入手の連絡
「で、そのやり方に見当は付いているのかい?今のやり方とは違うやり方だとして、その違うやり方に見当が付いていなかったら意味が無いんじゃない?」
「それをこれから探していくのが楽しいんじゃないですか。ヒントを直接貰うのも良いですけど、色んな物を参考にしながら新しい方法を自分で探して、自分の物にした時が一番嬉しいと思いません?」
ヒントを貰うのも良いけど、こういう感覚的な物の場合は自分でやり方を見つけないとダメな気がする。全く何一つ掴めない訳じゃないから自分でやり方を見つけられないと悔しいっていうのもあるかもしれない
「そこまで言うのならヒントは出さないでおこう。いったいどんな成長をするのか楽しみに見ている事にするよ。チャオ!」
急にチャオとか言って僕の【イリュジオ】を乗っ取ったまま深淵に消えていった。もしかして深淵を使える量が増えればこっちから深淵に移動する事も可能になるのかな?
「もっと深淵が何かって事をキチンと理解する所から始めないとな」
深淵への理解。自身が扱う物の理解をきちんとしなければ効率よく使用する事は出来ないだろう。レベル上げもそうだけど、深淵の理解も大事な事だ。今後時間を作って深淵に行って色々見てみるのも良いかもしれないな……でも、深淵に行ったら大抵見て回ろうとする前にスパルタ特訓が始まっちゃうんだよな
「ま、すぐに戦力にはならないけど気長に育てていつか使い勝手の良い物になれば良いな」
今までの【アビスフォーム】が特別であって普通の人は深淵を扱うどころかその存在すら知らなくても不思議ではない。僕はあくまで深淵の存在を知っているだけだ。すぐに使えるなんて思ってはダメだ
「さてと、それじゃあ新しい所でも探しに行きま……誰だ?こんな時に?」
誰かからメッセージが飛んで来た。これからって時に……ん!?
『ハチさん!この前の属性攻撃手段の件なのですが、見ていただきたい物を入手しました!今宜しいでしょうか?』
「おぉ!トーマ君何か見つけたのか!これは嬉しい誤算だ」
使える使えないは別としてわざわざ僕の為に見つけてくれたんだ。見ない訳にはいかないだろう
『何か見つけたんだね?今からそっちに向かうよ。何処に行けば良い?』
『セカンドラの街の外れの孤児院に居ます。ちょっと動けそうにないので来てくれるとありがたいです』
孤児院か。何かしら持って行った方が良いかな?だけど、下手に食料とかは持って行って今後もよろしくされても困るし、お金も無いから遊び道具を適当に作って持って行こうか
『ちょっと遅くなるけど良いかな?』
『分かりました。子供達と遊んで待ってます』
トーマ君が子供と遊ぶ所を想像してみたら何か遊んであげるというより、孤児院の子と一緒になって遊んで見分けがつかなくなるかも……まぁ、あまり遅くならない程度にしよう
「よし、とりあえずこのくらいで良いか。手伝ってくれてありがとうね」
「「「いえいえー」」」
魔糸で作った輪投げ、森にあった竹っぽい素材の水鉄砲、ゴブリン達が作ってくれた木製フリスビー等を用意してセカンドラに向かう
『今から向かうね。一応孤児院の子供達用におもちゃとかも持って行くよ』
『それはありがたいです!ここは遊ぶ物もあまりないので助かります!』
そういえば孤児院が何処にあるか聞いてなかったな。まぁ、門番とかその辺に居る人に聞けば孤児院の場所は分かるか。ポン君と一緒に黒ローブで行動しよう
「すみません、孤児院って何処にあります?」
「孤児院?あぁ、シャイン孤児院か?それならここの道をずっと行った先にあるぞ?」
「ありがとうございます」
道行く通行人に孤児院の場所を聞いてみたら結構簡単に教えてもらえた。教えてもらった方に歩いて行くと街の外れにちょっとボロい建物が見えてきた。あれがシャイン孤児院か
「よーし!それじゃあ鬼ごっこしよう!」
「おー、居た居た」
「あっ、ハチさん!」
「気にしないで良いよ。鬼ごっこが終わるまで待ってるから」
トーマ君がなんでここで子供達と遊んでいるかは話を聞かないと分からないけど、外に居る子供達全員で鬼ごっこをするみたいなので待つとしよう。大丈夫だよね?この孤児院鬼ごっこしながら脱出計画とか練ってたりしないよね?
「こんにちは。トーマさんのお知り合いの方ですよね?」
「はい、詳細は聞いていないんですが、知り合いの方です」
孤児院の職員……言い方は悪いけど端的に表しておばさまシスターな人が話しかけてきた。とりあえずトーマ君の不利になってはいけないから情報はあまり漏らさないように知り合いだとだけ言っておく。鬼ごっこが終わる前にこの人におもちゃを渡しておくのも手か
「孤児院に居ると連絡を貰ったので、一応こんな物とか持ってきたんですが、迷惑でしたかね」
「いえいえ、そんな事はありません。わざわざありがとうございます……お茶でもいかがですか?」
「お構いなく、それよりも何故トーマ君がここに来たのか教えて頂けませんか」
まずは情報が欲しい。トーマ君を待っても良いけど、時間短縮出来そうならこの人から話を聞いた方が早いだろう