骨と粘液の
「ウゴァァァァ!カラカラカラ」
「「助けてー!」」
見上げるような巨体の骸骨。そしてそのあばら骨の内側に少女が2人……僕にはこの大骸骨にオーラが見える。今までの人間サイズの骸骨に混じっていたオーラはコイツのオーラに似ている気がする……これでもアイリスさんには生体反応が見えないんだろうか?
「アイリスさん。生体反応は?」
「ダメです。見えません」
「オッケーです。じゃああれは魔法で動かされているだけの骨です。本体じゃありません」
アイリスさんの生体反応の眼に見えなくて、僕のオーラで捉える事が出来るって事はモルガ師匠の魔法で隠された家と同じ様に魔法による効果で動いているんだろう。という事は本体は別の位置に居て、僕の【察気術】の効果範囲内には彼女ら2人以外に何も感知出来ない……だったらこの骨を操っているのはあの2人の内のどちらか片方とみるべきだ
「ロザリーさん!あれを使ってください!」
「あぁ!」
このままだと前回ロザリーさん達が失敗した時と何も変わらない。変化があるとしたら前回は無かったイベントアイテムの破邪の閃光。これを使わないと前回と同じ結果になってしまうだろう
「喰らえっ!」
ロザリーさんが破邪の閃光を上に掲げて使用する。眩しくて目を開けていられない……流石に閃光と言うだけはある
「ゴァァ……」
「「きゃああ!」」
閃光を受けた大骸骨はバラバラに崩れ落ちた。当然少女2人もあばら骨の牢から解放される
「ガハッ……ゴアッ」
着ている恰好から見るにお嬢様だと思われる方の少女の口から邪悪な色合いをした粘液が出てきた。うぇぇ、なんだあれ……
「ひっ……」
隣でいきなり得体の知れない色合いのゲr……謎の粘液を吐き出したらそりゃあビビるのも仕方が無い。ただ、あの粘液から禍々しいオーラを感じるからお嬢様の方に寄生というか憑りついていたと考える方が良いか
「ロザリーさん、アイリスさん!あの2人の救助を!」
「分かった!」「了解です!」
とりあえず今はまだ閃光の効果で動けないと思うから今の内に人質を救出してもらおう。僕とドクターはスイッチを押してるから任せてるだけであって、決してSTRが低いから体に力の入ってない人を運べないかもしれないとかそういう事は考えてないですよ?
「こ、ここは何処なんです!?」
意識のある友達の少女の方はここが何処か分からないとパニックになっているみたいだ。一度【レスト】を掛けて落ち着かせた方が良いか?
「あっ、2人ともその人質をこっちのスイッチに連れて来てください!僕らの代わりに押してもらいましょう!」
人間の重量を感知して反応するスイッチならば、人質だったこの2人が乗っても反応するはずだ。それならわざわざ前衛後衛と分けなくても、敵を4人が自由に動ける様になるので、敵を囲む事だって出来る
「この状態でも合理的ですね?私もその案に賛成です。どうせ安全地帯は無いんですから今はアレを倒す為に2人にはスイッチを押して視界を確保する役をしてもらいましょう」
ドクターの言うとおり、安全地帯は多分この場には無い。だったら戦闘に参加できない分、ギミックを作動してもらわないとドクターとロザリーさんが多分視界不良でまともに動けなくなる
「ここで動かないで。守るから!」
「は、はい……」
ロザリーさんの一言で少女は黙ってスイッチの上に座り込んだ。へたり込んだと言った方が合ってるかな?もう片方のお嬢様の方は邪悪な粘液を吐き出してから気絶しているし、そのままアイリスさんの手によってスイッチの上に置かれた。多分このまま気絶したままの方が幸せだと思うから無理に起こそうとしなくても良いか
「おっと、敵も本気みたいですよ」
人質2人の救助が終わった後、バラバラになった骨に粘液が取り付いていた。骨が組み合わさり、先程の人型とは違い、大きな翼と尻尾に4つの足。そして頭蓋骨はバラバラに砕けて粘液によって新しい形に無理矢理再形成される。まるで鰐のように大きな口が特徴的な頭が最後に現れる
「これは!?」
「まさか……」
「骨の……ドラゴン!?」
「ギョアアアァ!!」
巨人の骸骨みたいな姿から骨のドラゴンに形態チェンジしたボス。頭から多分心臓?と思われる場所まで粘液が伸びている。うーん、まずは相手の出方を見るか?
「はぁ!」
「せぇい!」
僕が攻撃を躊躇していたらロザリーさんとアイリスさんが攻撃する。が……
「「くっ!?」」
2人とも攻撃が弾かれた
「この手応えは無効化か!」
「斬撃と刺突が無効化されました!」
骨の部分と粘液の部分の両方に攻撃をしていたが、どちらとも手応えが無いらしい。物理無効だと僕が完全にお荷物になってしまうんですが……
「とりあえず僕もやってみますか。ふっ!」
まずは敵の攻撃のリーチを奪う事と、骨としてあまり太くない尻尾の先端を狙って右半身を前に出した構えから左足で小さくステップをしてからジークンドーのジャクテック(サイドキック)を放つ
「よし、打撃は通りますね」
バキンッという音を立てて、尻尾の骨が砕けた。打撃無効で僕を最初に苦しめたあのカエルと逆みたいだな
「……けど、骨じゃダメージは入らないっぽいですね。あの粘液の所を攻撃しないとダメか」
骨ドラゴンの尻尾を破壊したのにも関わらず、痛みで怯むような様子も見せない。という事はあの粘液部分が本体で、ダメージが通るのはあの部分だけなんだろう。だが、ダメージが無くても破壊出来ると分かっただけでも充分だ。僕がやるべき事はコイツの機動力を奪い、人質にヘイトが向かないようにする事。倒そうとするよりも注意を引く戦闘を心掛けるか
「多分魔法なら粘液にも攻撃が効くと思うので僕はヘイト集めを頑張ってみます。メイン火力は任せましたよ?」
「ハチ君……任された!」
「はい!頑張ります!」
「ハチさんこれを!」
ドクターから1つガラスの小瓶みたいな物を投げ渡される
『アンガーアンプル を入手』
『アンガーアンプル 使用すると周囲の魔物が怒り、ヘイトが集中する』
「副作用で敵が少し狂暴になりますが、ハチさんなら何とかなるはずです!」
僕への信頼高過ぎない?
「ボスが狂暴化とかリスク高いですね?でも使っちゃう!」
ヘイト集中してくれるのならこれ以上に使える物は無い。アンプルを開けて自分に中の液体をかけて、あのスイッチと逆位置に陣取る
「さて、僕と付き合ってくれるかな?」
「「えっ?」」
「あっ、ボスに対してです……」
ボスに対しての軽口にロザリーさん達が反応してしまった。こうなるとちょっとやり難いな……