タンクハチ君?
「ギョアアアァァ!」
「おぉ……効き目バッチリですね!」
アンガーアンプルは即効性があるみたいで、自分に振りかけるとすぐに骨のドラゴンはこっちに体を向けた。これでスイッチの方は多少安全になっただろう
「はっ!ふっ!」
動きはそこまで早くないから太くない骨を選んで少しずつ砕く。今回は【アビスフォーム】を使わずに何とかクリアしたい。そろそろレベル上げを視野に入れた戦闘をしないと先の街にも進めなくなるだろうし、なによりいつでもアビス様に頼っていたらそれこそ愛想を尽かされてしまうかもしれない。自力を高める為にも今回はいつもはやらない人と協力して戦うという経験を積もう。それもタンクと言える立ち回りだ
「まぁただのタンクじゃないけどね……」
僕のスタイルに合うと言えば耐久タンクよりも回避タンクだ。敵の攻撃を受け止めるのではなく、回避を基本にした立ち回り。普通の耐久タンクと違って安定性に欠けるが、ダメージ自体を受けないコンセプトなのでヒーラーへの負担は少ない。この戦場においてタンクとヒーラーは僕が兼任しているようなものなので、ヒーラーとしての負担が減るという事は回避タンクに集中出来る訳だ
「僕だけを見てくれないと困るよー?」
僕が倒れなければアンプルの効果でヘイトを集められるから他の3人がダメージを負う事も無いだろうし、生き残る事だけ考えよう。余裕が有ったら一応軽口でも言ってヘイトが外れないようにしよう。アンプルの効果はそう簡単に無くならないだろうけど、ヘイトを集めたり、自分の心の余裕を保つとか色々と思惑はある
「氷はダメだ。次!」
「雷もダメ!」
「酸は……骨だけなら効き目アリです!」
僕がヘイトを集めている間に背後から攻撃をしてどの攻撃なら通るのかを確認している3人。このボス、結構無効化する物多いんじゃないか?
「スゥゥゥゥ……」
「っ!全員距離を取って!」
息を吸い込むような動作。ブレスか咆哮が来ると想定して、皆に距離を取るように言う。さっきの骸骨が持っていた音波攻撃の攻撃範囲の話が変わって無ければ、骨のドラゴンの頭の周囲とその顔を正面に向かって音の衝撃波によってダメージが来るとするならアレを使ってみたい。これだけ色んな攻撃を無効にして来る相手だと100%安全とは言えないから皆を安全の為に距離を取らせたが……これで失敗したら戦線崩壊して僕は戦犯だな?
「【ハシャフ】!」
喰らった相手は音を出せなくなる魔法。これで咆哮による攻撃の無力化を試みる
「…………!……!?」
「やったね。はぁ!」
僕に顔を近付けて確実に避けられないようにして仕留めようとしたのだろうけど、咆哮を出せなくて困惑している所に顎に掌底を入れる。粘液のせいで骨を吹き飛ばす事は出来なかったのだが……
「ーーーーー!?」
粘液が激しく震え、何らかの拒絶反応を示す
「聖属性攻撃ありますか!」
「聖属性が弱点か!了解!」
「分かりました!」
「私は酸で他の骨を脆くしておきます」
流石ロザリーさんとアイリスさん。聖属性攻撃も持っているらしい。僕はシスター服のお陰で聖属性攻撃が付与されているけど、打撃で骨を破壊して聖属性で粘液にダメージを与え、【ハシャフ】で咆哮を止める……コイツにとって僕はかなり不利な相手なのでは?
「ドクターが脆くした骨を破壊して動けなくしちゃおっかなぁ?」
まだ粘液に触れていない足にドクターが酸を既にかけているのであの部分を攻撃したら多分破壊出来る。骨が太くても脆くなっていれば細い骨よりも簡単に破壊出来る物だ
「……!」
「今お前、恐怖したな?」
僕の言葉が分かったのか、尻尾程度なら破壊されても構わないと思っていた骨のドラゴンも酸で脆くなった足の骨を破壊されたら立っていられないと理解したんだろう。この場で動けなくなったらおしまいだと思ったのか、粘液が足の方にも伸びて骨を保護する。だが、そんな事をしたらこちらに今バレた弱点が広がっただけだ
「【セイクリッドピアッサー】!」
「【天照】!」
ロザリーさんはレイピアが光り輝き、それを粘液に対して何度も突き刺し、アイリスさんの方は明らかな大技でアイリスさんの後ろに日本神話の天照的な女性が現れてアイリスさんの刀に力を送って居合一閃。光の刃が骨のドラゴンに向かってまさに光の速さで飛んで行き、足を4本とも切断する。あんなの見てからじゃ避けれないな?小足より圧倒的に速い
「ーーーーー!!」
音にならない粘液の震え。二人の聖属性攻撃を喰らった部分の粘液が弾けて消えた
「おっと、僕の事無視しないでよ?」
ベルトのバッタパワーで飛び上がり、空中で回転を加えながらドラゴンの頭に踵を叩き落とす。聖属性と打撃のダブルパンチ(キックだけど)で粘液と粘液で纏められていた頭蓋骨片を吹き飛ばす。足や尻尾、頭を無くした骨と粘液のドラゴンは見るも無残な翼とあばら骨と首を何とか粘液でくっ付けるだけの謎の物体に成り下がっていた
「一応粘液が本体ですからまだ油断しないでください。あんな状態でもまだ戦えるみたいですから」
諦めの悪い粘液は残った骨を集めてまた何か新しい姿に変わるみたいだ。次は何をするつもりかな?