面倒には面倒を
ユイの方は筆談でめろにゃんさんに現状どうなっているかを報告して協力してもらおう。ドレスの件もあるし、【ヴァルゴ】の魔法の事もあるからある程度の事は問題無いハズだ
「そういえばハチさんの相手ってどんな人だったんですか?」
「あぁ、風邪でダウンした相手?色々調べたい事とか調べた後、空島に帰ろうと思ったら街で話しかけられてね?今思えば裏路地とか通ってたのになんであの人は僕の事を見つけられたのか不思議だったんですが、多分イベントのキャラだったから見つけられたのかも……最初はここに来た時に相手が来ないって知らせが来た時は焦りましたよ……でもあのユイさんに入れてもらったお陰で何とか参加出来ました」
ユイの方を見て、こっちに気が付いた様に軽く手を振らせる
「だからもしかして最初からこういうイベントだったのかなって……お陰で一人で自由に動けるようになりましたし」
こういうイベントだったと言えば認めざるを得ないだろう。今まで色々なイベントを起こしているからこそ通りそうな言い訳だが……どうだろう?
「そうですか……そうですよね!ハチさん。せっかくだから少し踊りませんか?」
「僕もダンスはそこまで得意じゃないので1曲だけで勘弁してくれますかね?」
「じゃあ1曲だけ!」
乗り気になってくれてるし、これでしっかり誤魔化せただろう。ダメ押しもしておくか
「折角この恰好ですし……一曲お相手いただけますか。お嬢様?」
「っ……はい!」
アイリスさんに手を差し出してダンスに誘う。たった1曲ではあるがリードしよう。ハスバさんとリードもフォローも出来るように両方練習したからこそのユイでフォローをしてハチでリードするという二刀流。姿も変え、踊る側も変えればもう大丈夫だろう
「多分今日の事は忘れないと思います」
「喜んでいただけたなら何よりです」
「あれ?ハチだー!」
「あら、ハチも来てたの?なら私とも1曲踊ってくれるかしら?」
「お姉ちゃんが踊るなら私もー!」
まさかのキリキリシスターズの襲来。それに踊れと言ってきた
「えぇ……今からですか?」
「執事ならお嬢様の言う事を聞きなさい」
「いや、これ恰好だけですから。というか自分でお嬢様って……」
「別に踊るくらい良いでしょ?」
正直踊るだけなら別に問題無いが、ここでアイリスさんから離れるとユイの方に行きかねない。ロザリーさんがフリーになるまで時間を稼ぎたい所だが……
「それを言うなら今は私の執事です」
「へぇ?じゃあどっちが踊るか勝負でもする?」
なんか勝手にバチバチやり合ってる。何を勝負するのか分からないけど……
「じゃ私と踊ろー!」
「うわっちょ!?」
キリアさんが横から僕の両手を掴んでダンスホールの中心に引っ張っていく。確か第二の職でグラップラーにしていたキリアさんのパワーじゃ僕が抵抗出来ないのも無理はない。もうダンスというよりジャイアントスイングみたいな状態だ
「ちょちょちょ!?」
「あははははー!」
ドンドン加速して行ってるんだけどこれ大丈夫なのか!?
「えぇ……」
「あら、楽しそうね?」
僕がキリアさんに振り回されているのを見て、何とも言えない表情のアイリスさんと面白がっているキリエさんが振り回されている時にチラッと見えた。どっちにしても足止めには成功しているみたいだ。めろにゃんさんの方も協力要請を受諾してくれたので、ユイの方は心配ないだろう。それに今の僕はユイからハチに戻っているから多少の時間に余裕がある。万が一足止めされてもユイで逃げるか、ハチで逃げるかの選択肢はあるし、本当にどうしようも無くなったらハスバさんに執事服を貸して、僕はユイで逃げるという選択もある。これは本当に奥の手だけど……
「あっ」
「それは勘弁っ!【インパク】」
グラップラーが手を離したらイカンでしょ……ダンスホールでぶん投げられるのはマジで危険だ。他の人にぶつかったらマジで怪我をさせかねないので、即座に自分に【インパク】を使い、ぶん投げられた勢いを相殺する。多分、【ダブルジャンプ】じゃ勢いを相殺しきれないので、【インパク】で無理矢理止めたけど、これ体にめっちゃ負担が掛かるからあんまり使いたくないんだけどなぁ……
「ふぅ、危ない所だった……あの、急に手を離すのは勘弁して欲しいんだけど……」
「ごめーん、面白くて手を離しちゃった!」
「面白くてって……僕だけならまだ良いけど、他の人にまで迷惑を掛けたらダメだよ?」
本当なら僕にも迷惑はかけないで欲しい所だが、歩み寄るなら少しずつだ。じゃないと多分キリアさんは分かってくれないタイプだと思う
「はーい!」
「返事は良いんだけどなぁ……」
キリアさんが分かってるのか僕には分からないんだよなぁ……
「とりあえず満足した?」
「した!」
ダンスと言えるか怪しい所だけど、キリアさんは満足してくれたみたいで良かった。これで時間稼ぎは何とかなったかな?
「いやぁ、凄いですねぇ!」
「げ、チェルシーさん……」
キリアさんと踊り終わった後、チェルシーさんが現れた。今は振り回された後なので勘弁して欲しい……
「げっ、って何ですか!私とも踊ってくださいよ!?」
「えぇ……あっ!リリウム様、踊りたいという美しき華様がいらっしゃるのですが、今踊る事は可能でしょうか?」
丁度近くにリリウムさんが居たのでチェルシーさんをリリウムさんに押し付ける
「勿論!執事君、知らせてくれてありがとう!さぁ踊ろうか!」
「ちょそんなぁ……」
面倒には面倒をぶつけんだよ