アビス訓練場(ニャラ教官付き)
「あれ?いつの間にかなんか出来てる……」
ファステリアスから空島に帰還して人の居ない所に行こうと思い、歩いていたら建てた覚えは無いけど見覚えのある社が教会の隣に建っていた。あれ?僕そういえば頼まれたけどまだ御稲の国に社の設計図を取りに行ってなかったな……ウカタマがひょっとして待ちきれなくて勝手に建てたか?一応神だし、セーレさんと一度会ってるから勝手に呼び出す事も出来そうだな……
「にしても立派な社だなぁ……」
今はウカタマは来ていないみたいだけど、これを新しく建てたのも凄いな?あっちで建ててワープで持ってきたんだろうか?
「おっと、皆にも出来れば見られたくないし、ここからもっと離れないと」
深淵に行くなら他の皆にも可能な限りバレない方が良いだろう。今後何処かにアビス様用の祠でも作るのもアリかもしれないな
「とりあえずここまで離れれば良いかな?アビス様ー」
誰の反応も無い所まで離れてアビス様を呼ぶ。聞いているのなら例の深淵の覗き穴が出てくるはず……
「おぉやっぱり聞いてるんだなぁ。よっと」
覗き穴に飛び降りて深淵に向かう
「アビス様こんにちは。ちょっと稽古したいんですが、この前みたいな蛇出してくれませんか?」
「良かろう。何十体だ?」
「えぇ……じゃあ10体で……」
最低のラインおかしくない?あのレベルの攻めを10体とかかなり怖いんだけど……
「おっなんか面白そうな事してんじゃーん!」
そういえばそうだった。ニャラ様も居るからとんでもないスパイスが追加されそう
「ちょっ……これやばっ!?」
「おぉ、良く動くな?」
「やっぱりハチ君の動きは見てて面白いなぁ?」
見えない蛇が10匹、僕を囲んで何度も噛みつきして来るのを躱す訓練をしていたら、ニャラ様が蛇の頭を二つに増やしてとんでもない事になった。一応蛇もアナコンダ位のサイズだから上半身と下半身を狙う攻撃を回避し続けるという訓練が出来ていたが、急に頭2つに増やすのはヤバい。回避だけじゃなく、蛇の頭を攻撃して相手の攻撃をキャンセルしなければまず死ぬレベルの猛攻だ。やっぱり深淵の稽古はスパルタだ……
「はぁ……はぁ……はぁ……うっ」
「やるなぁ?」
「人間の可能性を感じるねぇ!」
10体のオーラを感じ、20の頭の攻撃を捌き切った。今までの戦闘の経験を積んだお陰か、スローが無くてもなんとか切り抜ける事が出来たが、消耗も激しい。流石に20方向から同時は無かったが、たったの手足4本だけで全てを捌くのは無理がある。背中とか脇腹を噛まれたけど、やっぱり囲まれたらキツイな……
「可能性、感じるのはっ、良いけど……流石にキツイよ!」
蛇の脳を揺らす様にカウンターを浴びせたりしてなんとか相手の数を少しずつ減らして今は休憩させてもらっているが、今回のは今までの経験の中でも一二を争うレベルの戦闘のキツさだった。オーラが見える前の死に瀕して見えない敵を感じ取る感覚を研ぎ澄ますのも凄かったけど、単純に物量で全方位から攻められる中心で生存する為に回避とカウンターを訓練するにはこれは凄く良い練習かもしれない。ただ、どうしてもこれだけ全方位から攻撃されるとなると物理的に手が足りないと感じてしまう
「ハチ、どうしてアレを使わないんだ?」
「そういやそうだな?なんで変身しないんだ?アレを使えば触手でもっと楽に対処出来ただろう?」
アビス様とニャラ様が言っているのは【アビスフォーム】の話だろう
「正直使わなかったから対処は辛いけど、使ったら僕の訓練にならないよ。あれはあくまでもアビス様から力を借りて使っているだけだから僕だけの力じゃないし、あとアビス様が気まぐれでアレを使えなくする事も出来るんじゃない?それを考えたらまずは一番大事な僕自身の能力、地力を上げる努力をしないとダメだなって……それに盛り上がりそうな時は切り札は最後まで取っておきたい派なんだ」
確かに最強フォームを手に入れたから最初から使って圧倒するヒーローも良いが、それよりも何らかの制約があって時限制とか、代償有りみたいに本当に最後に使うみたいな方が僕は好きだ。勿論、理論的に考えて最初から最強戦力で敵を叩き潰すというのも間違いじゃないとは思うけど、そこはロマンの問題でもある
「まぁ確かに、人間に一度希望を見せてから絶望を与えた方が良い顔するしなぁ?」
「本気を出すなんぞ最後にしたのは何時か忘れたな……」
「アビス様が本気出したらそれこそ世界壊れちゃうんじゃ?」
ニャラ様は大分ラスボスマインドしてるなぁ……ワザと希望を見せて絶望に叩き落とすとか……あれ?あのイベントの時僕もやったっけ?……深く考えるのは止めておこう。あとアビス様が本気を出したらそれこそ世界崩壊が始まってもおかしくない。アビス様はむしろ本気を出さない方が良い
「自身を高める為にあえて苦難に挑む心意気は素直に賞賛だな」
「それに関しては同意だね。自分を高めて、そして強敵に挑む!それで散っていくのも生き残るのも見ていて面白いが、何もしてない奴がそういう奴の後ろでのうのうとしていたら俺だったらそいつは突然宇宙の果てに消えてもらうか、肉片になってもらおう。命の輝きが無ければ生きてる意味が無いしね!」
この人(?)達は命の輝きには興味あるけど、怠惰な生活してるような人には容赦なく、前触れの無い死とか齎しそうだなぁ……