追加要求
「ほ、本当に村ごと吹っ飛んで来たのか?」
「周り見てみなよ?森の中じゃ無いでしょ?」
ワリアさんがキョロキョロして不安そうだったので、シスター服に着替えて【精神防壁】を足場にして上に持ち上げる。こうすれば島の端が見えて浮いている空島だと分かってもらえるだろう
「おっとと……マジかよ。こりゃあ顎の骨も外れちまうぜ」
「ハチ!私も私も!」
「はいはい、それ!」
姫様の下にも防壁を出して持ち上げる。勿論僕は後ろを向く。ワリアさんと違って姫様を下から見るとか不敬だ。ゴブリン達も一応目を背けている。偉いぞ
「おぉー!本当に浮いているのだな!」
「今後はここで暮らしていくんだな。村がそのまま引っ越せたからとりあえず困る事は無さそうだ」
ドナークさんって手先は器用だけど、やっぱり漢らしいよなぁ……口にも出して無いし、顔にも出して無いけどこのままずっと考えてたら察知されそうだからこれ以上考えるのは止めておこう
「他にも一応僕の眷属になっている子達も居るから、会ったら挨拶とかしてくれると嬉しいかな」
村の皆を眷属達も受け入れてくれるだろうけど、まずは礼儀良く挨拶からしてくれると助かる
「ハチ」
「はい、なんでしょう?」
次はヘックスさんか。今持ち上げて……
「あぁ、持ち上げなくて良い。それよりも私はこの島を調査したいんだが……構わないか?」
島の調査?まぁヘックスさんがしたいのなら別に構わないかな?
「良いけど、具体的にはどういう調査をしたいの?破壊調査とかは困るから止めるけど……」
「この島、どうやって浮いているのか非常に気になる。単なる魔力で浮いているのなら、その魔力の発生源も気になるし、何らかの技術が関わっているのならその技術を見てみたい」
あー、確かにそれは気になる。もし、島を浮かせる力が人にも使えるのなら飛行能力を得る事だって出来そうだな。どちらにしても空島の浮いている力の調査はその内しようかと思っていたけど、ヘックスさんが調査してくれるのなら安心だ
「オッケー。じゃあヘックスさんにはこの島の調査を頼むよ。もし誰かに絡まれたとしたら多分ハチを呼ぶぞとか、ハチの友達とか言えば大丈夫だと思うから」
まぁあんまり無いとは思うけど、ヘックスさんが絡まれるとするならジェリス辺りだろうし、僕の友達だと言えば納得するだろう
「それで良いのか……まぁこれだけ面白そうな物を調査出来るのなら何でも良いか!ピュアル!行くよ!」
「………!」
「……」
氷の騎士の方は確かに調査には向かないだろうな。置いて行かれてちょっとしょんぼりしている。でも、ミミックさんとかちのりんが慰めているからそういう心のケアとかもしっかり出来ているみたいで何よりだ
「とりあえずこれで皆は安全になったね。あっ、でもヴァイア様の力で僕の転移費用0になってたのってこれで消えちゃった?」
もし消えてしまっていたら僕は移動する事がまず不可能になってしまうからかなり重要な事だ……
「心配せずとも消えてはおらん。安心するがよい」
「流石ヴァイア様!尊敬しちゃうなぁ……」
「むふふっ!もっと尊敬しても良いぞ?」
良かった。今までと同じ様に移動出来そうだ
「ヴァイア様はどうですか?この空島は気に入ってくれましたか?」
「うむ、近くに池もあるようだし、立地としても素晴らしい。魔石洞窟は諦めるしかないが、ここの濃密な魔力も素晴らしい。新たな住処とするならこれ以上の地は無いだろうな!」
あぁ……魔石洞窟は村の範囲じゃないから一緒に持って来る事は出来なかったな……そもそも持ってこれたとしても洞窟の長さ的に空島を貫通しそうだからどっちみちダメだな
「な、なぁハチ?あのデカい門はいったいなんだ?」
「ん?うえっ!?もう出来てる!?仕事早過ぎるだろ……もう少しゆっくり造って良かったのに」
ドナークさんが僕の後ろを指差してアレは何かと聞かれたので振り返って見たらもう冥界と繋がる門が出来ていた。死神さんどれだけ急ピッチで造ったんだ……
「あれは冥界と繋がってる門だよ」
「はぁ!?」
「あの門が出来たからちょっともうひとっ走り行ってくるね!」
「あ、ちょっと!」
ドナークさんには悪いが、門が出来たのならもう一つ行かねばならない所がある
「セーレさん。ごめん今から運んでもらいたい物があるんだ」
「へ?今から?まさかあの門を運べとか……」
「いや、あの門が出来てから運ぼうと思っていた物を設置する為の条件が揃ったから、今から運んでもらおうかと。供物が欲しいなら今から準備するよ?」
「いや、後からにしてくれ。今度はまたとんでもない物を運ばされそうな気がするから要求は出来るだけ大きくしたい」
悪魔の後出し要求とか絶対ヤバい。先に要求を固めておかないと
「うーん、今から料理は時間掛かるしなぁ……じゃあ僕の血は?」
「そうそう!そういう対価よ!やっとハチも分かってきたかー」
「ワリアさんちょっと腰の剣を上に投げてもらえる?」
「ん?何するんだ?ほれっ」
オーブナイフじゃプレイヤーを傷付けられないから自分で自傷出来ない。ワリアさんの武器で自傷させてもらおう
「これなら戦闘にならない!」
「「はあぁ!?」」
戦闘行為は出来ないから空中に投げられた剣に自分から当たりに行く。これで腕に切り傷を負う事が出来た。うぅ……割と痛いぞこれ
「はい、セーレさん」
「お前精神状態おかしいよ……」
「セーレさんが血を要求したから出したのに!?痛いんだよこれ!?」
身を切ってまで供物を出したのにその反応は酷いのでは?
「と、とりあえず……貰っておく。これがある意味正当な供物だしな……」
「じゃあそのまま次の引っ越しに行こうか」
「悪魔遣い荒いぜ……」
冥界との門は既に出来たので、教会に向かおう。教会もお引越しだ