人の夢
「あら、いらっしゃい」
「やぁ、めろにゃん。ちょっと急ぎのオーダーメイドを2着頼みたいんだが、良いかな?」
「……」
うん、ハスバさんの知り合いという事を忘れていたよ。めろにゃんと呼ばれた角刈りで濃いメイクをしているピッチピチのアオザイの様な物を着た男。キャラが濃いよ……
「頼みたいというのは貴方とそっちの子の分のドレスかしら?」
「ひぇ」
左右にくねくねしながら僕に接近してくるめろにゃんさん。角刈りの急接近で思わず一歩下がってしまった。圧が凄まじい
「あら?この子……まさか!?」
両肩をガシィっと掴まれ、全身を舐め回す様に見られる。何故かお尻をガードしなければならない気がした
「あぁ、例の服のオリジナルを着ているんだよ」
「あらあらあら!遂に会えたわね!」
「な、なんですか!?どういう事かまず説明してください!」
まずは状況確認。何がどうなっているのか分からないと正直この先どうなってしまうのか不安で仕方が無い
「あら失礼。前に彼から白ローブを複数注文されて何に使うのかと思ったら、とある人を逃がす為に囮用の装備という事で用意したのだけれど……そういう事だったのね」
そういえばハスバさんにファステリアスを脱出する時に囮になってもらってた。その時にここのお店を利用したんだろう。その時の繋がりかな?
「めろにゃんは結構君に感謝してるんだぞ?前回もそうだが、今回もイベントで君は大暴れしてくれたからかなりここにも白ローブの注文で中々良い収入になったらしい」
「一応こんな裏路地だけどお店だから維持費分くらいは最低でも稼がないといけないのよぉ」
「えっと……それでドレスの件は?」
このままでは話が進まないのでとりあえず切り出してみる。不安なのも相まって早く話を進めたかった
「そうだったわ!オーダーメイドでドレス2着だったわね?貴方達の分……あらやだ。もしかしてこっち側の人かしら?」
こっち側とか言わないで欲しい
「あの、3つ目の街での城のパーティーに参加しようかと思いまして……」
「残念だけど……心は乙女でも、男女か女性同士のペアじゃないとその城のパーティーには参加出来ないわよ?」
妙な勘違いをしてほしくないが、別に僕とハスバさんはそういう関係ではない。でも必要な情報を隠しているからこういう勘違いが起こっても仕方が無いか。それにしても勘弁してくれ……ハスバさんとそういう仲とか
「そういうめろにゃんは行くのか?」
「こう見えてもあたし、一応恋の相談をされるくらい女性から人気はあるのよ?だから一応相手は居るわ」
オカm……漢女のめろにゃんさんはどうやら相手が居るから正式に城に入るみたいだ。漢女は良くて変態はダメなのか……世の中世知辛いなぁ?
「僕はどうしてこんな事になってるんだろうなぁ……」
男女か女性同士のペアでなければ入れない所に男同士で女性になって入ろうとする……マジで何してるんだろうな?
「まぁ、めろにゃんにはアレを見せないとそもそもオーダーメイドの服は作れないからどっちにしてもドレスを作るならやらないとダメだぞ?」
「はいはい……【ヴァルゴ】」
悲しいかな、さっきまで貞操的な危機を感じていたハズなのに、今はもう哀しみの感情が勝っている。ある意味精神的には安心したよ
「へっ!?ハスバ?あんたいったいどうやって……」
「まぁこういう事さ。これで我々2人は城に女性として入るのさ」
「ちょっと、それあたしにも使ってくれない?」
漢女なめろにゃんさんもやっぱり女性にはなりたいのか【ヴァルゴ】を使って欲しいみたいだ。これ下手に噂でも広がろうものならとんでもない事になるのは確実だ。使うべきか使わないべきか……
「それを使ってくれたらドレス代はタダでも良いわ!勿論その魔法についても秘密にする!」
「頼むよ……ドレスって結構馬鹿にならない金額なんだよ?それにオーダーメイドとなるとね?」
ハスバさんがこっちを見ながら言ってくる。まぁ、僕の分も作ってもらうという話だし、大きな出費が無くなるのならやってあげるべきだろう。なにせ僕は一文無し。こういう何か買う条件下においては一番下なのだ
「条件は今回1度きり。で、そうですね……30分間だけですがそれで良いのなら」
「乗ったわ!とびっきりのドレスを作ってあげるわ!」
交渉成立らしい。本来は5分だけど6回分くらいは使っても良いだろう
「これが……あたし」
「美しいですよ。アオザイも似合ってますね?」
「あぁ、凄く綺麗だぞ?」
角刈りだったヘアスタイルはショートボブになり、ガチムチマッチョスタイルから女性版ハスバさんみたいにボンキュッボンになって美人に大変身!やっぱりマッチョな人もこういう変化になるのか……という事はダイコーンさんやホフマンさんに掛けてもこういう変化をする可能性が?僕の周りに居る男だとトーマ君以外全部マッチョじゃないか……
「あたし……やっと夢が叶ったわ。このゲームでも無理なのかと思っていたの」
「まぁ、夢が叶ったようで何よりです。30分だけですが、楽しんで」
鏡を見てうっとりしたり、喜んでいる姿は本当に女性に見える。女性になるのが夢……そういう人も居るんだなぁ




