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百合の吸血鬼

「おやおや、君達は踊らないのかい?それならこの私、リリウムと踊っていただけませんか?」

「え、でも……」

「良いよ良いよ。俺、こういう踊りは苦手でさ……城主様と踊った方が絶対に良い」

 音楽に合わせてワルツを踊りながら周りを観察していると、城主のリリウムが踊っていなかった男女ペアに近付き、女性をダンスに誘っていた。残された男の方はリリウムに見惚れて居るが……なんかおかしくないか?


(ハスバさん)

(ミラ姉さまと呼んでくれ)

(ミラ姉さま、あの城主の情報とか何かあります?)

(リリウムか、彼女は吸血鬼で無類の女好きと言われている)

 吸血鬼なら魅了とか持っていても不思議じゃないな……踊っていなかったらターゲットにされて魅了を掛けられるとかあるんだろうか?


「美しい人よ、私がリードするので緊張せずにどうぞ密着してください」

「え?こ、こう?」

「ぶはっ!素晴らしい!」

 城主から鼻血が出てるんですが?女好きはマジっぽいな……


「ちょ!?大丈夫ですか!?」

「あぁ大丈夫!最近仕事で忙しくて中々女性と触れ合う機会無くてねぇ!久しぶりでつい、情熱が溢れてしまったよ」

 面白いなこの城主?鼻から情熱が出るくらいの女好きかぁ……反動で男嫌いとまでは行ってなくても男に関してはほとんどどうでもいいレベルの扱いかな?


「あっちの邪魔しないようにしましょう」

(アレは捕まると面倒な事になりそうなので近寄らないで良いですよね?)


「ええ、そうね。城主様のダンスを邪魔しちゃいけないわ」

(そうだね、流石に現状で正体がバレる危険性、逃げ出せない状況になるのは良くない)

 

 とりあえず城主と距離を取る方向性でお互い納得した。ここであの城主に捕まると3時間以内に離脱する事が出来なくなる可能性もある。ワルツのステップを大きくして距離を離す事も考えておいた方が良いだろう。流石にダンスしながらこっちに突っ込んでくる事は無いと思うが……


「ありがとう。私と踊ってくれて感謝するよ!私と踊ってくれたお礼に私のコレクションを1つ差し上げよう」

「えっ?良いんですか?私全然上手く踊れてないのに……」

「関係無いさ!美しき華が上手く踊れないというのなら私が華麗に踊らせてみせましょう!さぁ、他にも私と踊っていただける美しき華はいらっしゃいますか?」

 これもしかしてあの人と踊らないとレアアイテムとやらは貰えないパターンか?


「リ、リリウム様!わ、私と踊ってくれませんか!」

「勿論喜んで!」

「わたしも!」

「あたしも!」

「こんなにも沢山の美しき華達が……ここは楽園か?」

 鼻血の量が増えたぞ?吸血鬼があんなに血を出して大丈夫なのか?貧血で倒れちゃうんじゃないだろうか?


「可憐な華達よ。申し訳ないが、一度飲み物を飲ませてくれ。流石に興奮し過ぎてしまったのでね?」

 何処からともなく赤い液体の入ったワイングラスがカートに乗ってやって来た。誰かが押している訳でも無いのでこのカートが自動で持ってきたんだろう


「すまないね。この一杯が無いと一日が始まらないんだ」

 夜の9時からダンスパーティーを始めてるのに一日が始まらないって……リリウムさんは完全に夜型だな?まぁ吸血鬼ならそれも仕方ないのか?


「「「さぁ!待たせたね!一緒に踊ろうじゃないか!」」」

 リリウムさんが3人に分身して声を掛けてきた女性達の手を取り、踊り始める。吸血鬼ってそんな事も出来るのか……


(困ったな……あの城主と踊らないとアイテムが入手出来ないとなると……)

(なんかあれは露骨過ぎる気がするので僕は辞めておいた方が良いと思います)

 ハス……ミラ姉さまが危険な事をしようとしていたので止める。あのリリウムって吸血鬼が女好きなのは充分に分かったが、一緒に踊ってくれたお礼でコレクションをプレゼントするって何か友達代払ってる人みたいで何か痛ましく感じた。というかここで行くのはなんか物で釣られた感があって良くないと思う


(今の自分達の恰好を見てください。こんな恰好した人が何かせびりに行くような行動をしますか?)

(確かに周りの人に比べたら貴族っぽい恰好をしている自信があるからここでは行かない方が良いかもしれないな。そういう事に気が付けるのはやっぱり凄い洞察力だ)

 そんな事言われても何も出ないぞ?


「流石にこれだけ私と一緒に踊りたいという美しき華達が居るとこのままでは夜が明けてしまうね?曲調を変えようか」

 一人で複数人と踊る為に曲調を変えるとは……流石は城主だな。周りの人達も流石に左右に揺れてるだけじゃ踊っているかどうかちょっと怪しい


「わざわざ来てくれた美しき華達と騎士達の為に軽い食事も用意してあるから、是非食べて行ってくれ。シェフが腕によりをかけて作った物だ」

「そう来たか……」

「どうしたんだい?」

「いえ、面倒にならなければ良いなと……」

 ちょっと仕掛けてきたな?ここで曲調を変えて踊れない人を増やし、食事をするという逃げ道を作って自分が一緒に踊る相手を増やす……もしかしてこのダンスパーティーってただ踊って終わりかと思ったけど、実は自分好みの女性と踊りたいだけのリリウムさんの巧妙な罠がいくつも張り巡らされているかもしれない……そう考えるとどうにかあの城主と触れ合う時間は最低限にして、もらう物だけ貰ってさっさと撤退する計画を練らなければならないみたいだな?



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― 新着の感想 ―
[一言] >「関係無いさ!美しき華が上手く踊れないというのなら私が華麗に踊らせてみせましょう!さぁ、他にも私と踊っていただける美しき華はいらっしゃいますか?」 >これもしかしてあの人と踊らないとレアア…
[一言] なんだろ……ハチ君の空島に領主の別荘が出来ても不思議でもない様な…(気が付いたらハチファミリーになってたりして)
[一言] 赤い液体の入ったワイングラス……これ中身なんだ?血か?ただのワインか? ちなみに自分はトマトジュースだと思います。
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