ですよやってみませんか?とか言われたけど悪いと思いつつ、先に体の感覚を取り戻す方を優先した
「おいおいおい、こりゃとんでもない奴だな?楽しそうとは思わなかったのか?」
「そりゃ楽しそうだと思いましたよ?でも楽しむ為には我慢してって奴です」
アルターが絶対面白いゲームだと思っているからこそ完璧な状態で遊びたいのだ
「お前さん……いや影人君。君は確かVRのヘッドギアも持っていないと言ってたな?」
「はい、そうですけど……」
「データだけのつもりだったがそのギアもプレゼントだ!最新型だぜ?」
「え!?そんな!いけませんよ!」
ギアを東郷さんに返そうとするが手で制止される
「そんじゃ退院祝いとしてだ。それはもう影人君が使用済みだしな!」
「うっ……分かりました。では退院祝いとしてもらいます。ありがとうございます」
絶対コレ高い奴だよ……最新型とか言ってたし、貰うのがかなり気が引けるけど使用済みとか言われちゃったらもうありがたく頂戴するしかない
「製品版は今から1ヵ月後の昼の1時からスタートだ。俺はもう行くがゲームは楽しんでくれよ?」
「それはもちろんです。今も楽しみで仕方がありませんよ!」
「そりゃ結構。それじゃあな?」
「はい、さようなら!」
東郷さんが病室を出て行き、代わりに父さんと母さんが入ってきた
「完全復活っ!」
体の動きにぎこちない部分は一つもない。むしろリハビリのお陰で体の部位の動かし方をより理解出来た気がする
「「おぉー!」」
両親共にパチパチと拍手してるけど……お仕事の方は大丈夫なんですかね?
「僕の方は問題無くなったけど……仕事の方は大丈夫なの?」
「「うっ……」」
「心配してくれるのはありがたいけどそろそろ仕事に戻ってあげて。他の人まで巻き込むのは良くないよ」
「「はい……」」
「いざとなったらおじいちゃんとおばあちゃんもいるから……」
「それは……そうだけど……」
「やっぱり一人息子だからどうしても心配なんだよ。その辺を考えてあげてくれるかい?」
一人息子が事故にあって脊髄損傷で動けなくなったと言えばそれは普通心配で会いたくもなるのが親心だ。理解出来ない訳では無い
「分かってるけど流石にこれだけのそもそも脊髄を繋ぎ直す機械とかいくら掛かるかも分からないのに手術したらお金の方が心配で……」
ずっと溜めてある自分の貯金を全て放出したとしても足りるかどうかわからない。そんな状況で両親の仕事が無くなるなんて事になれば僕は生きていける気がしない。ネガティブ思考はしない様にしてるけどやはりどうしても考えてしまう
「ひょっとしてお金が心配で早く帰らせようとしていたのかい?」
「うん……」
「それなら心配しないの!私達だって充分稼いでいるし、息子が死にかけているって言ったら止める奴なんて居ないわ。止めるようならそいつをころs」
「ストップストップ!雲雀さんどうどう……とにかくお金は心配しなくていいんだ。さっきの東郷さんが全てこっちで持つからと。いやぁやはり凄いなぁ」
「そういえば父さんは東郷さんが何者か知ってるの?」
父さんから東郷さんへの尊敬を感じ取れたので訊ねてみる
「東郷さんはD.C.カンパニーのVR技術部門のトップ……alter・worldの生みの親さ?もしかして知らなかったのかい?」
「え!?東郷さんってそんな人だったの!?」
衝撃の事実を知り、驚く影人。東郷さん偉い人なのかなぁ?と思っていたけどまさかのアルターの開発者だったとは……
「さ、とにかく退院準備をしよう。一応纏まった休みも貰えたから久しぶりに影人の部屋の掃除でもしようか?」
父さんは軽く言ってるけど父さんが掃除を始めると黙って4時間は掃除に熱中するから何とも言えない気分になる
「そ、それはまた今度にしよう。学校にだって行かないとだし……」
「……ハッ!そうね!私が学校には付いて行くから安心しなさい!」
「……事情説明の為の最初の1回だけだよ?」
母さんは親バカな所があるから先手を打っておかないと
「わ、分かってるわよ……」
視線が泳ぎまくってる。心配してくれるのは嬉しいけどやめてよ……もう高校生なんだから
着替え等を纏めて、部屋を出て退院する。一応探したけど東郷さんは見当たらなかった
「今日は私が料理を作ってあげる!何が食べたい?」
「父さんの料理が食べたいかなぁ」
母さんの料理は毒奏的……コホン、独創的な料理なので出来れば父さんのレシピに忠実で外れの無い味が食べたい
「そう言われたら仕方が無いなぁ。父さんが作ろう!」
「もう、どうしてよぉ!」
やいのやいの言いながらもスーパーで食材を買って最終的にキッチンに立つのは父さんの方だった