ダンスパーティーへ
「いやぁ、いよいよだねハチ君?」
「とりあえず入城するのは何時頃が良いんでしょうかね?」
こういうのは先に入った方が良いんだろうか?ダンスパーティーは流石に経験が無いのでどのタイミングで行くのか分からない。開始は9時と言っていたと思うけど……
「9時に開始だからそれまでに入城しておくべきだろうけど……多少時間を超えてから入っても大丈夫だろう。それにめろにゃんにちょっとした協力を要請してあるから城に行く手段は用意してある」
「じゃあめろにゃんさんが来るまで待っていれば良いんですね?」
どっちにしても9時を越えてから【ヴァルゴ】を使用しないと……一応の目安として12時まで【ヴァルゴ】を維持はしておきたいしなぁ……
「どうするのかは分かりませんが、とりあえずその合流場所?に向かいますか」
めろにゃんさんがどうにかするらしいし、その合流場所に行くべきだろう
「とりあえず既に準備は済ませてある。ちょっとした口裏合わせをしておこう」
「ほうほう?何かやるんですね」
「私とハチ君、めろにゃんはドレスの件で既に【ヴァルゴ】の魔法を通して秘密の共有をしているだろう?だが、めろにゃんのパートナーには秘密のままだからどうしても口裏合わせをする必要が出てくるんだ」
「オッケーです。それで?どういうシナリオで行くんですか?」
「それはだね……」
めろにゃんさんと計画したであろう城までどうやって行く計画なのか聞き、どうやって口裏を合わせるかも考えた。僕にも話を通してくれればもっと事前に考えられたかもしれないけど、ハスバさんが「あのイベントの時だって即興で色々やっていたんだろう?なら出来るさ」と謎の信頼があり、僕に話さなくても行けると踏んで今まで黙っていたらしい。僕にもちゃんと話して欲しかったな……
「了解です。じゃあその場所にはもう色々設置してあるんですね」
「あぁ、だから最初の声を掛ける役は任せても良いかな?」
「任されました」
めろにゃんさんとハスバさんの入城計画を聞いて行けそうと思ったので最初の声を掛ける役を引き受ける
「それじゃあ時間まで待機してからやりますか」
多少遅れて参加するスタイルで入城だ!
「遅れてごめんねぇ?」
「めろちゃんが馬車を用意してくれるって言うんだから少しくらい遅れても構わないわ。いつもめろちゃんには愚痴を聞いてもらったりしてるし……」
「仕事の愚痴くらいいつだって聞いてあげるわ!乙女がストレスを溜め込んじゃ駄目よ?」
「本当にめろちゃんは癒されるわー。また今度服の素材取って来ちゃうぞー!」
ファステリアスからサーディライに向けて進む馬車にはめろにゃんとめろにゃんの店の常連であるラギの2人が乗っていた
「今度はどんな服が良いのかしら?」
「そうねぇ、今度は軍服とか着てみたいなぁ……この前のイベントで敵の凄い強い人が着てたけど、ああいう軍服って見るだけでテンション上がっちゃう!」
「軍服ね?今度チャレンジしてみるわ」
他愛無い会話をしながら馬車に揺られて後少しでサーディライに着くという所で変化が起こった
「あら?止まっちゃったわね?」
「ん?なんだろ……うわっすっごい可愛い系と美人系が居る」
ラギが気になって馬車の外を見てみるとそこには黒いドレスを着た可愛らしい少女と壊れた馬車の近くで困っている白いドレスを着た美女が居た
「あの……もしかしてお城のパーティーに参加される方ですか?」
「えっ、あっはい!城のダンスパーティーに参加するつもりですけど……」
「不躾なお願いではありますが、私達も一緒に連れて行ってもらえないでしょうか……?このまま歩いて行っても間に合わないでしょうし、帰るにしても今すぐにはどうする事も出来ないので……」
「うっ!」
上目遣いで馬車に乗っているめろにゃんとラギを見つめる黒いドレスの少女。上目遣いをされたのは初めてだが、これはかなり火力高い
「めろちゃん……可哀想だし乗せても良いよね?元々4人乗り用馬車だし、良いよね?」
「ええ、あたしからもラギちゃんに頼もうと思ってたの。それにもしかしたらこれ……何かの隠しクエストかもしれないわよ?」
2人とも困っているこの2人を乗せる事に否は無い。馬車が壊れて城に行けない2人を城まで送り届けるクエストなんじゃないか?と想像しながら白と黒のドレスを着た2人を馬車に乗せた
「ありがとう。お邪魔させてもらうわ」
「ありがとうございます。助かりました」
「い、いえいえ……うわぁ、レベルたかぁ……」
白と黒のドレスには左右対称の様に翼の意匠があり、2人が馬車に並んで座るとその2人で1つだと言わんばかりに似合っていた。女性としての美しさのレベルが違う
「馬車が壊れるなんて災難だったわねぇ?あたしがめろにゃんでこちらがラギよ。あなた方のお名前は?」
「ユイです。馬車は壊れてしまいましたがドレスが傷付かなくて良かったです。とても腕の良い職人の方に作っていただいたので……」
「あら、その職人の人も幸せ者ね?」
「ええそうね。帰ったらまたお礼を言おうかしら?あぁ、ミラよ」
2人のドレスはめろにゃんが作ったドレスとも負けずとも劣らない物。確かにこのドレスが破れたりしてしまってダンスパーティーに出ないとなったらそのドレスを作った職人の人が可哀想だ
「あっ、何か食べますか?ちょっと料理をやっていてクッキーでよろしければ……」
こんな2人にラギが自分で作ったクッキーを出して良いのか迷ったが、会話が途切れると自分が一番苦しくなるのでインベントリからクッキーと皿を出す
「でしたら、私はお茶を……」
黒いドレスの少女……ユイがティーセットを出し、4人分のお茶を淹れてくれた。所作も綺麗……
(じゃ、城まで頼むよ)
(お願いしまーす)
(任されたわ!それにしても嬉しい事言ってくれるじゃなぁい?)
この場で本当の事を知らないのはめろにゃんと一緒にダンスパーティーに参加するラギたった一人であった




