見て覚えるタイプ
「ってな具合で、色々探ってるんですよね」
「あのエレメントプリズムの事を探っているのか……中々面白そうな事してるじゃないか」
プリズムの調査を開始した翌日。またハスバさんとダンスの練習をしながらプリズムの事を話した
「何か見つかれば御の字、見つからなくてもプリズム達を見てるだけでも楽しいのでどっちでも僕は構わないんですよね」
成果が無くてもおしゃれインテリアみたいなのが浮いて動いていたら見るだけでも楽しい
「そもそも倒さないで調査しようとするのは中々難しいと思うんだが……」
「むしろ倒したところで得られる情報ってドロップアイテムと有効属性くらいじゃないですか?」
昨日の調査の帰りにあのプリズムが他の人に倒される所を見たけど、倒された瞬間に纏っていた属性が消えていた。だから死んだら属性を維持出来ないと言う事だ
「プリズムを倒される瞬間を見たら分かると思いますが、倒された時にプリズムは属性を失っているんです。だから生きている時の姿を調査しないと属性に関する事は何も分からないと僕は考えているんですよ」
「なるほど、そう言われたら確かにあのエレメンタルプリズムを倒したとしても、魔石……たまに属性が付いた小ぶりな魔石が低確率で出るだけだな。経験値もそんなに無いから狩ったところでな……」
プリズム達はスルーされてミニゴーレムばかり狙われる訳だ
「ただ、ハチ君が何かを見つけたら乱獲されるかもしれないな……」
「何か見つけても公表しない方が良いですかね?」
あのおしゃれなプリズム達が乱獲されるとちょっと困る。今後ちょっと飼いたいと思っているから個体数が減るのは非常に困る
「そこは情報の使い方次第さ。誰かに教えても良いし、売っても良い。自分だけの秘密にするのも、どうするかはその情報に辿り着いた者だけの特権さ」
今まで通り重要な物は何か見つけても誰にも言わないのが良さそうだな
「そうですね。まぁハスバさんなら少しくらいは何か見つかったら教えてあげますよ」
「おっ、ラッキー!」
「というか、何気にもう踊れてますね……」
会話しながらのワルツは相手の足を踏む事も無ければ、相手に頭突きをする事も無かった。昨日結構な時間ハスバさんと手を繋いで歩いたからだろうか?
「ハチ君の上達のスピードが異様なんだよ。どうしてもう踊れるんだい?」
「僕、見て覚えるタイプなんで」
どんな物か見て、それを自分の体で出来る様に落とし込んで再現する。完全なトレースでは無いけど、自分の出来る範囲で真似して、出来ない所は自分なりに誤魔化す事でそれっぽく見せている。だから完璧では無いけど大抵の事はすぐに真似出来る
「流石だねぇ……嫉妬しちゃうよ」
「見本があるから真似出来るんですよ。見本が無かったらそんなにうまくいかないです。今も目の前に見本が居るからこうやって踊れてるんです」
「いやぁ、怖いわぁ!この子怖いわぁ!」
急に怖いとか言い出すハスバさん(女性体)。なんだ?今この瞬間に【アビスフォーム】にでもなった方が良いか?
「まぁハチ君がこういう感じなのは今までので分かっていたけど、この至近距離でのコレは破壊力高いよこれぇ?」
「何を言ってるんですか?」
なんか勝手にテンションが上がっているけどワルツは続けている。こういう所ハスバさんもかなり凄いと思う
「というかハスバさんだってなんでそんなに踊れるんですか?」
「まぁ、リアルで踊れるからね」
「リアルでワルツ踊れる人って……初めて見たかもしれません」
「ヒールを履くのは中々大変だが、慣れてしまえば意外と動けるからちょっと工夫すれば踊りやすいさ」
「はぇ~」
僕から離れて腰に手を当ててポーズを決めるハスバさん。いつもならイラっとしてたかもしれないけど、今は説得力があってちょっとカッコよく見えてしまった
「今日はこのくらいにしておきますか」
「このペースで行くと本番までには色々踊れるようになってそうだね」
「もし、城でのダンスがワルツ以外だった時にも備えないといけないですし、ハスバさんが踊れないって言う物があるまでやる覚悟はありますよ」
「いつもなら勘弁して欲しい……と言うが、望むところだね。最初は目立たないようにしようと思っていたが、私達2人で城の目をくぎ付けにするくらいやってしまうかい?」
「それはマズいんじゃないですかね……」
一応正面から不法侵入するんだからそんなに目立つのは良くないと思う
「本当に上手いのなら、周りに溶け込むくらい出来ますよね?」
「そう言われると周りに合わせるくらい出来ないとは言えないね」
よしよし、良い感じに話を纏められた。目立ったらダメなんだって……
「そうだ、明日から何を踊るかはハスバさんが決めて良いですよ?」
「何が来ても見て覚えるって言うのかい?」
「流石に僕がもう調べた物じゃないと合わせるのは厳しいですけど……マトモな物なら何とかなると思います」
これでブレイクダンスとか言った日にはハスバさんの上でウィンドミルしてやる