新人を見に行こう
「本日はご参加いただきありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい」
「また来てくれくれたまえ美しき華達よ!」
リリウムも自ら帰る客人に挨拶をして帰る人間を一人ずつ確認するが、目当ての人間は見当たらない
「本当に見ていないのか?」
「はい、門を通れば絶対に分かります」
勿論、門を通らずに壁をよじ登って一度城を出たハチの姿を門番は見ていない。そこからユイと一緒に入城し、ハチとして外に出た記憶も記録も無いのでまさに城から消えてしまったと言っても過言では無い
「久しぶりに興味の沸いた人間だったんだがな……」
「ギルドに依頼でも出しましょうか?今回城に来るような旅人は大抵ギルド所属の人間か貴族だと思いますが」
「なるほど、その手があったか!よし!では今からギルドにクエストを発行しよう!」
クエストとして例の執事を探す。そうする事で確実にもう一度会う事が出来るだろう……と思っているが、残念ながらギルド所属でも無いし、警戒している相手の呼び出しに応じるハチでも無いので、クエストを発行したとしても会う事も無いだろう
「くしゅん!」
「風邪かい?」
「噂でもされてるんですかね?というかそもそも風邪とかあるんですかね……」
風邪っていうバッドステータスとかあるんだろうか?
「風邪はどうなんだろう……あるんだろうか?」
「流石にプレイヤーには無いんじゃないですかね?住民とかにはありそうですけど」
風邪薬を作って配達するクエストとかはありそうな気がするけどね
「とりあえず今日やるべき事は終わったので僕はもう寝ますね」
「あぁ、私も今日はもう落ちるよ。今日は協力してくれてありがとう」
「いえ、また何か面白そうな事があったら声掛けてください」
「もちろんだ」
今日もまた色々隠し事が増えちゃったなぁ……まぁお陰で新しい姿のイメージとかも出てきたし、濃密で有益な一日ではあった。そしてついに夏休みも終了だから課題とかを入れ忘れないように確認しておかないと
「夏休みデビューって奴は絶対やめておいた方が良いと思うけどなぁ……」
夏休みも終わり、学校に行ってみたら男子と女子が数人イメチェンをしていた。ただ、髪型を変えるとかは良いと思うけど、金髪とかはやめておいた方が良いと思う。あれは怒られたり、喧嘩の切っ掛けになってもおかしくない。一応校則で自由にはなっているけども、自分を守る事を考えたらわざわざそんな切っ掛けを自分から作る必要は無いと思う。僕も眼鏡を外そうか考えたけど、やっぱり視野を狭くしておいた方がある意味勉強に集中出来るし、外すのはやめておいた
「あと、課題は前もってやっておいた方が絶対良いのに」
やっぱりというか、夏休みの課題が終わらずに提出期限を何とか延ばしてもらう交渉に行った男子が居た。後回しにするから辛くなるんだよ……
「そういえば今日から第二陣が来るんだっけ?」
スマホに今日から第二陣が入ってきますよとアルター運営からニュースが入っていた。第一陣の人達は第二陣の人とパーティを組んで狩りをすると、第二陣の人には経験値ボーナスが入り、第一陣の人にはお金が追加報酬で貰えるらしい。まぁこれもあくまで第二陣の適正レベル帯だったり、第一陣の人がただ敵を倒すだけだと貰えないらしいから、先人として教導して初めて報酬が出るって奴なのだろうか? それと第一陣に追いつけブーストなるものが用意されているらしく、レベル30になるまで追加経験値を貰えるそうだ。でもそのブーストの説明を良く読んでみたら第一陣でも30未満ならきっちり対象になってるから単純に全体の底上げとか考えているのかもしれない
「まぁ、なんにせよ僕には関係無い話だな」
第二陣の人を教導するとか僕には向いてないし、報酬が有ってもその報酬からしてまず入手出来ない物なんだから要らない。大体、武器が使えない奴が武器を扱う人の訓練はしちゃいけないと思う。そんな事をしたら絶対に変な癖が付いちゃうだろうし……トーマ君みたいな特殊なのは別として
「教導は他の人がやってくれるだろうし、僕は先に進まないとな……執事服の属性を保存するって能力の詳細もまだよく分かってないからそれもしっかり調べておかないと」
入手したのも最近だったし、能力のチェックもまだ済んでいなかった。執事の誇りの方は執事らしい動きが出来るという能力だと思うが、プリズムチャージの方はどうやって属性を保存するのか。その方法も分からないから今日はその方法を探そうかな?
「でもその前にちょっとだけファステリアスを見に行こうかな?」
レベル上げをする前に新しい人達を一目だけ見てこよう。あ、行く前に空島で良い感じに目立たない服だけ用意した方が良いかな?白ローブとかもう結構バレちゃってるし……そうだ!
「おーい、ポン君やー」
「呼んだ?」
「ちょっとローブに憑りついて黒くなってくれるかな?」
今の状況なら白ローブよりは黒ローブの方が目立たないだろう。新人観察に行くなら可能な限り目立たない恰好にしよう