地獄フレンズ
「これなら……装備しても大丈夫そうだな」
「おーい、終わったのか?」
死神さんが戻ってきた。呪具製作をする時に他の人の意思が入らない様に離れてくれていたから何とか作れたけど……考えてみたら現世で作る方法って複数人の恨み(もしくは魂の淀み)を集めてアイテムに蓄積。時間を掛けて呪いのアイテムを付与する過程でその恨みを忘れないように自分でその恨みを肩代わりして精神を削られて正気でいられなくなる。しかも多分この方法だと呪いの効果は色んな恨みが混ざるからどんな効果になるかも分からないだろう。僕が地獄で呪具を作る時にあのダメ人間思考の恨み言によってイヤーカフに蓄積される恨みに方向性が生まれてある程度作りたいと思った呪具を作れたんだろう。何せここは地獄の負の感情の溜まり場。恨みならいくらでもある
「はい、今終わりました。これです」
そういって既に装備した呪博徒の耳飾りを見せる
「本当に、自分で使う為に呪具を作ったのか……」
「お前、面白いな?ちょっと気に入ったぜ。俺はセーレだ。まぁ地獄じゃこんな恰好をしているが、向こうでもし呼び出すのなら喜んで手を貸してやる。何か運びたい物でもあったら建物だろうが、街だろうが運んでやるぜ?これを覚えておきな」
『悪魔の印章(セーレ)を覚えました』
ホワッツ?なにこれ?覚えたって何?
「あ、ありがとうございます……僕はハチです。何かあったらその時は……」
悪魔の呼び出し方とか知らないんですが……そもそも悪魔って呼び出したら姿が変わるのか。しかも街を運ぶってとんでもない事言ってるぞ?まぁ冗談半分として聞いておこう
「何かお前は人間だけどこっち側の存在に思えてきたぜ。どうだ?地獄名物の亡者クッキーでも喰って行かないか?」
え、何そのとんでもないクッキーは……亡者が材料になってるクッキーとかじゃないよね?
「亡者が地獄の業火で焼いて作ったクッキーだ。サクサクで美味いぞ?」
サクサクって……炭になってませんかねそれ?地獄の業火がそんなクッキングレベルで済む火力だとは思わないし、短時間で焼くのか、距離を離して遠赤外線的な感覚で焼くのか……興味はある
「おいおい、そんなもの地上の人間が喰ったら腹壊すぞ」
「あ、そうか。何かお前は悪魔だと思っちまってた。悪い悪い」
これは僕、バカにされてるのか褒められているのか良く分からないぞ?悪魔が悪魔と勘違いしたってどう捉えたら良いんだ……
「とりあえずそろそろ帰ります。流石に地獄で作った食べ物はちょっとチャレンジするには難易度が高いので遠慮……あっ、お土産で貰うって事は可能ですか?」
「ん?それでも良いが……人間が喰ったら腹壊すのは目に見えてるぞ?」
「それに関しては問題ありません。食べるのは人間じゃ無いんで」
地獄で生まれたらしいゲヘちゃんへのお土産だ。パンドーラで呼んでも良かったけど、まぁそれは今度ゲヘちゃんが地獄に行ってみたいと言った時の為に取っておこう
「ほう?まぁ良いぜ。とりあえず1000枚程度……」
「い、いえ……20枚程度で……」
規模が違い過ぎる。僕は業者じゃ無いぞ
「そうか?まぁ50枚くらいもってけ」
『地獄ッキー ×50 を入手しました』
『地獄ッキー 地獄で作られたクッキー。人間が食べると肺を焼かれて呼吸困難に陥る』
とんでもなく物騒なクッキーじゃないか!腹を壊すじゃなくて肺を焼かれるとか……これを間違ってお茶会に出そうものならまさに地獄絵図と化すだろう。そんな物を地上に1000枚も持ち込んだらまず1枚は確実に誰かが食べて地獄を見る。この危険な物質をゲヘちゃんに食べさせても良いのかちょっと不安になるけど、人間が食べると肺を焼かれるって書いてるし、ゲヘちゃんなら平気そうかな
「ありがとうございます。それじゃあまた機会があれば」
「おう!じゃあなー!」
あっさり地獄で呪具を作る事が出来たし、上裸のイケメン悪魔セーレさんとも一応は友好的な関係を持てたし、また地獄に用があったらセーレさんの所に来るのも良いかもしれない
「じゃあ帰るぞ。もう要件は無いか?」
死神さんに最後の確認みたいな事を言われた。まぁあのエレベーターで無ければ帰れないだろうし、それも当然か
「はい、お願いします」
地獄はあまり目に優しくないけど、呪具を作る時に誰も邪魔しに来なかったり、お土産のクッキーを持たせてくれたり意外と良い所もあるのかもしれない。まぁ、それでも地上の人間に対して呪具を掴ませたりして悪い事をしているのだろうけど……
「「「オカエリダー」」」
亡者達は僕が帰る事を喜んでいるんだろうか?まぁ上でボコボコにされた人が地獄までやって来たとなれば早く帰って欲しいと思う物か……悪魔には好かれたけど、亡者には嫌われているみたいだな
「では戻ろう」
「これで、一応約束は果たせたし、大丈夫……かな?」
ニャラ様との約束である新しい呪いの装備を装備する事も出来たし、これでニャラ様から文句を言われる事は無いよね?
「よし、着いたぞ。どうするんだ?冥界を見ていくのか?それとももう帰るのか?」
「あー……どうしよう」
せっかくだし冥界も少し見てから帰ろうかな?前と何か変わってるかもしれないし
「せっかくだからちょっと見て回っても良いですかね?前回来た時には無かった新しい物とか見てなかった物とかあるみたいですし」
死神さんに地獄に通じているエレベーターに連れて来てもらった時に前回見なかった建物とかもあったし、また冥界を少し見て回りたい
「良いけど出来れば何処か1か所にしてくれると助かる。そろそろ次の仕事の時間だ」
「あ、分かりました。それじゃあ出来るだけ早く済ませますね」
流石に死神さんも忙しいのに時間を取り過ぎた様だ。現世に帰る為にも死神さんの協力は不可欠なのでどこか1か所だけ選んで行ってみよう